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第三章 1 学校にて

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


お気付きの至らぬ点等、ご一報頂けたら幸いです

「ねえ、タイチ。今付き合っている魔族とかいるの?」

「な、なんだよ突然? い……いないケド」


 頬を紅潮させ、うつむき答える俺。

 そんな俺に彼女アメリアスは続けて言う。


「もし、もし良かったら……私と……」

「だ、ダメだよアメリアス……俺は名も無き魔族の平民……お前は魔界の貴族。身分が……身分が違いすぎ――」

「それがなによ! そんなもの、いつでも捨ててやるわ!」


 アメリアスの瞳の内にこもる真摯さは、嘘偽りのない輝きを俺に向けて放っているようだった。


「判ったよ、アメリアス……じゃあ二人で――」



「ちょっとまってください!」



 唐突に、俺の言葉へと割って入る声! 涼やかで可憐なこの声は――ベルーアだ。


「太一さん、そんな邪悪な女に惑わされてはいけません! そいつはヴァンパイアです、あなたの血――いえ、魂までも奪おうとしているのですよ!」

「急に何言いだすのよ、このバカ天使! あたしのタイチに対する想いは、掛け値なしの純粋なものよ!」

「騙されないでください、太一さん。それよりこの私と一緒に、人生と言う冒険の旅にでましょう」


 そう言って、俺の腕にすがるベルーア。

 胸元のマシュマロ的な何かが、俺の腕の辺りの細胞の感度を極限まで上げているのが判る。


「ま、まぁ待てよ、二人とも。ここは一つ、みんなで――」



「みんなで? ならば余もまぜよ! これは勅命であるぞ」



 いつの間にか俺の目の前に現れて、腕を組み、こちらを睨み付けるちびっこい人影。


「げ、大魔王様! な、なんでここに?」

「ばかもの! そなたのいるところなら、余はどこでも現れるのじゃ」


 ちょ、ちょっとまってくれ!

 俺は小学生を性的守備範囲にするような、非社会的恋愛感の持ち主じゃないぞ?


「かまわぬ……余とそなた……禁断の恋。ほれ、よくあるであろう? 兄と妹のはかない恋物語――そんな感じじゃ!」


 お、俺がおにいちゃんで、大魔王様がおにいちゃん大好き妹だと!

 そ、そんな非常にけしからんエロゲ設定!


 …………ごめんなさい、むしろウェルカムです。


「あー! 佐藤くんβ! 私と言うものがありながら、そんな人外少女達にうつつをぬかしちゃダメじゃない! ちゃんと人間は人間とお付き合いしなきゃダメなんだよー!」


 と、いつも聞きなれた、かわいい声。それは勿論――美奈だ!


「み、美奈! なんでお前が異世界こんなトコに?」

「フフフ、知りたい? それはね……愛のパワーなのだよ!」


 美奈が仰々しくアクションを付け、その「謎パワー」とやらの輝きを、身体全体から発散させる。 そうか。お前もなんだかんだ言って、俺の事が気になって仕方が無かったんだな? だからちょっかいをかけるために、俺の事を二号だの2Pカラーだのイミテーションだの言ってたんだな?


 ちくしょう、俺の身体が一つしかないのが悔やまれる!

 つーかお前達、まとめて俺一人で愛してやる!


「ダメですよ、太一さん。私以外の女の人への浮気は、絶対許しませんから!」

「あいててて! 痛い、いたいよベルーアさん!」


 ぷんぷんと大げさに怒った顔つきのベルーアが、俺の頬を抓りあげる。


「それと、早く起きてくださいね、太一さん」





「いたいいたい! 判ったから、もう浮気はしません……って、あれ?」

「ようやく起きました?」

「え? ……ああ……うん。おはよう、ベルーア」

「おはようございます、太一さん」


 …………夢だ。

 ものすごく恥ずかしい夢だった。顔から火が出るほどの、妄想全開ドリームだ!


「ベルーア。起こしてくれるのはありがたいんだけど、出来ればもうちょっと優しく起こしてくんねーか?」

「痛かったですか?」

「ああ、夢見心地でもかなり痛かった」

「ですが、昨日受けた私の痛みはこんなものではありませんでしたよ?」


 う……怒ってる。

 そういや昨日の戦いで、ベルーアに雷光の狼(ブリッツ・ヴォルフ)を食らわせて気絶させちまったんだっけ。


「私が水系の装備で固めていたせいと、あのヴァンパイアの魔法で三倍強のダメージを受けてしまい、実のところすごくやばかったんです。まぁ事前に打ち合わせをしなかった事はこちらの落ち度ですから、仕方の無い事です。でももうちょっと手加減してくださいね? 私だってダメージを受けたふりのお芝居は心得ているつもりなので」

