第11話「歌声の暴君・めぐる登場」
ついに、噂されていた「影の歌声の女」が姿を現す。
怒りっぽく、歌の才能に自信満々、酒に溺れる――個性的すぎる敵との出会いが、タクトたちに予想外の波乱をもたらす。
森を抜け、タクトたちは山道を進んでいた。リクはまだ昨晩の失態で落ち込んでいる。
「……ぼく、またやらかしたらどうしよう」
タクトは軽く肩を叩く。
「大丈夫。俺たちがついてる」
アリスも微笑んだ。
「リク、安心して。私たちは仲間だから」
しかし、その安心も長くは続かなかった。
突然、遠くの崖下から、奇妙な歌声が響いてきたのだ。
♪ ラララ~ン、ラララ~ン♪
高音で、しかしどこかずれた音程。
「……なんだ、この歌声は?」
タクトは耳を澄ます。リクは思わず後ずさる。
「ぼく……知ってる。この声……!」
その瞬間、崖の上から女性がふわりと降り立った。
酒瓶を片手に、髪を振り乱し、顔を紅潮させながら歌っている。
「聞け! めぐる様の完璧な歌声を!!」
彼女の自信満々の叫びに、タクトとアリスは目を見合わせた。
「……歌、かなりひどいな」
タクトが小声でつぶやくと、リクが思わず吹き出す。
「ひどいって言わないで! でも、うん……確かに……」
めぐるは突然キレた。
「な、何よその言い方! わたしの歌は世界一なのよ! 世界一!!」
酒に酔った勢いで足を踏み鳴らす。
アリスは少し呆れた顔で言った。
「なるほど……これが、影の女、めぐるね」
めぐるは怒りながらも、手に持った酒瓶をぽんと置き、にやりと笑う。
「ふふん。でも、わたし、悪い奴じゃないのよ? 本当は……助けてあげたくなるくらい、優しいの」
タクトは苦笑しつつも、パンを握る。
(……油断できねぇ。でも、普通の敵じゃなさそうだ)
リクは恐る恐る近づきながら、つぶやいた。
「ぼ、ぼく……歌に酔っちゃうかも……」
タクトとアリスは顔を見合わせ、苦笑する。
めぐるは酒と歌と怒りで、タクトたちに向かって走り出す。
――戦いの始まりか、それともコミカルな混乱か。森に響く歌声が、今夜も彼女の個性を強く印象付けた。
ついに「敵めぐる」が初登場!
怒りっぽく、歌に自信満々、酒に溺れる――一見強敵だが、どこか憎めないキャラクター。次回はタクトたちとの直接対決、またはコミカルな騒動が描かれる予定。




