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怪談遊戯  作者: 雪鳴月彦
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――幕間――

「……どうでしょうか? いずれも一度お会いしただけの方から聞いたお話ですので、信憑性(しんぴょうせい)までは保証できませんが、お楽しみいただける内容でしたか?」


 二つの怪談を語り終え、羽切は小さく吐息をつくように肩の力を抜きながら、俺たちを見て微笑んだ。


 峠を舞台にした、二つの異なる怪談。


 確かに、自分が当事者となれば最悪だと思える内容ではあった。


 昔暇潰しに読んだ怪談本にも、いくつか峠で起きた怪異をテーマにした話が掲載されていたことを何となく思いだし、日本各地――世界規模でもだろうけれど――至る所で何かしらの噂や伝説が転がっているのも頷けるなと、そんな感想が頭に浮かぶ。


「テケテケとか、かなり有名な存在だけどさ、あれって幽霊なのかな? それとも妖怪? 初めて聞いたときからずっと疑問だったんだよね」


 隙間のような沈黙の時間に、戸波が声を詰め込んでくる。


「テケテケ……やっぱ幽霊じゃねぇのか。踏切事故で身体が真っ二つになった奴が、自分の下半身探して夜の線路這い回ってるとか、色々なシチュエーションで語られてるよな」


「あー……確かに、線路とかにもそういう話が結構あるよね。あたしさ、夜中に一人で線路沿いの道歩いてたら、急に電車の音が聞こえてさ。もう終電も終わっちゃって、始発だってまだ走らない時間帯だったから、びっくりして」


 渋沢の相槌に頷きながら、戸波は何やら過去の体験を語りだした。


「お? 何だよ、まだネタあったのか?」


「いや、違くて。どうしてこんな時間に電車が走ってるの? って思いながら音がする方に振り向いたら、電気が点いてない真っ暗な電車が走ってきたの。後でそれ、ただの貨物列車だって知ったんだけど、あれはめちゃくちゃ不気味だったなぁ。異世界だよ、あの光景は」


「何だ、怪談じゃねーし。てか、そんな夜中に女が一人で歩いてる方がヤバいだろ」


「仕方ないでしょ。バイト忙しい時期だったんだもん」


 渋沢に言われて口を歪ませる戸波に苦笑しながら、俺はそう言えばと高校時代のことを思いだした。


「なぁ、渋沢。電車って言えばさ、お前高校のとき踏切がどうのこうのって、変な話聞かせてこなかったっけ?」


「踏切? あー、話したことあるような……。あれって確か、ネットか雑誌で見た話だったはずだぜ」


 俺の問いかけに、記憶を手繰ろうとするような顔で天井を見上げ、渋沢は言った。


「まぁ……それはどんなお話なんですか?」


「いや、たぶん作り話だとは思うんですけどね。せっかくだし、話しましょうか」


「ええ、是非!」


 即座に反応を示した羽切へぎこちなく笑いながら、渋沢は当時何かで読んだという踏切にまつわる怪異を語りだした。

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