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ショートショート10月〜3回目

あおり運転

作者: たかさば

「ねえ、なんかすごく近くない?!」

「近い……。」


 とある平日の昼下がり、片側一車線の道を娘と共にドライブ中の私は、焦っていた。


「これ、煽られてるよね?!避けた方が良くない?」

「止まれる場所がない……。」


 今私が通行しているのは、右側に森、左側に崖が迫る、長い長い一本道である。

 先ほどすれ違いポイントがあったのだけど、運悪くライダーたちが停車していて、入れなくてですね。


「ねえ、大丈夫?なんか後ろの人めちゃめちゃニヤニヤしてる!!」

「ごめん、ここ50キロ制限なのに…狭いのに…余裕が……ない!!」


 ちょっとした案件で出向かねばならなくなったため、カーナビ大先生にお世話になりながら慣れない道を走行中に起こってしまった大事件、ただでさえ運転技術のへっぽこぶりに定評のある私は絶賛大パニック、しかしハンドルは冷静に操縦しなければならぬと必死極まりなく!!!


「これさあ、通報した方がいいんじゃないの?!つか、するわ!!」


 不慣れで見通しの悪い道を、後ろからせっつかれて60キロで運転…もうだめだ、この道はあとどれだけ続くのだ、なんか私は前世で悪い事でもしたのか、どうしてこんなに疲労困憊しなければならないんだ、出発時刻をあと30分早くしていたならこんな事には、朝五時に起きて準備万端だったのに旦那が朝ごはんバイキングに行きたいとかごねたせいだ、なんであいつは年老いてなお余りある食欲を誇っているのだ、こんな事なら3時間かかってもいいから電車とタクシーで行くべきだった、やっぱり私は運転に向いていない、こんな手汗べっちょりで運転されてしまうハス子(愛車)が気の毒で気の毒で…!!!


「…はい、はい……、わかりました、じゃあ道の駅で……お願いします!……お母さん!!この先五分くらいで道の駅があるんだって!!!そこにおまわりさんが来てくれるって話だから何とかそこまで頑張って!!!制限速度で運転していいって警察が!!後ろは気にしないで、安全運転!!違反じゃないから!!」

「わ、わかった!!!」


 頼れる娘の言葉を聞き、焦って視点が合わなくなりかけていた私も何とか平静を取り戻し!!


 疲弊、憔悴、げっそり、ぐったり、力尽き果てるコンマ一秒前に、やや寂れた道の駅の片隅に車を停めると……煽っていた車が!!!


 真横に……停まったんですけど?!


 ああ、もうこれから暴漢にボコボコにされるんだ、わけのわからないいちゃもんつけられていい年してカツアゲにあって、ハス子もベコベコにされて、今から罵詈雑言を浴びながら地獄の…ヤバイ、娘はなんとしても守らねば、ガソリンでもまかれて火を付けられたらおしまいだ、娘がやられるくらいなら自分が盾になって気の済むまで叩きのめしてもらおう、たぶん人ひとりの息の根を止めるのには時間がかかるはず、私がしぶとく生きながらえていればその間に警察は来る!!


「ちょっと!!あんたは車の中から出ちゃダメだからね?!」

「え、出ない方がいいよ!!」


 ―――バン!!!


 秒で一通りの最悪の状況を思い浮かべ、車外に出た私!!

 ドアを派手に閉め、車の鍵をかけ、極悪人と対峙を!!!


「あー!!モッチーめっちゃ老けたね!!相変わらずめっちゃ運転ヘタでウケる!!まだキモい車乗ってたんだね~慌てててめっちゃ面白かった!俺今日休みでさあ、ガソリン入れに行ったらキタネー車がいるの見つけてさ!!すげえ偶然じゃん、ちょっと遊んでやろうと思ってさあ!!いやー、おもろかったわwww」


 なんと…私を煽っていたのは……かつて働いていた職場の……同僚ではありませんか!!!


