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【書籍化】閃光の冒険者(web版)  作者: 田舎の青年@書籍発売中
第七章『大陸戦争編』
98/135

第98話:ヨルムンガンド

※レヴィアタン→ヨルムンガンドに変更致しました。


すみませんm(__)m


 現在俺は、偶然流れ着いた敵戦艦の破片の上に乗り、海中の様子を窺っている。ヨルムンガンドの頭をぶん殴ったはいいモノの、ビビッて海面付近に浮上して来なくなってしまったのだ。


もちろん『光探知』を起動しているが、空気中と違い、海中には光が届きにくい。

水深七十メートルに届く光量は、地上の約千分の一。水深二百メートル以下になると、もう真っ暗である。


そのため、光探知はほとんど役に立たない。

俺は痺れる右手に回復薬をぶっかけながら呟く。


「どうしたもんか……」


これは以前にも説明したが、高ランク魔物は総じて賢い。ましてやSSランクともなれば、言うまでもないだろう。

要するに海龍は俺の攻撃を受けて、『これはちょっとヤバそうだから、あの人間が帰るまで深海に潜ってやり過ごしたろ~』と考えている訳である。まぁ何かを企んでいる可能性も微レ存だが。


今海は荒れ狂っており、いかにも最終決戦みたいな雰囲気を醸し出している。だから、殺り合うなら絶対今が良い。

生憎、沢山時間をくれたおかげで、こちらの準備は整った。

そろそろ出てきて貰おう。


【破滅の光雨】


空から破壊の光が降り注ぎ、次々と海へ落ちていく。前回とは違い、光雨一粒一粒の大きさも威力も違う。

しかし今更ヨルムンガンドに、シンプルな範囲攻撃なんて効かない。では何のために放ったのかと言うと……。


「見つけた」


【天叢雲剣、十重展開】


十の終焉級魔法が海水を蒸発させながら、深海まで突き進んでいく。

恐らく海龍は、まだ俺が海面にいることに気付いている。そのため、全て当たることは無いだろう。龍は世界で最も五感が優れている生き物だからな。


「だが、いくつかは当たる」


その直後。


「グォォォォォォォ!!!!!!」


ヨルムンガンドが猛々しい咆哮を上げながら、海面から飛び出た。

その姿、まるで天に昇る神龍の如く。


「よし、それでいい」


想像より効いている。もしや氷耐性が高い分、熱耐性がそこまで高くないのでは?幸か不幸か、≪光≫魔法は熱寄りだからな。


また完全にブチ切れているあの海龍さんは、俺を殺すまでもう止まらないだろう。しかし、それは俺も一緒だ。アイツを殺すまで帰る気はない。


「第二ラウンド開幕だ」


俺は海面を走り出す。海龍はかなりの特大ジャンプをかましたので、現在落下中である。


ヨルムンガンドがこちらに睨みを利かせた。

すると、海面から目掛けて数百、いや数千の水柱が放たれた。

『光速思考』と『光鎧』を起動し、全て避ける。


超圧縮された海水が、音速を超えたスピードで放出されているので、まともに食らうのはマズい。貫通はしないまでも、上空に撃ち上げられてしまう。俺は空を飛べるわけでは無いので、それは避けたい。足場が無ければ良い的になってしまうからな。


だが避け続けても埒が明かないので、天空に突き出した水柱の横部分を上手く蹴り、光が反射するようにジグザグに空へ駆けていく。


上から降ってくるヨルムンガンドと、下から昇っていく俺。


海龍は頭突きで俺を海に叩き落すつもりのようだ。もしそれが実現すれば、深海に引きずり込まれてジ・エンド。

対する俺は、もちろん……。


「いくぞ、【星斬り】」


俺は星斬りに【閃光】の魔力を纏わせ、最後の水柱を思いっきり蹴る。いつもの居合斬りの構えをしながら、距離を縮める。


そして。


キィィィン!!!


二つの膨大な魔力がぶつかり合い、空中で拮抗する。


「グォォ…」


「くっ…」


前世の北欧神話を知るものであれば、これを大蛇ヨルムンガンドと神トールの戦いと表現するに違いない。


なんちゅう魔力を纏ってやがる……。本当に小学生が考えたみたいな、最強の生物じゃないか。地龍なんて比じゃない。


バチッ!!!


という音と共に均衡が崩れ、轟音が辺りに響き渡る。

また俺は体勢を崩してしまった。一番懸念していた、空中で、だ。


海龍がその隙を見逃す筈も無く、柔軟な体を一回転させ、その遠心力を活かして尻尾を叩きつけてきた。


当たる直前に何とか【閃光鎧】を起動し、防御力を高める。

しかし初めて攻撃を受け、分かった。


「普通に死ぬわ、コレ」


衝撃で吹き飛ばされた俺は、何度も何度も海面をバウンドし、軽く一キロは移動した。まるで水切りのように。


「久しぶりに血を流したな。地龍ぶりか?」


額から血が流れ、視界がぼやける。

一歩間違えれば問答無用で死に至る、危険な戦い。

相手は海の…いや、魔物の王。戦う場所も圧倒的不利。

しかも敵は暴走列車の如く、もう止まらない(※自分のせい)。


「くっくっく」


最高じゃないか。


〈俺は今、生を謳歌している。〉


「は?」


気が付けば目の前に、五体のヨルムンガンドがいた。分身したわけでは無く、海水で造った魔法体。

五体とも大口を開け、ブレスを放った。


四本を天叢雲剣で相殺し、残りの一本は星斬りで両断する。

そのまま一体ずつ【星芒拳グリッターインパクト】で沈めていく。利き手は温存するため、左手で打つ。


殲滅後、再び静寂が訪れた。

たぶん海中のどこかから俺を狙っているんだろう。


深呼吸して息を整えていると、俺から見て三百六十度、全方位の海面が上昇し、超高波になって俺を飲み込もうとした。

いつもの俺なら上へ逃げるのだが……。


「どう考えても罠なんだよなぁ」


【ロンギヌスの槍】を三本同じ場所へ撃ち、高波に風穴を開ける。そこへ飛び込み、外へ脱出した。

瞬間、半径五百メートルはある巨大な水柱が深海から上がってくるのを察知し、全力で退避する。


「どこまで続くんだ、あの水柱は…。ん?よく見れば、中にヨルムンガンドがいるじゃないか」


なるほど、あのまま俺を水柱に引きずり込んで無力化する予定だったのか。良い性格をしているな。


「アイデアは良いが、その魔法のせいで空に穴が開いているぞ」


『超新星拳』をぶっ放した影響で、この海域には雷雲がたち込み、先ほどまで空に黒いカーテンが掛かっていた。だが、水柱が雲を貫通したので、その部分だけ日光が燦々と差し込んでいる。


天照アマテラス


「ガァァァァァァァァ!!!」


水柱が全て消滅し、空中にヨルムンガンドが取り残された。


海龍「我を暴走列車にしたのはお前だ、アルテ」

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