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三題噺もどき3

作者: 狐彪

 


 暗い部屋でぼうっと座っていた。


 外は久しぶりの晴れ間に恵まれ、心地のいい陽気が広がっているんだろう。

 それはそれで暑くて仕方ないみたいだが、温かいことはいいことだ。

「……」

 暗い部屋とはいったけど、まぁ、さして真っ暗というわけでもない。

 外からの光は確かに入っている。時間が経つにつれ少しずつ、青が濃ゆくなっているだけだ。

 それでも何かをするには少し灯りが必要なくらいの暗さにはなっている。

「……」

 だけど、電気をつける気にもなれない。

 ベッドに腰かけているだけだから、動こうと思えばさっさと動いてしまえるんだけど。

 どうにも、いつからこうして座って居たか忘れるほどには、動けそうにないし、何もできそうにない。ただずっと、スマホ画面がばかりを眺めている。

「……」

 指を動かし、画面をスクロールしては、眺めて。

 頭の中では色々と考えながらも、何もできずに。

 ずっと、こうしていても意味がないとは分かっているけど。

 どうしたらいいのかも分からずに。

「……」

 せっかく12月に入ったばかりで、何かを始めるにいいタイミングだと思っていたのに。

 こういう区切りのいいタイミングでないと、やる気が出しにくい質だと分かっているくせに。見事に出鼻をくじかれて、何も始まらないままに12月が始まった。

「……」

 いやまぁ、なんとなくではあるが。

 今後こうしてみようと言う意思はなくはないのだ。

 それを行動に移す意思がないだけで。

「……」

 それなら何もないのと同じでだと分かっているけれど。

 行動力がないのは、いつまでたっても変わらないのだ。

 いつでも受動的で、能動的には動けない。

 そうした結果に失敗した過去が何度もあるから。

「……」

 しかしこうして、いろんな人の人生に触れる機会が世にあふれていると、私がどれだけ平凡で楽しくも面白くもない人生を送っているんだなぁと思ってしまう。

「……」

 何か劇的な出会いがあったわけでもない。人生を変えるような誰かに出会ったこともない。考え方すら変えてしまうような何かに出会ったこともない。

 ただぼうっと、されるがまま、流されるがまま。たまに自分から動いてみれば失敗して後悔して。何もできなくなっていって。自分が信用できなくなっていって。終いには周りも信用できなくて。……だけど1人きりは少し苦手みたいな。めんどくさいやつが出来上がってしまった。

「……、」

 ふと、カーテンの隙間から光がのぞいた。

 顔を上げてみると、朝日よりは濃ゆいオレンジ色の光が漏れてきていた。

「……」

 もうそんな時間なのか。

 徐々に、夕日に沈む太陽は。これから来る夜を告げようとしている。

 深夜になれば、月がその姿を現して。誰も居ない夜を照らす。

「……」

 太陽みたいに誰かを照らすような人になりたいわけでもない。

 月のように誰かを支えるような人になりたいわけでもない。

「……」

 何かを成し遂げたいわけでもない。何かをやりたいわけでもない。

 何かを経験したいわけでもない。何かを生きたいわけでもない。

「……」

 やりたいことがあると言うのは、ホントに凄いことだと思うのだ。

 やりたいことをやるために、他の何かを出来ることだってあるだろう。

「……」

 だけど、やりたいこともない人は。

 何をして生きて行けばいいんだろう。

 生きている必要なんてあるんだろうか。

「……」

 種がなくては花は咲かない。

 やりたいことがなくては、その先は真っ暗だ。

「……」

 生きている意味すらない。

 ここに居る必要がない。

「……」

 そんな奴。

 さっさと死んでしまった方が。

 良いと思わないか。









 お題:夕日・花・深夜

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