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第二部 第一章 2 近衛師団第七特殊遊撃隊

「お~いみんな、終わったぜ~!」


 ふぅ、っと一息ついた後。廃屋の外にいるであろう四人と二匹を呼ぶ。俺達の部隊皆で勝ち取った、初めての完全勝利だ!


「タイチさん、お疲れ様でした~!」

「おう、やったな大将!」


 前回の戦いの際に、ギュレスタの攻撃魔法により、この廃教会の屋根にぽっかりと開いた穴がある。

 その穴から、伝令妖精の食いだおれ太郎(自称=ラインハルト・フォン・ローエングラム)と、この世界における案内役であるホムンクルスチックな生き物のチーベルが、はたはたと羽をせわしなくはためかせて飛んできた。


 それを合図のように、四人の「仲間たち」がドアを勢いよく開き、駆け込んで来て――


「お疲れ様です、隊長殿」


 ベルーアが優しい微笑と共に、労いの言葉をかけてくれた。

 白金色のしなやかな長い髪と、透き通るような白い肌。そして右目はアクアブルー、そして左目はチョコレートブラウンというオッドアイ。

 あぁ……この中二センスに溢れた「もろに俺のタイプ」である彼女の笑顔は、いつ見ても癒されるな。


「タイチおにいちゃん、おめでと~!」


 アルテミアのおっとりとしたかわいい声が響く。

 妹的な愛らしさを振りまく、押しかけ入隊者第一号だ。


 まるでスクール水着のような衣装にお団子頭の、大きなお友達御用達のような出で立ちの少女サキュバスちゃん。

 残念ながら、俺にはそんな性癖は無いのだが――もしまかり間違って手なんか出そうものなら、この子の姉的存在であり俺の上官でもあるサキュバス族のキューメリーに、どんな折檻を受けるか……。

 まぁ、そんなプレイもアリっちゃあアリ……いやいやいやいや。


「流石はお師匠様! やっぱりボクの想像通り、お師匠様はすごいです!」


 押しかけ入隊者第二号であるギュレスタだ。

 俺と同じくゲーベルト族の女の子であり、大魔王様の傍らで四六時中苦虫を噛んでいるキンベルグさんのお孫さんにあたる少女なのだが……キンベルグさんや、彼女の姉である近衛師団長補佐官のギュミリーズとは打って変わって、明るく元気な「ボクっ娘」である。

 俺が初めてこの世界に来た日以来、キンベルグさんがこの「目に中に入れても痛くないほど溺愛している」と噂されるギュレスタに、「新しく入ってきたタイチなる若者は、この世界の未来を担うかもしれない『何か』を持っている」と吹聴してくれたらしく……そのせいで、俺と言う存在に過度の期待と理想を抱いてしまい、我が部隊への参入と相成ったワケだ。

 ギュミリーズ曰く、「ギュレスタったら、祖父に無理を言ってあなたの部隊に編入させてもらったのよ……困った子だわ」だそうなのだが――あのじい様、孫娘には相当弱いらしい。


「やりましたね、タイチさん! あの男爵を一人で倒すなんて、流石です!」

「いや、チーベル……勝つには勝ったが、なんだか釈然としない勝ちさ。まるで勝利を譲ってもらった……いや、押し付けられたような――さ」


 俺は勝利に酔う事無く……それどころか、心の奥にある「何か」が引っかかり、表情に陰を作って呟いた。


「いえ、上から見ていたその限りでは――私はタイチさんの技量の方が上回っていると踏みますね」

「せやな! 大将の戦闘センスの向上は目を見張るもんがあるよ」

「そうか。フッ……ありがとうよチーベル、太郎」

「いえいえ。ともあれ、本当に驚くべきスピードのレベルアップですよね! これもベルーアを使って悪党ロキシアのねぐらを調べさせ、そこを襲って、あわよくば虜となった女性達を助けて恩を売り、エリオデッタ姫の時ように優しくしてあげて親密になるという、また違ったアプローチでハーレムを作ろうと目論んだ甲斐があったってものですよ! ……あ、でも残念ながらどこのねぐらを襲っても、捕らえられた女性はいませんでしたけどね」



 ブ フ ―――――― ッ !! は 、 は 、 鼻 水 噴 い た わ ! 



 くそっ、チーベルの野郎! ――――しっかりとバレてたのか。

 折角隊長として、シブくキメてたってのに…………いやいや、ここはちゃんと否定しなきゃだな!



「ば、バカッ! そんな訳あるか――」

「ふぅん、そうだったんですか? 隊長……いえ、 タ イ チ さ ん 」

「大将、サイアクやな……」


 ベルーアやくいだおれ太郎の抉り込む様な視線がとてつもなく痛い!

 や、やめてくれ、俺をそんな目で見ないでくれ!


