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怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
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――幕間――

「……あんまり恐くなかったかな。俺も話半分で聞いてたから、うろ覚えな部分もあったけど」


「いえ、そんなことはありませんでしたよ。充分に楽しめるお話でした」


 一気に三話を語り終え、自信なく自虐を口にする俺に、羽切は自然な笑みを湛えて小さく首を横へと振ってみせた。


「学校のプール、トンネル、そして身近にあるごく普通のお店。本当に、日常の中へ当たり前に溶け込む場所にでも、怪異を呼び込むスペースというのは存在するものなのですね。遭遇したモノが何であったのか。わかってしまうのも当然恐いものですが、曖昧で正体がわからないままうやむやになってしまうのも、後味の悪い恐怖がずっと記憶の奥に留まり続けるような不快感がつきまとう。……どちらにせよ、この世の者ならざる存在と遭遇してしまえば、その人の記憶には一生拭えない残滓(ざんし)がこびり付くことになるのでしょう」


 ――それこそ、まるで呪いのように。


 最後にそう言い添えて、羽切はコクリと微かな音を鳴らしながらウーロン茶を喉へと流し込んだ。


「ああ、そうだ。記憶と言えば、人や動物だけでなく物や場所にもそういった概念があるというお話をご存じですか?」


 そして、ふと何かを思いだしたような仕草をすると、羽切はどこか面白がるようにそんな問いを口にしてきた。


「物や場所、ですか? そうですね……聞いたことくらいはあります。長く愛用した物には魂みたいなものが宿って、付喪神(つくもがみ)になるとか、そういう話ですよね?」


 昔読んだ妖怪図鑑か何かで、そんな知識を身につけたことを思いだしながら、俺は相槌を打って答える。


「ええ、そうです。古くなった物、長年人から愛着を持って使われてきた場所等には、特別な何かが宿る。そんなお話をいくつか、過去に聞かせていただいたのを思いだしました。きっと、こういうものも怪談になると思いますので、いくつかお話しましょう」


 人や動物以外の怪異。


 物の幽霊などというものは、本当に存在するものなのか。


 恐らく何から話すべきかを吟味しているのであろう羽切の顔を見つめながら、俺たちはジッとその形の良い唇が動きだすのを待った。

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