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怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
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第四十一話:赤い

 俺が小学一年の時に、クラスにすごい騒がしいタイプの男子がいてさ、そいつから聞かされた話なんだ。


 夏休みが終わって、二学期の始業式の日にそいつ、「おれすげぇの見たんだぜ!」って、学校に来るなり自慢気に言いだして、皆興味津々な様子でそいつの話に耳を傾けた。


 そいつ、夏休みの夜に、思いっきり鼻血を出した日があったらしくてさ、ティッシュ鼻に詰め込んで、何度か交換しながら止血してたらしいんだよ。


 それで、どうにか鼻血も止まって、自分の血がベッタリ付いたティッシュを台所のごみ箱へ適当に捨てて、そのまま寝たって言うんだけど、夜中にトイレに行きたくなって目を覚ました。


 我慢もできないし、仕方ないから起き上がってトイレに向かったんだけど、そいつの家、構造上台所を通らないとトイレには行けないらしくて、電気も点けないままそこを通りすぎようとしたんだって。


 そしたら、どうもごみ箱の辺りでカサカサカサカサ音がする。


 何かと思って気になったから、そいつ、トイレに行く足を止めて、台所の電気を点けてみた。


 そしたら、ごみ箱の中にゴキブリがうじゃうじゃ群がって動き回ってたらしくて。


 さすがのそいつもゾワッとしたみたいなんだけど、そのゴキブリの中に一匹だけ、見たこともない、まるで熟れたトマトみたいに真っ赤な色をしたゴキブリが紛れ込んでいたのを見つけて、何だこれ? って、そこに目が釘付けになったんだって。


 よく見ると、そのゴキブリ、さっき自分が捨てた鼻血の付いたティッシュにくっ付くようにしてとまってて、何だか自分の血を舐められてるような気がして気分が悪くなったらしいけど、それでも目を離せずにいたら、赤いゴキブリ、暫くすると逃げるようにごみの隙間へ潜り込んで、それっきり姿を見せることはなくなったらしい。


 次の日、親へ伝えてゴキブリを捕まえる罠を仕掛けたりもしたけど、掛かるのは全部普通の黒いゴキブリばかりで、あの血と同じような色をしたゴキブリは、一度も出てはこなかったそうだよ。

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