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村を追放された最弱召喚士がチート級モンスターたちを召喚して、いつの間にか最強になってました。  作者: 遥風 かずら
第三章:敵となる存在

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81.召喚士、氷姫の焔を味わう


「うぅぅっ……悪魔を呼んだな!? 何で、どうしてロードテアにまで呼ぶ!」

「お、俺じゃない……で、でも、この地響きはただ事じゃない……」


 トルエノかと一瞬思ってしまったけど、彼女はそう簡単に姿を見せるはずが無い。

 

 異常なまでに怖がるノワは、俺から離れて激しい身震いを見せているが、耳鳴りするほどの地響きが鳴り響いている。


「しょ、召喚士……いや、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「な!?」

「……」

「ノワ? ま、まさか、凍らされている!?」


 橋上都市の全てが氷漬けになったとでもいうのか、死霊術師の彼女は身動き一つ出来ず、目も口も大きく開いたままで固まっている。


 幼い彼女の断末魔は、一瞬にして断たれた。

 直後、キツく絞められた魔法の紐は、いとも簡単にほどけられていた。


 建物の中に囚われたはずなのに、起き上がった俺の視界に広がる光景は、まるで異なりを見せる。

 都市の全体像は分からないものの、橋の下を流れる運河は全て凍り、橋上の建物は全て氷で覆われているようだ。


 死霊術師のノワはもちろんのこと、俺を追っていたアンデッドの男たちも街の至る所で凍っているようで、都市にいる全ての人間が動きを止めたらしい。


 ど、どういうことなんだ。

 これは俺の力じゃない……こんな力を示せるのは――


『ライゼル、見つけた!』


 頭上から聞こえて来るこの声は、空を飛べる彼女しかいない。


『ライゼルさまーー! こんな所におられたのですね!!』


 氷姫の龍人リヴェルナだけの仕業かと思えば、ルムデスの必死な声も聞こえて来た。

 ルムデスが一緒なのに、どうしてこんなことになっているんだ。


 ルナ……というより、真の姿が龍そのものになっている彼女は、上空を旋回していてよく見えないものの、氷のブレスを連続的に浴びせまくっている様に見える。


 上を見上げていると、さっき聞こえて来たルムデスの悲鳴と共に、彼女そのものが空から降って来た。


『ラ、ライゼルさまぁぁぁぁ!!』


 冗談じゃなく、真面目にエルフが空から降って来るとは想定外だ。

 召喚士として強くなったと言えるけど、果たして彼女を受け止められるだろうか。


「ぐ、ぐぅっ……」

「さすがです。あの、重くありませんか?」

「重くは……無い……よ」


 力の無い俺の腕に受け止められたルムデスは、照れながらも恍惚とした表情で俺を見つめている。

 空から降って来たのはいいとして、現状を知るルムデスから事情を聞かなければ。


「ルムデスがいながらどうしてこんな――」

「申し訳ございません!!」

「あ、いや……」

「わたくしではサーシャを止められなかった……いいえ、止めてはいけないのです。彼女の強さはライゼルさまもご承知の通りですが、この都市は異常な邪術によって呪われているようで……わたくしの神聖の光でも簡単には」

「邪術というか、アンデッドの街だよね?」

「ライゼルさまは承知の上で囚われていたのですか?」

「えーとね、逃げていたらそこで固まっている死霊術師に捕まっただけ……」

「死霊術師? あぁ、そういうことですか」


 見えて来ない話だけど、ルムデスもルナもこの都市の異常さに気付いていて、ルナが先に行動を起こしたということか。


「あの龍……あれ、ルナだよね?」

「彼女は上位級の龍なんですよ! わたくしの神聖の上を行く存在みたいで、だから許されたのかなって思いまして」

「単なる氷の龍じゃなかったの?」

「それは直接彼女から聞いた方がいいと思います」


 ――しばらくして、アンデッドの気配はおろか、都市そのものを凍結させた張本人が、人の姿に戻って俺の元に降りて来た。


「ライゼル、怒っている?」

「そ、そうじゃないんだけど、どうして急にこんな力を……」

「我は腐敗の地を洗う龍。ライゼルは人間! 腐った人間がいる所にいれば、せっかくの力も消えるぞ! だから洗った」

「洗った……? え、どういうこと?」

「そのままの意味なんだぞ! 我にご褒美!」


 さっぱり分からない俺に対し、ルナは背伸びをしながら何かを待っている。


 これは褒めて欲しいという意味なんだろうか。


「ライゼルさま、あの……」

「うん?」

「サーシャ……彼女は、ライゼルさまからのキスを待っているんですよ」

「キ、キキキ、キス!? い、いや、それはさすがに……」

「何も口にしろとは言ってませんよ。彼女は見た目よりも、ずっと幼いんです。ですから、ライゼルさまが正しいと思う場所にキスをしてあげてください」

「そ、そっか」


 ルムデスの言うことを信じれば、確かにルナは、まだ何も知らない女の子にも見える。

 照れも無く、俺はルナの頬に軽く口をつけた。


「ライゼルからのご褒美、嬉しーい!! これで我は寝る! むにゃ……」

「へ? ちょっ……」

「氷のほむらを使ったことで、疲れちゃったみたいですね」

「氷の……?」


 ルムデスはルナを抱えて、そのまま眠らせながら俺に向き合う。


「ライゼルさま。ロードテア……この都市は死の街なのです。そこにいる死霊術師以外は、全てアンデッドだったのです」

「まぁ……うん。そ、それがどうして氷漬けに?」

「サーシャは氷の息で街全体を凍らせましたが、その後にほむらの息をかけました。それによって、アンデッドは本来あるべき姿に還されたのです」

「本来っていうと、人間の……」

「はい。ですけれど、死霊術師のまじないはそう容易くは無いみたいで、清浄されたアンデッドだけが元に戻っただけでした」

「それが洗う……?」

「ええ」


 死霊術師のこの子が作り出したアンデッドで、都市という形を残していたとでもいうのか。


「その子は戻る?」

「ええ、アンデッドではないようですから、体温で自然と溶けるかと」

「目覚めたら話を聞くしかないけど、ルナがこんな凄まじい力を持っているとは……」

「うふふ、その龍を目覚めさせて呼んだのは、ライゼルさまですよ? ライゼルさまを救う為に、彼女は氷の焔の息を吐いたのだと思いますので、怒らないであげて下さいね」

「そ、そうだね……は、はは」


 アンデッド、死の街……俺を召喚士として追って来た連中は、生きていた時の記憶だけで追っていたのか。

 そう思うと、今になってゾッとして来た。


「ルムデスは怖くない……の?」

「わたくしはすでに、ライゼルさまの光の力によって、怖いものはありません。ふふっ」


 エルフのルムデスの微笑みも、何となく冷たさを感じるけど、気のせいだよな……。


「は、ははは……」

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