金魚の料理
書いてみた
僕は金魚は食べたことはない
金魚を食っている
これが難しい
金魚鉢で泳ぐ
金魚を箸で掴むのが
難しいのだ
金魚を箸で掴むのは
できるのだが
ついつい
金魚を
放してしまうのだ
悪戦苦闘している
だが私と違って
明日
五歳になる息子は
金魚をやすやすと掴み
小麦粉を満遍なくつけ
ぽいっ
と火がつき
沸き立つ油鍋に
入れている
揚げた金魚は
皿に置いていく
なかなか掴めない私は
金魚を揚げたり
皿に金魚を置いたりした
金魚は色鮮やかに
鉢を彩り
皿を彩る
揚げた金魚は
小麦色をしているのに
赤や白
橙に黒と
皿を彩っていて
色鮮やか
色鮮やかだから
目が
口が
よく見えるのだ
金魚の目は
こちらを向いている
金魚の目は
息子を見ずに
私を見ている
金魚の口は
よく魚にあるように
呆けた口なのに
口の中に吸い込まれる
幻想を私は抱く
息子は金魚を掴むのが
飽きたようで
後はやっといて
といいのこし
手を洗って
テレビを見て
アハハハハと
笑っている
私はトレーにある
小麦粉に埋もれた
金魚が
ヒレをパタパタとしながら
口をパクパクとしながら
こちらをただただ
無機質な目で
見つめていた
助けを求めるでもなく
おまえをころしてやる
という目でもなかった
ただただこちらを
見ているだけだった
私はただただそれを
見ているだけだった
次第に金魚の
ヒレの動きはなくなり
口の動きもなくなった
だが目だけは
目だけは
こちらをただただ見ていた
無機質な目で見ていた
私はトレーも持って
そのまま
中のものをいれた
油鍋にいれた
小麦粉ごといれた
油はよく跳ねた
元気よく跳ねた
金魚も油の中を
泳いでいた
ヒレは動かず
口も動かないが
目はイキイキと
していた
私は揚げ頃になった
金魚をつかもうとしたが
なかなかできず
私がつかんだとき
その金魚は
黒焦げとなっていた
私はその金魚だけ
別の皿に
大きな皿に
置いた
その皿は
金魚鉢にみえるが
金魚はおらず
いたのは
黒焦げになった
黒い魚だった
そこに鮮やかさなどなく
あるのは
金魚鉢に沈む
黒焦げとなった
魚の揚げ物だった
私はその後
金魚鉢で泳ぐ
金魚は掴めなかった
この日
昼飯は
金魚となった
息子は金魚を
美味しいよと
つつまらなそうに言って
テレビを見て
愉快そうに
アハハハハと
言った
私は
黒焦げとなった
金魚しか食べなかった
息子は金魚を
パクパクと食べた
息子にどんな味と
聞けば
魚と
返ってきた
息子の口の中に
吸い込まれる
金魚を見ながら
そうか
魚か
と呟いた
金魚鉢には
まだ金魚がいる
金魚鉢を彩りながら
スイスイと
泳いでいる
私の目には
所々にみえる
金魚の糞が
黒焦げの魚のように
見えた
横で
息子は
かわいいねと
言っている
ああ
本当に
きれいだね
つづかない( ̄ー ̄)