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運命の赤い糸  作者: 高美
運命の赤い糸〜小夏の場合〜
13/23

夏はやっぱり海

小夏視点

 泣いて帰ってきた私を母は心配そうに見つめてきたが、何も言わないでいてくれた。

 夜中まで泣き続けて私はそのまま眠った。






「目……腫れてる」


 脱衣所の鏡を見てため息を吐き、腫れた目を冷やそうと顔を洗った。

 純也先輩に聞きたいことは山ほどあるが、私が偽物なのには変わりない。野々咲愛という女性が本物なんだろう。

 何度携帯を開いても、先輩からのメッセージは無い。言い訳ぐらい送ればいいのにと不貞腐れた。


 今日はゆっくりしようとベットに横になっていると携帯が鳴った。先輩かもと急いで確認すると、着信先は凛だった。


「ーーもしもし?」


「もしもーし! 海行こうよ!」


 朝から元気な凛の声と微かに美月の声も聞こえる。今日はゆっくりしようと決めたばかりだが、友達と遊びに夢中になれば純也先輩の事を考えなくて済むと思い誘いに乗る。


「ーーいいね!」


「やったー! 十二時に小夏の家に行くね!」


「分かった!」


チラッと部屋の壁にかけられている時計を確認すると時刻は午前十時。余裕を持って準備しておこうとベットから起き上がった。


「ビキニとーーあ、日焼け止め!」


 ピンク色ボーダーのトートバッグを広げて海に必要な物を準備していく。準備していくうちに海に行けるワクワク感でいっぱいになった。

 丁度準備が終わると、家の呼び鈴が鳴り家を出る。


「海にレッツゴー!」


 凛の元気な掛け声に、美月と私もノリ良く笑顔で腕を上げた。





 三十分ほどで海に到着した。有名なビーチでもあって、観光客や地元の人達で賑やかだった。


「着替えた〜?」


 更衣室で、無地の白いビキニに着替えた私は、二人に声を掛ける。


「うん……着替えたけど」


「……出るの恥ずかしいね」


 何故二人が恥ずかしがっているのかと言うと、三人は高校で友達になったばかりで、まだお互いの肌を見せる事が一度もなかった。私は一度、下着が露わになった事件があるからそうでもない。

 出るのを渋られて待ちきれなかった私は、右横で着替えていた美月のカーテンを開いた。


「ーーきゃっ」


「遅い! ってーーデカ!」


 美月は突然カーテンが開いた事に驚き、ストライプ柄のビキニを隠したが私にはD、いやそれ以上ある胸の膨らみがバッチリ見えた。


「もーやめてよ〜」


 美月は両手で顔を隠し照れているが、そのせいで胸のデカさが良く見えるようになってしまっている。


「ーーえ? ほんと?」


 私の声に、思わず凛もカーテンから出てきた。美月の胸に釘付けになりながら、近づいてくる凛を手招きした。


「見てよ、凛。美月のーーデカ!」


 振り向くとそこには美月と同じぐらいの大きさの胸が目に映り、同じリアクションをとってしまった。


「そんな驚くかね……」


 白と黒のチェック柄のビキニを着た凛は、私の大きなリアクションに苦笑いをした。


「え……なに、二人とも……」


 神様、私にももうちょっと与えてくれても良いのではとちょっと落ち込んだ。





 私が持ってきた丸型のビーチマットを敷き私達の荷物を置くと、早速凛がピンク色の浮き輪を膨らませていく。


「ーーフラミンゴの浮き輪可愛い〜!」


 膨らんだフラミンゴを撫でながら褒めると、凛は嬉しそうに笑った。


「でしょ! お姉ちゃんから借りてきたの」


 三つ上に姉がいる凛。一人っ子の私は、姉妹で頻繁に貸し借りができる仲良い関係に羨ましいなと思っていると、美月がゴソゴソとバックの中から何か漁っており、お目当ての物を取った。


「私、ゴーグル持ってきた〜」


「ーーガチじゃん」


 ゴーグルなんて言うが、美月が手に持っているのはシュノーケル。凛のツッコミを無視し、美月はシュノーケルを顔にはめて泳ぐ気満々な顔をしていた。






 私達は各々好きなように海の中で泳いでいると、凛がかき氷を食べたいと言い出し休憩に入った。凛と美月にかき氷をお願いした。私は荷物を見ながら待機していると、肩までのロングに毛先を緩く巻いた黒髪の男と、センター分けの韓国風男が近づいてきた。