「あ、あははは……今後はそうするよ……ごめん。で、身体はもういいのか?」

「はい、おかげさまで」


 笑顔でぺこりと頭を下げる。

 そうだ、昨日は半裸のベルーアをだっこして部屋に担ぎ込んで……メシ食って風呂入ってそのままバタンQしたんだよ。

 肉体的にも精神的にかなり参っていたんだと思う……なにせ目を瞑った途端、ソッコーで眠りの中に落ちたもんな。


 正直な話、興奮で眠れないと思っていたんだけど……あ、いや! アメリアスのおっぱいにタッチダウンした事や、半裸状態のベルーアを抱きかかえた事での興奮じゃないぞ?

 ……まぁあんな浮ついた夢を見ていてこんな弁解は通用しないだろうけど。


 でも、ヒゲのおっさんや大地との戦いで得た、なにやら形容し難い「興奮」が、俺の中に灯り始めたのは間違いない事実だ。


 戦いのシミュレーションや、魔法を発動させるタイミングの研究。それに今後の活動スケジュール(主に村を襲って若い女の子をさらって行く的な)も立てなきゃいけない。

 やりたい事、やらなきゃいけない事は山積みだもんな!


「そんなことより早く起きてください、お母様が朝食をご用意してお待ちかねですよ?」

「ああ、そうだな。よっこらせ――」


 寝ぼけ眼でベッドから這いずる様に起き出す最中、ふとベルーアの姿に目が止まった。


 驚きのあまり、思わず彼女を二度見したよ! 


 なんでって?

 だってベルーアが、俺達の高校の女子用の制服を着て「しゃらんら~ん♪」と立っていたからさ!


「ど、どういう事でしょうか? ベルアゼールさん」

「ん? 何がですか?」

「そ、その服装っす」

「あ、これですか? 今日から太一さんや大地さんと同じ学校に通うことになりました」

「ああ……それもアレですか。俺が謎の美少女転校生という設定が大好物って事に対するいやがらせ的な何かですか」

「嫌がらせではありませんよ? ただ、あなたがそう望んだからこそ、神夢起現書記が叶えてくれた結果なんですよ」


 俺には「ほれほれ、お前の願望ってのはこんな感じなんだろ? んー? どうだ、この中二患者め」という、遠まわしな皮肉にしか思えないな。


「とにかく、朝食に行きましょう。そこでお父さまからお話があると思いますので」

「どうせお前の『作られた』身の上話だろ? あんまり聞きたかねぇな」

「そんな事言わずに、せっかく昨日必死で考えたんですから」


 ……ビンゴかよ。


「それとですね、お渡ししたいものがあります」


 そう一言前置きして、ベルーアが制服のポケットから一つのカードを取り出し、俺に手渡した。


「うん? 異次元世界通行書、アドラベルガ~現実世界。なんだこりゃ?」

「はい、それはあなたがあっちの世界へ行くために必要な証明書です。それが無いと向こうの世界には行けませんので、無くさないようにお願いしますね!」


 こんなものであっちの世界にいけるのか? なんだか定期券みたいな感じだが……で、使い方はどーすんだ?


「はい、それを持って『異次元世界進入ログイン・アドラベルガ』と念じれば、瞬時に向こうの世界に行けます」

「はは。なんだ、簡単なんだな。無くさないように持ってるよ」


 落としちゃったら大変だ。そう思い、俺は洋服ラックにかけてある制服のポケットから財布を取り出して、バリバリバリっとマジックテープをはがし、そのカードを大事に財布の中へとしまい込んだ。






 長々としたベルーアの身の上話や彼女の今後の事、果ては新たな家族を祝ってパーティーだ!

 なんて事をうだうだと語る父ちゃんの名演説を話半分で聞き流し、「遅れるから」と一言残して学校へと登校する。

 因みに、ベルーアは今日が登校初日って事で、母ちゃんが一緒に随伴して行くらしく、少し遅れての登校だ。


「よっ、大地! おまたせ」

「ああ、おはよう太一」


 いつもの待ち合わせ場所である近所のコンビニの駐車場で、大地と合流を果たす。

 が、なんだか昨日の続きのように心ここにあらずといった感じがするのは、俺の気のせいだろうか?


「なぁ、大地。今日もまだボーっとしてないか? 言ったろ、なんか知らんがうだうだ考えるのはよせって」

「あ、ああ……そ、そうだね!」


 すると、大地が俺の言葉を受け、まるで気持ちのスイッチを切り替えたように、妙なテンションへと変貌した。


「いよーし、じゃあ学校まで聖闘士星矢ゴッコでもするか! おりゃ、ペガサス流星拳!」


 流石は大地だ、気持ちの切り替えが早い。

 なんでまた星矢かは知らんが、ここはひとつ付き合ってやるか。


「ひょいっと。ブロンズセイントのヒヨッコ――」


 ――しまったっ!

