表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
36/66

第二十三話:顔パック

 これも、前にホラーサイトの掲示板で読んだ話。




 俺には、普段からよく霊感があると豪語している友人がいる。


 そいつは大学を卒業してすぐに勤め始めた会社の同期なのだが、日常的に霊の姿が見えているそうで、私生活でもうんざりすることが多いとよく愚痴をこぼしているような奴だ。


 今から一年程前になるが、俺は当時、風俗店で知り合った女と浮気をしていたのだが、付き合いだしてすぐに相手の本性が見え始め、そのあまりの独占欲と嫉妬心の強さから二ヶ月程度で交際をやめ連絡を絶ってしまった。


 あくまで遊びの関係と割り切っていたので、保険のため妻がいることだけは知らせていたが、職場や家の住所は一切明かさなかったし、ばれるようなへまもしていなかったと思う。


 その証拠に、彼女からは未だ職場や家に電話や手紙などはきたことがないし、本人が直接(・・)姿を見せたこともない。


 ただ、その彼女と縁を切って一月が経過した頃、霊感のある友人から


「……お前、最近女遊びしてただろ?」


 と、いきなり話かけられたことがあった。


「……何でそんなことを訊くんだ?」


 周りにばれた覚えはない。そう思い、警戒しながら問い返す俺に、友人はどこかばつの悪そうな顔をしながら


「いや……お前、女の生霊が憑いてるから。今まではいなかったはずだし、最近何かあったのかと思ってさ。面倒そうな感じだから、気をつけろよ?」


 そう告げて、避けるように仕事へ戻っていった。


 正直、この時点ではまだ、俺は幽霊とか怪異といった非科学的なものを信用していなかった。


 だから友人から言われた言葉も、質の悪い冗談を偶然このタイミングで言われただけだろうと、都合の良いように解釈してしまっていた。


 だが、それから一週間が過ぎた日の夜、気味の悪い出来事が俺の身に起きた。


 その日は休日で、家で妻と二人で夕食をとり就寝の直前に風呂へと入ったのだが、風呂から出た時、妻は寝室にある化粧台の前で顔パックをしながら鏡を見ていた。


 その妻の背中へ、


「俺、先に布団入るぞ」


 と声をかけると、


「うん、わたしもすぐ寝るから」


 そう返事をしてきたのだが、その声は聞き慣れた妻のものではなく、あからさまに他人の、縁を切った浮気相手の女と瓜二つの声に聞こえた。


 俺が驚いて妻の背中を凝視していると、視線を感じたのだろう振り向いた妻が


「どうしたの、恐い顔して?」


 と首を傾げてこちらを見上げてきた。


 声はもう、いつも通りの妻のものだった。


 しかし、その振り向いた白い顔は、まるで真っ白な薄いお面を被っているような、どこか妻とは違う別人の顔のように映り、俺は「何でもない」とだけ告げ逃げるようにして布団へ潜り込んだ。


 その翌日、気味が悪くなった俺は友人に紹介を頼み、妻には内緒でお祓いをしてもらうため神社へと出向いた。


 それが功を奏したのか、それともあの夜の出来事自体が俺の勘違いだったのか、どちらにせよ、それ以降あの女の声を聞くことも妻の顔がおかしくなることもなく、今のところは平穏な生活を続けられている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