後編
無事、力を合わせて異世界から五体満足で帰還した――俺たちクラスメイトは教室を飛び出した。
同時に他のクラスからも人がわらわらと出てくる。
「俺、初めて異世界召喚された!」
「私もー! イケメン、めっちゃいたー!」
それぞれ、違う異世界であれど、全員が似たような体験をしたようで、気持ちを分かち合っている。
今回ばかりは、はしゃぐのも仕方がないと教師陣は傍観していた。
俺たちのクラスは「異世界から帰ってきた記念パーティー」を、来週の授業の午後に開こうと約束を交わした――。
記念パーティー当日。反省会は短めで、飲んだり食べたり、ゲームをしたり、やりたい放題だ。
話題はやがて、男女入り混じる恋話になった。チラチラと、視線が――俺と委員長に集まる。
「あのっ。須藤と九十九ちゃんって異世界で、めっちゃ息ピッタリで仲――良かったよね。二人って、付き合ってるの?」
これは――。ラノベでは読み飽きた展開で、アイコンタクトによると、委員長の東雲九十九も俺と同意見のようだ。
「「俺たち/私たち! 結婚します!!」」
愛美と八雲は兄妹のように仲がいいし、子供にたくさんのラノベを読ませたいという教育方針も一致している。
なにより、彼女とずっと一緒にいたい。
初めは――同じ子持ちの高校生として委員長を頼っていた。だが、子供を連れて二人で遊びに行く度に、親としての自覚が高まり、彼女と夫婦になれたらな――と夢を見るようになった。
子供と同時に、恋心を育てていたのだ――。
お金の心配はあるが、両親は健在。異世界に召喚されたことで、多額の保険金を受け取れるようになり、目指す職業の幅も広がることだろう。
これからは、愛美と八雲。俺たち二人の子供たちがこの世界の主役だ――。
それから、子供たちは高校生になり――。
俺は異世界召喚の兆しを知らせる、召喚予報士に就職した。辛いこともあるが、定年まで働きたいと思っている。
妻の九十九とは、ラノベの考察で喧嘩したりとおおむね、平和だ。フリーのイラストレーターとして活動中だ。
娘の愛美は日常的に異能バトルが繰り広げられる学園に通っており、切磋琢磨して暗殺者としての腕を磨いている。
最近は、宇宙から侵略してきたイケメンと恋に落ちて、彼氏として家に連れてきたことがあった。肌の青さに驚いたが、思っていたよりも好青年でパパは安心している。
二人が付き合うようになった馴れ初めは、イケメンが背負う哀しき過去を愛美が当てずっぽうで当てたから、らしい。父親の俺を参考にした――と言っていたが、意味が分からない。
息子の八雲は、反抗期になってニートになったかと思いきや、VR機器を頭に装着したまま眠り続けていた。
デスゲームに巻き込まれていると察した俺たち家族は、細心の注意を払って病院に運び込み、警察に即通報。数多の通報から警察は動き、首謀者を逮捕。
ゲームから救出された八雲は、現実世界のネットで――デスゲームの被害者から英雄と崇められていた。
反抗期を反省した八雲は、デスゲームの撲滅を掲げる組織を結成することとなる。
たとえ――、育児が終わっても親子の絆は永遠だ。
もし、転生するなら――今度は、お前たちの子供に産まれてみたいな、なーんてな。
これから異世界転生するかもしれない、皆さんへ――。
ラノベにまみれたこの世界は最高だぜ!