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第九章 15 ワダンダール動乱

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


「うぉ~い、大地。ベオウルフさんが わ ざ わ ざ きてやったぞー」


 緊急の用事だという事で、とるものもとりあえずやって来た、ワダンダールの王宮内にある謁見の間の玉座前。

 ついさっき来た時とはなにやら様子がおかしい……やたらと静かで、それに空気がやけに重く感じる。

 一体何がどうなってんだ? 


そんな疑問符を浮かべる俺の鼻に、なにやら最近割と頻繁に嗅ぐ、忌まわしい匂いが漂ってきた。


 ――それは!


「すん……すんすん……うっ……これって――血の匂い!」

「よぉっ! よく来てくれた、ベオウルフ」


 ふと、俺を呼ぶ声がする。そいつはもちろん。


「だ、大地! な、なんだよこれは? なんかおかしいぞ?」

「ああ、おかしいだろうさ……この国がな」

「はぁ? な、何言ってんだよ!」


 静かで薄暗い謁見の間に、大地の足音が響いた。

 その音の方へ目を向けると、エクスカリヴァーを手にした大地が――狂気のオーラをまとってこちらに歩み寄ってくるのが見えたんだ……。


「な、何があったんだ大地!」

「ハメられたのさ……俺達は」

「ハメられただと?」


 薄闇の中に鈍く光る、大地の両眼。

 それは、怒りや悔しさといった「負の感情」が瞳に宿っているようだった。


「用が済めば、ポイッ……それがこの国のやり方らしい」

「用済み? 誰がだよ?」

「言ったろ? 『俺達』だってさ」


 俺達……って事は俺も、か。

 いやいや……こうして俺は生きてるし、さっきロングワートのおっさんとも、パレーステナの村娘達を戻してやってくれって――ん? ちょ、ちょっと待てよ!?

 あの村で覚えた違和感の意味、今判ったぞ!


 あの時、ロングワートは「至急二部隊ほどを送り、村の警護に当たらせよ」と、俺の前で命令してくれたっけ。

 にもかかわらず、村には兵士が一人もいなかったんだ。


 て事は何だ? 警護の兵を送らなかったって事なのか?


「奴の事だ、無駄な兵は裂かないだろうな」

「じゃあ何故あの時、ロングワートはあんな事を?」

「お前の手前、そう言わざるを得なかったんだろう……その後、すぐに命令を取り消したそうだ」

「取り消した? なんでお前がそんな事を知ってるんだ?」

「その時いた衛兵の隊長は、俺の息のかかった奴でさ……ここに戻った時、いろいろと報告してくれたよ……お前のためにとマルりんに夜食を持たせただろ? その時、ワインに眠り薬を入れたのは……そして都合よく、近くの村に野盗が現れたのは……何故だと思う?」

「ワ、ワインの眠り薬……あれは大地、お前の仕業じゃなかったのか!?」

「あぁ、俺もやろうかな? とは思ったさ。でも……やったからってどうなる? 俺に何の得が? こう言っちゃ何だが、あの時のお前にどうこうされる俺達じゃないぜ? わざわざ眠り薬で足止めなんて、姑息な真似なんかしないさ」

「そ、それじゃあの時の……そして村襲撃は――ロングワートが裏で糸を引いていたって事? なんのために!」

「そんなの、決まってるじゃないか……お前を葬るためだよ」


 な、なんで!?

 そんな疑問だけが、俺の頭をぐるんぐるんと駆け回った。


「お前、ここの世継ぎである姫様を人質として奪ったそうだな? でも実際は――かくまってやったんだろ?」

「うう……隠し事はできないか。そうだ、俺達が人質にとった事にすれば、殺盗団の目を俺達魔物側に向ける事ができるからな」

「その姫様が邪魔だったんだよ、ロングワートはな」

「――ッ! な、なんだと?」

「で、だ。ここからが肝心――姫は助けられなかった事になったとしたら? 俺達が連れて戻った娘達は偽者だったとしたら?」

「ちょ、ちょっとまて! そんなの姫だっているし、連れて帰ってきた娘達がちゃんと証人として――おい……冗談だろ? 彼女達に………… 何 を し た ! 」


 小さな懸念が、今俺の中で大爆発を起こした。まさか!?


「そう……口封じ…………されたよ」


 ――ガクリッ。


 俺の体の力が一斉に抜け、膝から崩れ落ちた。

 嘘だろ……全員? 二十名はいたあの女の子達は皆……。


「先に連れて帰ってきた乙女達は偽者、姫も既に……ロングワート以下の大臣共は、そう国中に宣言するところだった。ついさっきまでな」

「までは……? じゃあ」

「あぁ、懲らしめてやったよ。あの柱の裏で」


 そう大地が指差した先。一本の石柱の影。小さな水溜りができているのが見えた。

 それは薄闇に黒く輝き、行き場を求めて、少しずつその存在を広めていたのだった。


「あれは――血! ロングワートか? お前が――大地、おまえが?」


 パニック寸前の俺に、大地が冷静に答える。


「そう、あれはロングワートだ。俺が始末した」

「なぜ? お前にも何か……」

「ああ、やられた」


 そう言って、大地は懐に忍ばせていた獣皮に認められた親書を、俺の足元へと投げて寄越した。


「う~ん、なんて書いてあんのかわかんない……」

「帰ってくるなり、俺達は南の都『ベリンナム』にあるクリシュナ傭兵団の本拠地へと使いに出されてさ――そこに書かれてある用件ってのが『俺達三人を始末してくれ』って内容だったんだぜ? 馬鹿みたいだろ、自分の抹殺指令書を携えて、わざわざ遠く南の国まで行こうってんだ」

