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第四章 1 あいつ

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。

 

 6時限目が終わり、放課後を迎えようとしている教室に、ふらりと大地が現れた。

 周囲の「あいつどうしたんだ?」と言うヒソヒソ声にも一切関知せず、それがまるで当然のように、帰宅の準備を始める。


「あー……大地、今までどこに行ってたんだ?」


 流石に心配になり、声をかけてみる。

 俺の声に反応した大地が、視線をこちらに向けた。

 その時、誰と勘違いしたのやら――まぁ察しはつくけど――一瞬、ホンの一瞬だけだが、殺意を孕んだ視線が、俺を射抜いた!


「……太一か」


 そしてすぐさま普段の大地へともどり、一言。


「ああ、ちょと……な」


 それ以上は何も言わない。そして俺も何も聞かなかった。

 そんなこんなで帰り支度を済ませると、担任であるきよピー先生の午後のショートホームルームの言葉を待つ事も無く、通学カバンを肩に掛け、ついっと教室から出て行ってしまった。


「本当に……どうしちゃったんだろ?」


 心配顔で俺のそばにやってきた美奈が言う。


「ああ……ほんとうに、な」


 まぁ、心当たりがありまくる俺としては、美奈のためにも、そして大地本人のためにも、このまま放置しておく訳にはいかないな。

 仕方が無い。こうなったら俺の事も含め、正直に全てを話して早々に元の大地へと戻っていただくよう、喚起を促すとしよう。


 ……まぁ俺があの世界をじっくり満喫してからな。





 帰宅後。

 飯と風呂を済ませ、いよいよあっちの世界に本腰を入れて旅立つ時が来た。

 現在こっちの時間で午後八時。高校生にしちゃあ、寝るにはとんでもなく早い時間帯だ!

 一応両親に「ちょっと今日は具合が悪いから早く寝るわ」などと芝居を打ってはみたものの、「あ、そう? おやすみ」の一言で片付けられてしまったあたり、一人息子の健康状態に些かの疑問も無い様子。

 ちょっとは心配してくれよ、ヘコむだろ!

 ……もう、このまま向こうの世界で暮らそっかなぁ?


「何言ってるんですか。さあ、早速行きましょう」

「ああ。じゃあ今日は互いの部屋から、なんの憂いも無くログインして、向こうの世界をじっくり楽しもう」


 電気を消し、ベッドに入り、あっちの世界へのパスポートを握り締め、静かに目を閉じる。



 ――よし行こうか! ログイン・アドラベルガ!



 昼にログアウトした状態から何も変わらない、グレイキャッスルの城門の前。

 違うといえば、チーベルがそのちっこい両手に、綺麗なヒスイの耳飾りを抱えている事ぐらいだ。


「おぉ、そいつか? なんとかってテレポートできるイヤリングは?」

「はい、翡翠の翼(フリューゲル・ヤーデ)です。これを片方の耳につけてですね、行き先を唱えれば、あっという間にその場所までいけるんです。便利ですねー」


 それは、ため息が出るほど深緑の半透明で、片翼をあしらったデザインをしている。耳につける留め金とヒスイ部分は、金色の小さなチェーンで繋がって、なかなかの高級感を醸し出している。


「うし、付けたぞ! これで俺はどこでも瞬時に行けるって訳だな!」

「はい。但し、一度行った場所、地名を言える事が条件です。それと、二名までなら同伴が可能ですよ。その際は、手で同行したい者を触れるだけでオッケーです」

「おう。じゃま、行くかチーベル」

「はい!」


 元気な返事と共に、小さな案内人が、差し出した指にしがみつく。


「レッツ、マリクスの平原!」


「……」

「……」


「行かないな?」

「行きませんね?」


 なんだろう? 「レッツ」なんて余計な言葉付けたからか?


「マリクスの平原!」


「……」

「……」


「行かないね?」

「行かないですね?」


 なんだ、不良品か? そう思案を巡らす俺の耳に、「あっ!」と言う声。

 チーベルが何かに気が付いたようだ。


「そう言えば、このイヤリングは魔界製だったはず……と言う事は、行き先名は魔界語で言うのでは?」

「はっ! そういや「アイツ」がマリクスの平原に俺を連れてく時、変な呪文みたいなの口走ってたな!」

「はい、あれが魔界語でマリクスの平原の意味なんでしょうね」


 実にややこしく、果てしなくメンドクサイ設定だ。そんなもん共通用語かなんかで統一しとけよ。


「あー、まぁいい。で、その魔界語ってのはどう言うんだ?」

「……え?」

「『え?』じゃねぇだろ。まさか知らないのか?」

「そんなまさかぁ……アレですよ、ド忘れしちゃったというかなんというか、その……」

「あーもういい、わかったわかった。ってことはアレだな、知っているヤツに聞きに行かなきゃって事だよな」

「そ、そうですね、それがいいですね」

「となると……アイツのところに行かなきゃって事か」

「ですね」

「なんかヤダなぁ……面倒だなぁ……あまり係わりあいたくネェなぁ……」


 そんな事をぽろぽろと口から零しつつ、俺とチーベルは重い足取りで「アイツ」の屋敷へと向かった。





「これから寝ようと持ってたのに……まったく、こんな夜分に何の用? くだらない事だったらその茶色い生革剥いで、リビングに飾るからね」


 召使いの人の取次ぎの後、眉尻をヒクヒクとさせながら怒りも露なパジャマ姿の「アイツ」ことアメリアスが、でっかいお屋敷の玄関前へと現れ、俺を一瞥するなりそう述べた。

 うわぁ、機嫌悪そうだなぁ……だが仕方が無い、さっさと聞いてとっとと帰ろう。


「あ、あのさ……突然で悪いんだが、マリクスの平原の魔界語? を教えてくれないか」

「ハァ? あんた頭でも……そっか記憶が無いんだっけ? まぁいいわ、教えたげる……『ハンサ・デ・エレカ』よ」


 呆れ顔で溜息交じりに言葉を教えてくれる、優しい同僚。

 つか、なんでパジャマ着て寝る準備してんだよ? お前ヴァンパイアだろ? 夜行性だろ?


