第10話「影を落とす者」
第10話では、物語の大きな転換点に向けた「影の存在」を描きます。読者に「次に出るキャラはどんな奴なんだ!?」とワクワクさせる回。敵キャラ・めぐるの布石をここで打ちました。
夕暮れの街。タクトたちはリクの案内で「闇商人の市場」へと足を踏み入れる。そこでは禁忌の魔道具や怪しい薬が取引され、人々の目は濁っていた。
アリスは毅然とした態度で歩くが、リクは怖さに思わずタクトの袖を握る。
「…夜になると、ここには“歌声に酔わせる女”が現れるんだって」
リクの震える声に、タクトは眉をひそめる。
屋台の老人もまた口にした。
「やつの歌を聴いた者は、みな涙を流し、酒に溺れて戻ってこない」
アリスは真剣に頷き、低く囁いた。
「その者は…王国の反逆者と関わりがあるらしい。私たちが探す“黒の結社”とも繋がっている可能性があるわ」
その名はまだ明かされない。だが人々の口から出る噂は一致していた。
――激情的で、怒りやすく、だが歌を愛し、酒を手放せない女。
リクは耳を塞ぎながら叫んだ。
「僕、そいつの声をちょっとだけ聴いたことある!…胸がギュッて苦しくなって、勝手に涙が出てきて……でも怖くて逃げたんだ!」
空気が一気に張り詰める。
タクトは剣の柄に手をかけ、静かに誓う。
「必ず正体を暴く。そしてお前を守る」
その夜、遠くから聞こえてきたのは、酒に滲んだような奇妙な歌声だった。
アリスの瞳に警戒の炎が灯る。
――影の歌声を放つ者、その名は「めぐる」。
まだ姿は現さない。ただ、その存在感だけが物語を大きく揺るがそうとしていた。
次回はいよいよ「めぐる」との直接的な接触が始まるかもしれません。激情・歌・酒――彼女のキャラは一筋縄ではいきません。タクトたちの旅路にどんな波乱をもたらすのか、ぜひ楽しみにしていてください。




