――幕間――
「――というお話なんですけれど、いかがでしたでしょうか? 実話かどうかは、私にもわかりませんよ? 子供だった私をからかって、適当な作り話をしていたということもないとは言えませんから」
ふふふと笑いながら、語り終えた羽切はお茶を一口喉へと流し込む。
「巨大な猫の顔って、どんなだろ。あたしにはちょっと想像がつかないなぁ。見たら絶対に恐いだろうけど」
羽切が語った話の中に出てきた異界の存在を想像しようと上目遣いに天井を見つめ、戸波が唸る。
「感覚としては、トンネルの穴と同じくらいの顔だったと、そう言っていましたね。それがぬぅっと夜闇の中から浮き出てきたらしいですから、小学生のましてや女の子一人でそんなものを見てしまったら、逃げ出してしまうのは当たり前ですよね」
「うわぁ、それあたしなら腰抜けて動けなくなりますよ。もう頭抱えてひたすら誰かが来るの待つしかできなさそう」
「その間に食われて終わりだろ」
渋沢が茶化すように戸波へ告げ、即座に睨まれるのを横目に見ながら、俺はふと昔五歳年上の姉から聞かされた話を思いだした。
あれは確か、二年くらい前の夏の夜だ。
七月の、梅雨が明けて一週間程が過ぎたときに、変な体験をしたと教えてくれた。
「次、俺が話そうか。姉貴が体験した話があるんだ」
全員を見回しながらそう言うと、真っ先に羽切が食いついた。
「まぁ、お姉さんがいらっしゃるんですね。どんなお話なのか、興味があります」
「直美さんも恐い体験なんてしてたんだ? あたしも聞きたい」
戸波もうんうんと頷き、渋沢は黙って俺が話し始めるのを待つ態勢を作っている。
「二年くらい前、適当に聞いてた話だから、ちょっと脚色する部分もあるけどそこは勘弁ね。二年前の七月に、姉貴は今の旦那と夜にドライブに出かけたらしいんだけど、その最中に体験した話」
そう前置きをして、俺は当時の姉との会話を思いだしながらその不思議な体験を語り始めた。