 が、しかし! そんな二人よりも、もっと俺を射抜くような視線で凝視してくる人物がいる。それは――


「タ、タイチ隊長はそんなエロエロな心の持ち主だったのですかぁ~! ショックです! 幻滅ですぅ~!」


 と、これまた新入隊員である牛獣族の女の子「センセリーテ」が、俺の見透かされた下心――もとい、チーベルよってにかけたられた濡れ衣を真に受け、オロオロとした表情で詰め寄ってきたのだった。


「い、いやいや違うってセンセリーテ! 俺はそんなもの目当てで奴等を襲った訳じゃないさ。現にだな、ロキシア共のねぐらには女性なんかいなかったんだぜ?」

「ほ、本当ですか?」

「ああ、本当さ!」

「あ、でも一箇所だけ捕われていた女性達を救った所があったじゃないですか?」


 チーベルがまたいらん事を思い出して口にする。


「あ、あほ! あれは皆、子持ちの人妻だっただろ!」

「ひ、人妻! 子持ちの人妻! 熟れた身体の妖艶な女性! やっぱりタイチ隊長もムチムチでバインバインな女性がお好みなんですね! ひどいです、あんまりですぅ~! どうせ私は牛族のくせに、貧乳でスタイル最悪ですよぉ~!」


 一般に美少女と呼ばれるロキシアと何ら変わらないかわいい顔つきに、側頭部に生えた牛の角。そして白に黒のまだら模様の入ったレオタード風の衣装を身にまとい、お尻には牛のしっぽがある半牛半人。

 だが、まったく牛族のくせに――いやいや、牛獣族という割には、華奢で控えめなプロポーションの彼女……おまけに下ネタが超NGときた。

 本来ならば、俺の隊長権限で即チェンジで――と言いたいところではあるが……実は彼女、先日元老院裁判で見かけた牛獣族のじいさん「ゲルプ・ヨハン・ケルチーナ」の娘さんであり、一応押しかけ入隊者第三号なのである。

 まぁそこには、かの元老院達の「何かしら」の思惑があるのかもしれないのだが――センセリーテ本人も、好んでこの隊への編入を志願したんだよな……とある事情で。


(おい、チーベル! お前がいらん事言うから、センセリーテが「また」壊れちまったじゃないか!)

(これはすみません……またこないだみたいに、小一時間かけてなだめてあげてください)

(うぅ……死ぬほどメンドクセェなぁ)


 我が隊への新人入隊選別の際。

 三名ほどの新人戦士の中から一人を選ぶコンペが行われたのだが、その時にうっかり「牛族のワリにはおっぱいちっちゃいね」と口を滑らせたのがいけなかった。

 このセンセリーテ、相当自分のボディープロポーションにコンプレックスを抱いていたらしく……その後泣くわ喚くわで、なだめるのに一苦労だったんだ。

 そのフォローとしてあーだこーだと語った俺の必死の慰めの言葉を、何を勘違いしたのやら「甘い愛の囁き」と思い込み、父親の特権を利用して俺の部隊へとやって来たと言う訳なのだが……有能な人材ではあるが、まったく面倒な性格の部下を持ったもんだよ。


「ほらほら、センセリーテさん。隊長は違うっていってらっしゃるじゃないですか? だからもう泣かないの」

「うぅ……ぐすん……本当……ですか?」


 と、ベルーアが優しくフォローを入れてくれた。流石は我が隊の副隊長! 細かい所への気配り上手さんだ。


「それに、今日は隊長の初のお給料日! この後、皆さんにおいしいスイーツをご馳走してくださるそうよ? だから早く帰りましょ」

「えっ! あ、ありがとうございますタイチ隊長。やはり隊長はお優しい方なんですね!」


 さっきまでの泣き顔が、突然笑顔に変わる。しかも余計な笑顔が二つ追加されて……。


「うわぁ! 本当? タイチおにいちゃん!」

「ありがとうございます、お師匠様! ゴチになります~」

「ちょっ! ちょっと待てベルーア! 俺がいつそんな事――」

「まぁまぁ、タイチさん。初給料はパァーっと使うってのが、社会人の慣しじゃないですか」

「ア、アホかチーベル! そんな慣し聞いたことないわ!」

「観念してください、タイチさん。それで四方が丸く収まるんですから」

「そうだよ、タイチおにーちゃん! あ、キューメリーちゃんとアメリアスちゃんとマリィちゃんとアミィちゃんとミラルダちゃんの分も買わなくっちゃね……けど、ミラルダちゃんの分は何人分買えばいいのかな?」

「そんなの簡単だよ! お師匠様のお給料全部使って買えるだけ買えばいいんだよ!」

「アホ言え!」


 そんな問題発言に四苦八苦している俺へと、くいだおれ太郎が哀れみのこもった目で声をかけてきた。


「哀れやな……大将」

「お……おう。お前だけだよ、そう言ってくれるのは……」

「せやけど、俺への料金分はちゃんと残しといてくれよ? 今回は深夜労働やから二割り増しやで!」

「ぐっ……俺の給料全部スイーツに化ける事前提かよ」


 有能な人材ではあるが、まったく面倒な性格の部下を四人と二匹持った俺の……明日はどっちだ?


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!


今年一年、皆様にご愛顧いただき大変感謝いたしております。

時節柄、皆様ご多忙のことと存じます。

くれぐれもお身体のご自愛のほどお祈り申し上げつつ、来年も相変わらずのご愛顧をお願い申し上げて、歳末のご挨拶とさせていただきます!

皆様ありがとうございました!

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