 あぶない、こいつは大地の釣り針だ! そう、俺に探りを入れてきてるんだ!

 きっと思わず調子に乗って、昨日大地と戦った時の台詞を言わせる腹なんだろう。

 つか、ついうっかり言いそうになった俺の思慮が浅いだけなんだろうけど……。

 

 ん、ちょっと待てよ?

 つー事は、大地のヤツ……あの魔物を俺じゃないか? と疑っているのかも。

 流石は大地だ、侮れないな。

 

「ブ、ブロンズセイントのヒヨッコなんか、俺は選ばないぜ? 勿論俺は『スチールセイント』だ!」

「ス、スチールと来たか! じゃあもう勝てないや……流石太一、いいチョイスだな? 俺の負け、降参だ」


 何気ない、朝の登校時のアホな会話。

 そんな他愛の無い学生の戯れを、誰が「正義ヒーローマモノが、裏で腹の探り合い」をやってるなんて思うだろうか……。





 ショートホームルームを数分後に控えた教室で。


 もう既に、男子達は色めき立っていた。

 何故って? そりゃ海外からの転校生がやって来るって噂が、そこかしこを駆け巡っているからだ!


「日本語堪能な西洋人女子らしいな!」

「おうよ、パツキンでめっちゃかわいいって聞いたぜ?」

「ところがだ、もっと朗報がある! 何でもその美少女が住んでるのは我が心の友、佐藤太一の家らしい!」

「ま、まじかぁ! よかった、俺あいつとマブダチで~!」


 と、名前も良く覚えてない奴らが俺の周囲に集まり、どんな子がくるのかと、挙句はどんなパンツはいてるのかと質問攻めにしてきた。

 ええい、うっとーしい! お前らあっちいけ! 散れ! もしくは死ね!


 そんなワイワイガヤガヤとした雑音飛び交う中、一人静かに考え事をめぐらせているヤツがいる。


 そう……大地だ。


 なんだ、まだ俺を疑ってんのかな? まぁビンゴではあるけれどさ、そんな事どうだっていいじゃないか? お互い気付かない振りして楽しくやろうぜ?


「なぁ大地、お前まだうじうじと考え事に浸ってんのか?」

「…………」


 俺の声に、反応を見せない親友。

 聞こえてない? まさかシカト? いや、それは無いよな、絶対。こいつに限って……。


「だから大地ってば、一人悩むのはやめろって――」



「 う る さ い ! 黙 れ ! 」


 

 落雷にも似た大地の大声に、一瞬、教室の中の刻が止まる。


 考えたくは無いが――その迫力たるや、ともすれば昨日の大地の身体を乗っ取った、あのおっかねぇ神様のそれに酷似しているようにも見受けられた。

 まさか……!


「だ、だい……ち?」


 少しおっかなびっくりに伺う。

 と、まるで今のは他人だったとでも言うように、いつもの温和な大地の表情に戻り、俺に謝罪の意を述べてきた。


「あ、す……すまない、太一! その……俺、ちょっとどうかしてたかもしれない。ほんとうにごめん!」

「い、いや……いやいや! 俺の方こそすまない。悩んでるところにヅカヅカ入り込もうとして、ちょっとデリカシーに欠けてたよな? たまには静かに考えたい事もあるのにさ……許してくれ、大地」

「そ、そんな俺の方こそ!」

「なになに~? ケンカ? だめだよ、二人とも。さ、仲直りしなよ」


 美奈が二人の間に割って入ってきた。


「ば、ばか。喧嘩じゃないさ! なぁ、大地?」

「あ、ああそうだよ。ごめん、心配かけちゃったね?」


 俺達の、互いを気遣う姿を見て、少し心配そうだった美奈の顔がいつもの笑顔に戻った。


「ま、心配なんかしてなかったけどね! だってあなた達二人って、焼けちゃうほど仲いいもん」

「ああ、『ウホッ!』な関係だもんな、俺ら」

「あ、あははは……それは勘弁してくれ~」


 三人そろっての笑顔に、教室はまたいつもの時間を取り戻した。


 けれど。

 俺の心の中に何か一滴の「闇色」が垂らされたような、そんな感覚が、いつまでも残り続けていた。


次話予告

昼休み。ベルーアと共に消える大地。それを察し、「俺もちょっとだけ」とログインする太一。が、そんな太一に思いもよらぬピンチが!

次回 「ツングースカ師団長」


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!


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