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怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
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第三十話:守護猫

 今はもう死んじゃったけど、昔実家の近くに住んでたおっさんがさ、うちの猫は幽霊を退治してくれるんだぞって、自慢するみたいに話してくれたことがあってな。


 どういうことだろうって気になって、詳しく話を聞かせてもらったんだ。


 そしたら、こんなことを教えてくれたんだよ。


 後になってわかったんだけどよ、そのおっさんが住んでた家、今で言う事故物件だったんだ。


 でさ、そのおっさんってのが五十代の独身で、一匹の猫と暮らしてた。


 事故物件の家って言うのは、過去に子供と母親が心中だか何かをした家らしくて、夜になると(まれ)に足音が聞こえたり、「ん?」みたいな、一瞬だけどこかから子供のものらしき声が聞こえたりしてたって言うんだよな。


 んで、たまーになんだけど、夜に寝てると金縛りに遭うこともあったらしくて。


 そうすると必ず、家の中を徘徊する女の影みたいなのが見えて結構困ってたみたいなんだ。


 つっても、そのおっさん他に引っ越しするつもりはなかったみたいだし、気味悪かったりはしても死ぬわけじゃないからってずっと我慢して生活してて、終いにゃ慣れちまったみたいなこと言ってたけど。


 ある日な、おっさんが夜一人で酒飲みながら、飼い猫に冗談でこう言ったって言うんだ。


「猫ってのは、魔除けの力があるとか言う話があるけど、お前も猫ならこの家にいる幽霊なんとかできねぇか? たまには父ちゃんに恩返ししてくれても良いだろ?」


 ってさ。


 もちろん猫は返事なんてするわけもなく、おっさんの横で丸まってるだけだった。


 ただ、それから数日が過ぎて、おっさんはまた金縛りに遭った。


 チッ、またかよ……。なんて思いながら部屋の中に意識を集中させてると、やっぱり家の中を歩き回る誰かの気配がする。


 あっちに行ったりこっちに来たり、ただひたすらに家の中を徘徊してて、たまに壁を擦り抜けるようにしておっさんが寝てる部屋にも薄っすらとした女の輪郭が姿を見せたりしてたんだ。


 そしたらさ、急に側で一緒に寝てた猫が威嚇するような声を上げて起き上がったかと思うと、飛びつくようにしてその幽霊の頭に襲いかかって、たぶん噛みついたりでもしたのかな。


 そうしたら、その幽霊パッと消えちまって、同時におっさんの金縛りも解けて自由になった。


 だからおっさんも驚きながらすぐに立ち上がってさ、部屋の電気点けてその幽霊消えた場所確認したら、猫がさ、その場所に座って何か下向いて頭動かしてて……何してんだって思いながら覗き込んだら、猫、口に絡まった長い女の髪の毛、吐き出そうとしてたって。


 さっきも言ったように、おっさんは独身だし女を連れ込むようなことも全然してなくて、家の中に女の髪の毛があること自体があり得ないんだよ。


 そんで、その夜を境にしておっさんの家ではおかしな現象がピタッとしなくなって、金縛りに遭うこともないから快適に眠れるようになったんだってよ。


 幽霊が恐いなら、猫飼って大切にすると良いぞなんて、そんなこと言いながら笑ってたけど。


 今改めて思い返すと、霊が出るのわかってて普通に暮らしてたんだから、猫だけじゃなくてあのおっさん本人もなかなかの強者(つわもの)だった気がするな。


 

 ……ま、そんなおっさんの話。

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