「ーーお姉さん! 一人?」


 センター男が、ニコニコと愛想よく私の前に腰を落とし、ロング男はセンター男の横に立っている。


「違います」


「じゃあーー彼氏とか?」


 私は目も合わせず遠くを見て冷たく答えているのに、センター男はニコニコ顔を崩さず聞いてくる。


「違います」


「俺たちと一緒に遊ばね?」


 私が全然センター男の話に乗らないので、次はロング男が口を開くが、私は二人の事を一度も見る事なく無愛想な態度を続けた。


「無理です。お帰り下さい」


「そんなこと言わずにーー」


 赤い糸というものがこの世にはあるのに、ナンパ文化は何故終わってくれないのかうんざりしていると、サングラスを掛けたオールバックの男性が現れた。


「此処のビーチでナンパ行為は禁止です」


 声を聞いた瞬間龍生さんだと分かり、やっと開放されると一安心した。龍生さんは、赤色の海パンを履き、立派な腹筋の上からホイッスルをぶら下げていた。


「ーーうわ! すみませんでした……」


 男二人は、龍生さんの迫力に驚きペコペコと頭を下げながら帰っていった。


「ーーまた絡まれてたのかよ」


 サングラスを頭に掛け、呆れたような表情をされた。私は申し訳ない気持ちを含めて笑った。


「絡まれてました……助けてくれてありがとうございます。ーー龍生さんはどうして此処に?」


「監視員のバイトだ。ーーアイツらと」


 だから謎の笛をぶら下げていたのかと納得しながら親指を指した方向を見ると、見たことのある赤髪の男と金髪メッシュの男が居た。


「ーーあの人たちって……」


 見た事があると思ったら、その二人に前に絡まれた事があった。その時助けてくれたのも龍生さんだ。


「ーーああ、そうか……っておい! 陸、多希! 監視員がナンパすんじゃねーよ!」


 その二人は美女をナンパし見事に撃沈していた。


「この海、可愛い子だらけっすよ!」


「相手にされねーからやめとけ」


 赤髪の男は『陸』と言うらしく、龍生さんの容赦ない言葉にも懲りずに、歩いてくる美女を目で追っていく。金髪メッシュの男『多希』は、黒のラッシュパーカーを上半身裸のまま身につけ、ポッケに手を突っ込みながら陸さんの発言に頷くと、ふと私と目が合った。


「ーーあれ? この子……」


 多希さんの声に陸さんの視線が私に移り、じーっと見て思い出した顔をした。


「ーーあ、ああ! あの時はごめんね〜」


「あの後、龍生さんにめちゃくちゃに怒られたよ」


 二人は申し訳なさそうに謝ってくれた。私はもう気にしてなかったので笑顔で首を振ると、美月と凛が帰ってきた。


「ーーあれ? 石井先輩だ!」


「こんにちは〜!」


 凛はかき氷を片手に開いてる手で手を振り、美月は私の分も持っていたので両手が塞がっており笑顔だけで挨拶をした。


「久しぶりだな」


「ーーお! 美女がまた二人増えた」


 嬉しそうに口笛を鳴らす陸さんを見て友達にもナンパしてしまうんじゃと焦っていると、美月が立ち止まり目を見開いていた。


「うそ……あ、赤い糸が……」


 美月の目線の先は多希さんだった。多希さんを見ると、美月と同様、目を見開きポッケからゆっくり手を出した。二人だけに見える赤い糸が、美月と多希さんを繋ぎ合わせているのだろう。


「陸……俺ナンパとか卒業するわ」


 陸さんを見ず、真っ直ぐ美月だけを見て言った。すると、二人はゆっくりと近づき手を握り合う。


「やっと見つけた……」


「遅くなってごめん」


「ううん! いいの……」


 美月と多希さんは見つめ合い、二人の世界へと入っていった。


「こりゃ……バカップルの誕生だ〜」


 陸さんは苦笑いし、私たちは大きく頷いた。



 そしてこの日、私と龍生さんは大きな進展を遂げる事となる。




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