「2年ぶり?今何してんの!!相変わらず貧乏人…だよね、パッとしないし!!太ったねえ、シミも増えて…完全ババアじゃん!!でさあ、きーてよ、俺さあ事業部任されてんの!!今だったらこき使ってやるから店に帰ってきなよ!!吉田さんも石井さん梅婆さんもクサクサおばさんやめちゃってさあ、いじれる人材いなくてつまんねーのよ、やさしくすっから!!もう勝手にモッチーの仕出し弁当も食わねーし、ロッカー漁って小銭もらったりしないし!!」


 私が昔働いていたとある販売店は、非常に…フレンドリーというか、人と人の垣根がないというか、常識を逸脱しているというか、年齢を気にしない若者が多かったというか……。

 すぐに徒党を組んで孤立者を攻撃したり、おかしな噂話を捏造してはこそこそと嘲笑したり、若者大好きな経営者による見苦しい贔屓が日常化してたり、40歳以上は老害認定されて無能扱い、言いたいことを言う事が正義と信じている人が幅を利かせ、手柄は奪って当たり前、入ったばかりの新人にできないことをやらせてミスを責めるとか、底辺を見つけては憂さ晴らしをするのが横行していたというか、大変に問題が…あーダメだ、どろどろとした不愉快な記憶がよみがえってきたぞ……。


 まあとにかく……私はそこで、使えないけど逆らったり不貞腐れたりしない、何を言っても怒らない頭の悪い人として日常的にディスられていたのですよ。


「あんた、なんでこんなことしたの…。これ、迷惑行為なんだけど、わかってる?」

「ちょwww迷惑行為って!!モッチーのくせに偉そうに!!そこはいつもみたいにス↑ミ↓マセンス↑ミ↓マセンだろwww」


 あ~、そうか。

 この青年の中で、私という人間は……永遠にディスっていい、気が済むまで馬鹿にしていい存在なのだなあ……。


 う――――――!!!


 私があっけにとられていると、パトカーが二台やってきた。

 あと、ちょっとごつい車も近くにとまって……なんかドライバーの人がこっちに、来たぞ……。

 なんかバイクの集団も来た……。


「大丈夫ですか!!悪質だったんで、僕通報したんです!!ドラレコもありますから!!」

「あー、ちょっと話、きかせてもらえる!!」

「通報いただきました、おけがはないですか?」

「…現場到着、けが人なし、対象者一名、被害者…二名、はい」


「なにこれwwwおおげさな!!俺はこのババアと知り合いなの!!帰って、帰って!!」


「免許証見せて!!何でこんなことしたの、三件も通報があったんだよ!!」

「知り合いだからってしていいことと悪いことがあるだろう!!」


「あの、僕ライダースポットのところから見てましたけど酷かったです、動画撮ってたんで!!」

「この人はよけようとしたんです、でも僕らが停まってたから」

「渋滞になってましたよ、後ろの方」


「あの、こちらの人は本当にお知り合いなんですか?」

「昔…三年?前に同じ職場で働いていて、今日久しぶりに…全然覚えて無かったというか、運転中は気が付きませんでした。会ってようやく思い出したくらいで…正直、困惑してるというか……」


「ババアはすぐに記憶障害になる!!俺はこいつと毎日…

「あなたには聞いてないんで静かにしてもらえます?」」


 さんざんすったもんだがありましてですね。

 元同僚は、ふてくされながら、頭を下げましてですね。


 まあ……今後はたぶん、縁が切れる?と思いたい……。


「あの、なんかすみませんでした、ええと、それでそのう、私今から娘の仕事の打ち合わせに行かないといけなくて、元の道に戻るにはどうやって??なんかおかしなゲートがあって…」

「あ、ここちょっとわかりにくいですよね、じゃあ、私たちが先導します」


 大変にお優しい、田舎の警察の方は、まさかの目的地まで先導してくれましてですね。


「……ちょっと!!何やったの?!」

「ねえ、もしかして……要人?!」

「ひそ……ひそ……!!!」


 遠く離れた地で、盛大に勘違いをされた母娘がいたという、お話です……。


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― 新着の感想 ―
[一言] 創作...のハズなのに、現実にこういう連中がいるから困りますよねw 昔あった、DQNの川流れを思い出しました 身勝手な人は本当に面倒...
[良い点] あー。面倒くさいわ。ひどいものを見た [気になる点] オチがうまい
[一言] おお、なんと嘆かわしいことか。近年の青乗り運転者がこれほどお粗末な行為を平然とするとは、これでは海苔につくダニにすら劣るではないか。 それが若さ故なのかは私には分からない、だが生粋がりたいた…
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