第二十一話:ごみ袋
これは、ネットの掲示板で読んだ話ね。
今から半年くらい前、関東の山にある廃墟へ、男三人で肝試しに行った時の出来事です。
その時は大学の夏休みで、彼女もいなけりゃ特に予定すらもない野郎三人組で、何か夏らしいことしようかってことになって。
それで、「だったらドライブがてら山にでも行こうか」って、免許持ってるやつが言ってきた。
しかもそこ、かなりボロくなった廃墟があるから、肝試しにもちょうど良い場所だろうと。
男だけで海に行ってもパッとしないし、カラオケとか行くにも金かかるしってことで、全員一致でじゃあそこ行くか! ってことで話がまとまった。
と言っても、三人ともそんなに度胸があるわけじゃないから、朝早めに出発して、明るいうちに探索を済ませて、後はどっかで飯でも食って帰ろうってことになった。
そして当日。朝九時くらいに出発して、目的地の廃墟へ到着したのが十一時を少し過ぎた頃。
梅雨も明けてたから天気は快晴で、すごく蒸し暑い日だった。
そこらじゅうで蝉が鳴いてて、そんな中に朽ち果てた人工物があるのを見てたら、だんだん非日常へ迷い混んだような気分になって、皆ワクワクしてたと思う。
廃墟の周りは腰くらいの高さまで伸びた草だらけで、他に誰かが来たりしてる痕跡も全然なかった。
そんな中を三人でどうにかこうにか進んでいって、廃墟の中へ入り込んだんだ。
そこ、昔は何かの施設だったみたいで、三階建てのコンクリート造りになってて、学校をもう少しだけ小さくしたような、そんな建物だったんだよ。
そこを三人で、やべぇとか壁にエロい落書きあったぞとかふざけ合いながら、一階から順番に歩いて三階まで辿り着いたんだけど、ぶっちゃけ日中だからそれほど恐くはなくてさ。
幽霊が出てくるどころか、ラップ音みたいな変な音が鳴ったりすることもなくて、(あー、所詮こんなもんなんだなぁ)なんて肩透かし食らったような気分で下へ戻り始めたんだけど。
一階まで下りた時に、友人の一人が裏口のドアを見つけて、せっかくだから見れる場所は全部見ておこうってことで、そこから外へ――建物の裏側へ出ていったんだ。
そしたら、表側と違って裏は日当たりが良くなくて少しだけ薄暗くなっててさ。
かなり近い場所に高い木もたくさん生えてたから、余計に陽が射さなかったんだ。
それで、こっちは少し気味悪いなぁなんて思いながら壁沿いに歩いてたら、足元はもう、下草がすごくて地面が見えないくらいなんだけど、そこにさ、でかいサイズの黒いビニール袋が一つ放置されてるの見つけてさ。
結構古い感じはしたけど、破れたりはしてなかった。
口が結ばれてて、中に何か入ってるのも一目でわかったんだ。
たぶん、不法投棄か、この建物が使われなくなった時に出たゴミを回収し忘れて放置されてるか、どっちかだろうなんて思いながら近づいてたら、急に友人の一人が「おい、それ開けてみようぜ」って言いだして。
正直少し恐いって気持ちもあったけど、どうせゴミが入ってるだけだろうし、その場のノリもあったからじゃあ開けてみるかってことになって、じゃんけんに負けた言い出しっぺの友人が一人でそのゴミ袋へ近づいていった。
自分ともう一人の友人は、五メートルくらい離れた場所から笑いながら見てて、袋開けた瞬間大声出して驚かせてやろうかとかふざけたこと考えてたんだけど。
友人がさ、ゴミ袋に触れようとした瞬間、それ、いきなりガサガサガサガサガサガサガサガサ!! って、暴れるみたいに動きだして、俺たち三人驚いて馬鹿みたいな声上げながら逃げだしてきたんだよ。
建物の中に戻る直前、ドサッて音がしたから俺一度だけ振り向いたんだけど、その袋、バランス崩したみたいに横に倒れたところだった。
さすがにもう戻って確かめる勇気もなかったし、あれが何だったのか誰もわからずじまいになったけど。
まさか、あんなクソ暑い日の山中に、黒いビニール袋へ入れられてる人間がいた……みたいなことは思いたくないんだけど。
でも、大きさ的には人が体育座りして入れるくらいだったし、もしあれが何かの事件に巻き込まれた人が入ってた袋とかだったとしたら、あの後どうなったのかなとか、嫌な想像しちまうんだよな。
今のとこ、ニュースにもなってないからやっぱり違うのかななんて、都合よく考えたりもしてるけどさ、場所が場所だし、単にまだ誰も気づいてないだけだとしたら……。
あんまり深く考えたくないけど、どうしてもふとした瞬間、頭に浮かんじまうんだよな。
という、そんな体験をしたって話です。




