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怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
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第十四話:水の中

 これさ、おれが高校二年の夏にマジで体験した話なんだけど、ちょっと聞いてくれよ。


 俺の通ってた高校さ、十年以上前からずっと受け継がれてる怪談みたいなのがあってよ。


 それがな、プールに猫の幽霊が出るってやつなんだよ。


 プールで泳いでると、水中でゴーグル越しに猫が沈んでるのが見えて、慌てて保護しようとしたり誰かに伝えようと水面から顔出したりすると突然消えていなくなる、みたいな内容の。


 でな、おれそういうの信じねぇし興味もなかったから、まぁ、フーンくらいに思って聞いててさ。


 どうぜずっと前に誰かが面白半分に言い広めただけのがせネタだろうって、そう決めつけてたんだよ。


 だけど、高校二年の夏休みにさ、おれと他に四人で集まって友達の家で調子に乗って酒飲んでた時によ、友達の一人が「暑いし今からプール行って泳いでこようぜ」とか急に言いだして、おれらも酒のせいで気が大きくなってたりもしたから、よし行ってみるかってことで、夜の学校に忍び込んだんだよ。


 うちの高校、校舎の中は無理だったけど校庭とか敷地内なら普通に入り込めたし、プールも周り囲ってる金網みたいなのよじ登れば余裕で進入できたわけ。


 それで、男しかいねぇしどうせ夜だし酔っ払ってるしで、それぞれトランクス一枚とか素っ裸になったりしてプールに飛び込んで遊び始めたんだけど……。


 何分くらいだったかな。ニ十分も好き勝手に泳いだりしてたかな。


 おれさ、泳ぐのやめて一回下に足つこうと思って身体真っ直ぐに起こしたんだけど、その時に何か変なもん踏んづけた感触が足の裏にしてさ、(ん? 何だこれ?)って思いながらまた水に潜ってそれ手探りで掴んだんだよ。


 それ、野球ボールよりちょい大きいくらいの丸っぽい形してて、海藻でも生えてるような手触りがしてさ。


 明りが周りになくて真っ暗で、月明りくらいしかなかったんだけど、それ顔に近づけてよぉーく見てたら、何か……急にモゾッて動いてさ、「ヴァァァ……」って、すげぇ低い声で鳴いたんだ。


 おれビックリして、慌ててそれ放り投げちまってさ、おれの悲鳴聞いて集まってきた友達たちが面白がってその放り投げた何かを探したんだけど、結局見つからなくておれが皆を驚かせるために嘘ついたってことにされちまったんだ。


 おれさ、猫の霊が出るみたいな噂あるのは知ってたから、ひょっとしたら自分が掴んだのはその仔猫の生首だったのかなって、その時は思ったりして困惑してたんだけど……。


 暫くしてから冷静になって思い返してみるとさ、猫の頭って感じじゃなかったよなって気がついて。


 て言うのも、猫ならさ、耳とか動物らしい特徴あるじゃん?


 それ、よーく思いだしてみるとなかった気がするんだよ。猫とか犬特有のあの耳が。


 でも、耳っぽいのは触れたような感触があって、その感触……あれ人間の耳と同じ形してたような気がするんだよな。


 ……要はさ、おれがあの時水底で踏んずけて拾ったの、すげぇ小せぇ人の生首だったんじゃねぇかって思うんだ。


 胎児みたいな、そういう大きさの。


 あの声も、赤ん坊の呻くような声だって考えれば違和感ない気もするし。




 結局さ、答えはわかんないんだけどな。


 ただ、何にせよあれが普通の物じゃなかったのは確かで、それがどうしてプールの底に沈んでいたのか、そういうのも謎のままなんだよ。


 変な話だと思うだろうけど、お前この話信じてくれるか?

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