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怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
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第三十九話:お化け屋敷にて

 高校三年の冬休みにその南橋って奴、もう皆で外出する機会もなくなるかもしれないからってことで、家族全員で遊園地に行ったらしいんだ。


 両親と婆ちゃん、あとは三つ下の妹の五人家族。


 遊園地に着いて、まぁ何か色々アトラクションを楽しんでたら、妹がお化け屋敷見つけて、入りたいって言いだしたんだと。


 それでお化け屋敷の中は結構暗いし、婆ちゃんは危ないから待つことになって、両親も休憩してるから二人で行ってこいって、兄妹二人だけで並ぶことになった。


 そんで仕方なく二人で列に並んで、自分たちの順番がきたから入口のドアをスタッフに開けてもらって中へ入った。


 妹は全然ビビるような気配もなくて、「うわ、中めっちゃ暗いね」とか「あのミイラすごいリアル」とか普通にはしゃいでて、そのおかげで南橋もそれほど恐いって感じは味わわないで済んでたって言うんだけど、真ん中まで進んだ辺りから、自分たちの近くでボソボソボソボソ、誰かの喋る声が聞こえてきてることに気がついたって言うんだよ。


 最初は壁の裏にでもスタッフがいて、ひそひそ話でもしてるのかなと思ってたんだが、そいつと妹が先に進んでいってもずっと同じくらいの距離で声が聞こえ続けてる。


 何か変だなって感じ始めて、それでもこれも仕掛けの一つで、どこか見えない場所に小型のスピーカーでも隠してあって、そこから声を流してるのかもしれないと考えてあんまり意識しないようにしてたらしい。


 そんで、出口までもうすぐって所まで辿り着いて、それでもまだ声が聞こえてるもんだから、「この声、ずっと何喋ってんだろうな?」って妹に話しかけたら、妹も気になってはいたらしくて、「うん、ちょっとしつこいし気味悪いね」みたいなこと返してきたって言うんだけど、ちょうどその場所ってのが、赤いライトに照らされた部屋の中だったらしくてさ。


 二人とも当然赤く照らされてて、ライトの明かりの反対側には自分たちの影ができてて。


 二人で「これ、どこから聞こえてきてるんだ?」って、部屋の中見回してたら、急にボソボソ喋ってた声が


「ここにいるだろ」


 って、はっきりした声量で答えてきた。


 二人揃って驚いて、声のした方向へ顔を向けたんだけど、そこ、自分たちの立ってる床で。


 そこに並ぶ兄妹二人の真っ黒い影がさ、どっちも不自然に曲がってるって言うのか(ゆが)んでるって言うのか、(いびつ)な形になってるのが見えて。


 は? 何? って、二人で呆然とその影見てたら、突然妹の影だけが勝手にスーッと横に動きだしたもんだから、それ見た瞬間、妹が悲鳴上げて逃げだして、南橋も慌ててその後追いかけて出口から飛び出したんだってよ。


 外にいた他の客は事情を知らないから、ニヤニヤして二人のこと見てるし、待ってた家族も面白いもんでも見たように笑ってるしで踏んだり蹴ったりな気分だったらしいけど、外に出てから改めて自分たちの影を見ても、特に何の変哲もない普通の影でしかなかったって。

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