「う、うっさいわね! そんなの人の勝手でしょ? 夜寝ないとお肌に悪いのよ、知らないの?」


 知らんがな。


「でもなんでまたそんな事を聞きに来たの? まるで珠玉の翼でテレポートでもする――あああっ!」


 俺の耳の辺りに視線を移したアメリアスが、突然驚きの声を上げる。


「な、なんだよ! びっくりしたなぁ」

「なんだよじゃないわよ! あんたそれ! どこで手に入れたの?」

「それって?」

「耳よ耳! その左耳のイヤリング! あなたそれが何かわかってないの?」

「ああ、さっぱり」


 何怒ってんだか……このヒスイの翼っての、そんなにレアアイテムなのか?


「そのフリューゲル・ヤーデってのはね、別名『結ばれし対なる片翼』って言って、二つで一対なの!」


 興奮気味に怒鳴りながら、アメリアスがその長い金髪を――右の耳の辺りの髪の毛をすくい上げ、俺に見ろとばかりに晒した。


「あ、おんなじヤツ!」


 そこには、俺の左耳につけれているヒスイの翼とほぼ同形のものが、キラリーンと輝いていた。


「おー! お揃いじゃん。そっか、あの時それでテレポートしたってのか」

「お、お、お揃いじゃないわよ、このあほ茶色! 今すぐ外しなさい! つーかそれ、こっちによこせ!」


 まるで慌てるように否定し、俺の耳のモノを奪い取ろうとする。


「ちょ、やめろよこの盗人。てか、お前ん家金持ちなんだろ? 買えよ」

「そーゆー問題じゃないわよ! バカ茶色! その片翼は我がベイノール家先祖代々の家宝だったんだけど、大昔の戦乱で消失してしまった品なのよ!」

「なんだかわかんねぇけど、とりあえず落ち着けって。それより今ちょっと急いでるんだ、じゃあこれで!」


 話を逸らす意味も兼ね、立ち去ろうとする俺。必要な情報は頂いたんだ、とっととこの場を去ろう。


 が、そんな俺の態度に何か「戦いと血の匂い」でも嗅ぎつけたのか、アメリアスが要らぬ興味を持ち出した。


「何よ、なんかあるの? ははぁ、さてはあのクソ神とのリターンマッチね?」


 微妙にハズレだ。つか、大地とリマッチなぞ死んでもするか!


「まぁいいわ、とにかくそのイヤリングは外しなさい? 代わりに私が連れてってあげるから」

「い、いや! それはいいって! お前これから寝るんだろ? 夜更かしはお肌に良くないぞ」

「うっさい! 私が行くって決めたの! これは決定事項なの! 文句ある?」


 おもっくそありますがな。


「じゃ、ちょっと着替えてくるから、ソレ外してそこで待ってなさい。いい、先に抜け駆けして行こうものなら……全ヴァンパイア族があなたの敵になるからね?」


 むちゃくちゃ言いやがる……。

 とりあえず、味方に殺されるのは嫌だから、今だけヒスイの翼は外しておこう。

 ……でも、これを俺が付けている事に、なんでアメリアスはそこまで嫌がるんだ?


「それはですね……夫婦や最愛の人同士が、その対同士を持って、愛の誓いと成すからです。いわば結婚指輪みたいなものですね」

「ふーん、結婚指輪か……おい、ちょっとまて。なんでそんなもんを俺に寄越す?」


 普段は、ある程度こいつの失敗に目をつぶる俺でも、流石に今回ばかりは詰め寄った。


「し、仕方なかったんです。空いている『珠玉の翼』は、これしか見つからなくって……」

「珠玉の翼? なんだよ、他にもあるのか?」

「はい。ルビーの翼とか、アメジストの翼とか、サファイアの翼とか……でも、大概はすでに一対で使われていて、今空いていたのはそのヒスイの翼だけだったんですよ」


 何もそんなややこしいものを寄越さないでもよかったろうに……ツングースカさんが使った瞬間移動の魔法とか、使い捨ての道具とかないのかよ?


「呪文はまだレベルが足りませんし、テレポートできる使い捨ての道具なんてものはないもので……」

「あーそうかい、まあいいさ。結果オーライだが、アメリアスが協力してくれるってんだから、心強いよな」


 と、俺の暢気な言葉を聞いて、チーベルが何言ってんだとばかりに異を唱えた。


「太一さん、これから私達が会いに行く人が誰だか忘れちゃったんですか?」

「え? あーうん……あー……あああああっ!」


 すっかり忘れていた。

 本来ならば俺達の敵、おまけにアメリアスとは一度刃を交えたことのある相手!


「しまった……ベルーアに会いに行くんだった!」


最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!

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