「途中で親書を読んだのか?」

「読むまでもないさ、親衛隊長が教えてくれたんだ」

「それで、キレちまったって事か」


 だが、大地は至って自然に振舞っている。

 ただ、その目だけは殺気に満ちているようだが……気が抜けないぜ。


「別にキレてなんかないさ……元々邪魔だった奴に、退場してもらう口実を自ら作ってもらったんだからさ……でもな、一番の問題はそこじゃないんだ……その親書の最後。バカなお前でも、最後の一文くらいは分かるだろ?」

「な、なんだよ? 最後の一文って……つか、最後の一文ってこれ――サインじゃないのか?」

「そう、そのサインをした人がさ……問題な訳だよ」

「おい、まさか……その人まで!」


 俺の脳裏に、最悪のシナリオが過ぎった!

 まさかとは思うが……大地の奴、国王を!


「お前にとっちゃ、覚え目出度きお方だったかもしれないな……事ある毎に『ベオウルフ殿は――』と、国王はお前を高く評価していたんだ……けどな、俺達には……国を救った俺達には、その褒美として――死を賜ろうとしたんだぜ?」


 その途端だ。

 王家の者専用の扉が開き、ベルガとともに猿ぐつわを噛まされた国王が現れた。


「お、王様! ベルガ、離してやってくれよ」

「ごめんなさい、それはできません……」


 ベルガが、申し訳ないと言った表情で俺に詫びる。


「でな、俺達も流石に国王を討ったとなるとさ、いろいろとマズいじゃないか? 『正義の味方』としてはさ――」


 そう言って、国王の下へとにじり寄る大地。


「そこでだ――。ベオウルフさんの登場と相成る訳だが……もう察しはついてるだろ?」 

「やめてくれ、大地! その人に罪はないんだろ? 皆、ロングワートの差し金なんだろ? ならさ、命だけは助けてやってくれよ!」


 無意識に懇願の言葉が出た。


「ベオウルフ、姫はお前にくれてやる……その代わりと言っちゃあ何だけど……」


 自由を奪われた国王に、大地の剣が牙をむく。


「ふがふがっ!」

「すまないな国王、俺達の正義のためなんだ。今までの悪行、天国で悔いてくれ」

「や、やめろ大地…… や め ろ ぉ ー ! 」


 ゆっくりと振り上げられたそれ(・・)が――――――素早く弧を描いた!


「ズバッシュ!」



「 ぐ ぅ ぅ ッ ! 」



 大地の不敵な表情が、飛び散る鮮血に染まった。


 力なく倒れ落ちた国王は、一寸の身動きも取る事無く、己の血の池に沈んでいった。


「こ、国王……こくおおおおおおぅ!」


 なんて……俺はなんて言ってエリオデッタ姫に詫びればいい?

 いや、詫びても詫びきれない。

 武器も携えずにノコノコとやって来て、目の前で、「大切な人」の父親を殺されたんだ。

 自分の愚かさ、不注意さが、この悲劇を招いたと言ってもいいだろう。


 そう、グエネヴィーアさえ持ってきていれば、大地を止められたんだ。

 俺はなんて間抜けで、バカなんだよ……大地に、親友に呼ばれた事の嬉しさから、つい気を許してしまった自分が情けない……。


 そう、大地は――今の大地は、俺の知っている大地じゃないんだ!


「てんめぇダイチいいいいいいいッ!」

「さぁ、ここでベオウル大いに役立ってもらうぜ? なにせお前を呼んだのはこのためだからさ……」


 そう言って、大きく息を吸い込む大地。そして、割れんばかりの大声で、叫んだのだった!



「 だ 、 だ れ か き て く れ ー ! 国 王 が 魔 物 に 襲 わ れ た ぁ !! 」



「な、なん……だと! 大地、てめぇこのために、俺に罪を着せるために!」


 俺がここへ来て、幾度も味わった屈辱――「気が付いた時には既に遅い」

 改めて感じるよ、まったく成長しない自分ってのをさ。

 だが、そんな反省は後回しだぜ、俺!


「な、何事でございますか! ――こ、これは一大事ぃ!」


 見知った番兵が、ドアを蹴破るように現れ、この惨状を見て息を呑む。

 が、これもきっと打ち合わせ通りの行動なのだろう。


「出会え、であえ~! 国王様が魔族に、ベオウルフの手にかかってお倒れになったー!」


 丸腰の俺にもかかわらず、国王の傷跡も見ずに叫ぶ番兵――それはあの時の「隊長」だった奴だ。 つまりは、大地の息のかかった者!


「大地、てめぇ……おぼえてろよ!」

「すまないな、ベオウルフ……正義のためだ、まぁ勘弁してくれ」

「何が正義だ! 人殺しめ」

「――それ、魔物の言う台詞じゃないぜ?」


 にやりと笑う大地。俺は愚かなピエロ役を押し付けられ、ただ逃げ去る事しかできなかった。


「ちくしょう、ゴーンドラド・デ・タイチパレス!」


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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