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【書籍化】閃光の冒険者(web版)  作者: 田舎の青年@書籍発売中
第七章『大陸戦争編』
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第70話:教皇国特殊部隊①

お疲れっす。いつもいいねをくれる方、あざっす。

 

 アルメリア連邦首都レクセンブルクの潜入調査二日目の朝

首都にある一般的な宿屋の一室で俺は目覚めた。


「はっ」


食いしん坊ムーたんに頭から丸のみにされるという悪夢を見た。食われた後、胃の中で胃液に浸りながらボーっとしていたら、いつの間にか目覚めていた。こんなに冷や汗をかいたのは久しぶりである。普通に人生を諦めていた。


このまま外出するのは嫌なので、俺は一度服を脱いでシャワーを浴びることにした。取っ手を一度捻れば冷たい水が、二回捻れば丁度いい温度のお湯が出る。一度目は水の魔石だけが反応し、二度目は水と火の魔石が反応する仕組みである。どうやって水を出しているのかって?詳しくは分からないが、恐らく魔石か、近くの媒体に魔法陣が刻んであるのだと思う。


「ふう。朝シャンは最高だな」


とか言っているが、実はちょっぴり寂しい。昔から友達も少ないし、一人でいることが多かったので勘違いされがちなのだが、俺は基本寂しがり屋である。普段から誰かと一緒にいたいタイプだ。今回エクスを連れて来れなかったので、代わりにムーたんを連れてくればよかった。美味しい飯をチラつかせればイチコロだろう。


「でもムーたんを連れてくると、逆にセレナが寂しくなるんだよな」


俺のボッチ問題はすぐに解決できるものでもないので、今は調査に専念するか。

アルメリア連邦にいる知り合いは主に五人。Bランク冒険者パーティ【天狼】の三人と、Aランク冒険者のカレン。そして商人のマティスである。

天狼とマティスはきっと上手くやっていると思うが、カレンは少し心配。剣仙ローガンの弟子である彼女は、今もなお師匠であるローガンを探しているのだろうか。


「特に後悔はしていないが、少し罪悪感が湧いてくるんだよな」


今度会ったら、別の道を勧めてみるか。でもやっぱキレられそうだからやめておこう。アイツ顔は清楚系なのに気性はSランク魔物より荒いからな。怖い。


シャワー室から出てマジックバッグから新しい服を取り出して着る。次にその上から冒険者ユートの専用装備を装着する。これもドワーフのおっちゃん製なので、着心地は抜群だ。

最後に【星斬り】を腰に差せば準備完了。


「ん?【星斬り】をカウントすれば、実質二人行動なのでは?」


〈うるさいわね!ごちゃごちゃ言ってないで調査に行くわよ!〉


なんて言いながら宿屋から出た俺は、とりあえず冒険者ギルドへ向かった。

ぶっちゃけ先ほど述べた知り合いたちがレクセンブルクにいる可能性は低い。そのため知り合い探しは後回しにして、まずは己自身の目で確かめなければな。


「諜報員から見た連邦と、生粋の連邦国民から見た連邦は少し違うと思ったから、是非再会して話を聞かせて貰いたかったんだけど」


他国出身の諜報員と違い、現地に何十年も住んでいる人々はほんの少しの変化でも敏感に感じ取れるというのが俺の理論だ。もちろんプロの諜報員の方が情報戦に慣れているので、別にどちらが良いとかそういう話ではない。ただ両方から情報を集めたいだけだ。長々と変な話をしてすまん。


「おっちゃん、レクセン饅頭一つちょうだい」


「まいどありっ!」


やはり寒い日には暖かい食べ物と相場が決まっている。カナン大帝国とアルメリア連邦は前世でいう緯度が変わらない。要するに季節と気温が一緒なので普通に寒い。まぁ雪が降っていないだけマシだな。てかこの饅頭美味いな。帰りにお土産用にもっと買おう。


暫く歩いていると、冒険者ギルド「レクセンブルク」本部に到着した。やっぱデカい。

中に入ると、冬なのにロビーは数多の冒険者達で溢れかえっていた。前にも説明したが、冬眠するタイプの魔物もそこそこいる上に、冬は薬草などの素材も取れないので、冒険者の数がグッと減るハズなのだ。まぁ首都だから護衛依頼とか、簡単なモノで言えば薪集めの依頼とかが多いのだろう。アデルハイドやバルクッドのような巨大都市も基本同じだ。


「Cランク冒険者のユートさんですね。えーっと、最後にここで依頼を受けたのは一年半前ですか。念のためどこで何をしていたのか聞かせて貰っても?」


「チェスター男爵領のリングストンに帰省していた。暫く実家の仕事を手伝っていたのだが少し落ち着いてきたから、またここへ戻ってきたんだ」


「なるほど。ソロ冒険者なのである程度は自由が利きますし、本当のようですね。どのくらいの期間ここで活動されますか?」


「最長で二ヵ月だ」


なにやら受付嬢は書類にメモしている。別の受付でも同じことをしているので、俺だけ特別に聞かれているわけではないだろう。


「わかりました。では早速ご用件をお聞きしますね」


「最近知り合いのSランク冒険者達を見かけないのだが、何か珍しい依頼でもあるのか?」


「すみません。それに関しては秘密事項になっておりまして...」


「わかった。ではなぜ今日は色々と聞いてきたんだ?」


「数年前から犯罪に走る冒険者が増えているので、その防止のために聞いてます」


「なるほどな、よくわかった。今日は失礼する」


「こちらこそ貴重な時間をいただきありがとうございます」


「おう」


マルコからあらかじめ聞いていたのだが、やはり秘密事項だった。それに犯罪に走る冒険者が増えているから~とか、それっぽい理由を並べやがって。冒険者って言うのはスラム出身の奴も多いんだからそんなの今更だろうが。この国の上層部は冒険者を馬鹿にしているのか?

というか完全に、諜報員とか俺みたいな奴を炙り出そうとしているよな。


「結局何もわからず仕舞いだったな」


光探知を起動すると、相変わらず謎の六人組が俺の後を付けていた。器用に気配を消し、建物の屋根をつたって俺を追跡している。実は宿を出た時から気付いていた。でもわざわざ気にすることでも無いので言わなかったのだ。もしかしてバレていないつもりなのか?あいつ等は。


さすがに都市内で戦いをおっぱじめるわけにはいかない。

というわけで謎の六人組に追跡されたまま、俺はレクセンブルクの正門を出て近くの森へ入った。木々の間をすり抜けながら進むこと約十分。ようやく相手は痺れを切らして、姿を現した。


「お前らどうせカリオス教皇国の暗殺部隊かなんかだろ?」


饅頭うまうま

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