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村を追放された最弱召喚士がチート級モンスターたちを召喚して、いつの間にか最強になってました。  作者: 遥風 かずら
第三章:敵となる存在

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74.空洞にて待つ麗しの氷姫


 ルオンガルドから出た先は、何故か身も凍るほどの極寒の地が広がっていた。


 俺とルムデスは、寒さに耐えられず近くの洞窟に入ることにしたのだが――


「ラ……ライゼルさま、何だか洞窟の中の方が寒くありませんか?」

「本当だ……おかしいな」

「と、とにかくもっと奥まで進みましょう。外から離れればマシになるかもしれません」

「そ、そうしよう」


 洞窟に入り奥へ進むと、本来は流れていたであろう小さな滝が見事に凍り付いていて、岩も地表も所々にひび割れが散見している。


 どうやら空洞らしく、目ぼしいものは見事に見当たらない。


「ルオンガルドがあった所は地上ではありませんでしたが、地上部分も人はおろか、魔物も寄せ付けない地帯だったのでしょうか?」

「どうだろうね。今はレーキュリさんだけが住んでいた町だったけど、昔は魔法使いとかが多くいたとも聞くし、そういう意味じゃ僻地だったのかも」

「そ、それにしたって、こんな氷に覆われまくりの洞窟なんて存じていませんでした」

「世界は広い……そういう意味じゃ、俺も知らない所ばかりだなぁ」

「そうですね。わたくしもライゼルさま同様です」


 ロランナ村から出てすぐにトルエノに出会い、その後にムルヴに乗って空から地上を見下ろしたことがあるとはいえ、知らない場所がありすぎる。


 俺が飛ばされた村も果ての地だったが、この辺りはロランナ村周辺の環境とはまるで違う。


「――ライゼルさま。あの、もしかしたらなんですが、先ほど召喚を唱えたことで何らかの影響を及ぼしている……とかではないですよね? ちなみに、何を呼び出そうとしていたのですか?」

「召喚の影響か……あるかもしれない。呼び出そうとしたのも、寒さで出た言葉であって特には……」

「ええっ!? しかしここの中は、外の環境の寒さとは何かが違う感じがします」


 ルムデスの言うことはもっともだった。

 とはいえ、召喚の言を唱えてから時間が経っているし、この空洞を覆っている凍える寒さが召喚のそれだとは考えにくい。


「あっ! 何だか少しだけ寒く無くなってきた気がします。さすがに奥の奥まで来れば……!? ライゼルさまっ!!」

「うっ? ど、どうしたの、ルムデス」

「何者かの気配を感じます。ライゼルさまは精霊を呼べるようにしてください」


 空洞の中は魔物どころか人が入った形跡も無く、自然に流れていた滝と地表のひび割れしか無かった。


 それがここに来て、空洞の奥に何かが潜んでいたなんて、暖を取る余裕も無いのか。


『いつまで待たせるつもりがあるのかと思えば、エルフと楽しんでいたとでも?』


 ルムデスが感じた気配のぬしは、聞いたことのないような美声をしていて、空洞内に響いている。

 その声は明らかに、俺に向けて声を放っている。


「あの者が召喚された獣……とは思えませんが、洞窟を覆うこの氷は、あの者が発動させているに違いありません。攻撃を仕掛けますか?」

「い、いや、攻撃をされているわけじゃないし、とにかく近づける所まで近付いて……」

「ラ……イゼ――さ、ま……」

「ルムデス? どうし――!?」

「か、体が動けなく……」

「え、な、何で……俺は何ともないのに、まさか……」


 ルオンガルドで風で飛ばされて以来、ルムデスは自身の魔法耐性を何とかしたいと訴えていた。

 しかしこうも強力な属性魔法だと、彼女じゃなくても耐えられないのではないだろうか。


「ルムデス! だ、大丈夫?」

「……うぅぅ」


『ウフフ……心配いらない。それよりも、早く傍に来てくれる?』


 声を聞く限りでは、敵意をむき出しにしているようには聞こえない。

 しかも聞いているだけで妙に心が落ち着くほどの美声だ。


 ルムデスは意識を保ったまま、立ち尽くしたまま動けないようだ。


 何故俺だけが平気なのか分からないが、声の主の通りに近づくことにした。


「キミは何者なん――」

「もう!! 遅い! ずっと待っていたのに、このままここに来なかったら、どうしようかと思っていたところだったぞ!」

「――な!?」


 距離を詰めながら話を聞こうとしたその時、美声の主はすぐに俺の傍に近づき、頬に手を触れながら怒り出した。


 その手はとてもひんやりしていて、空洞内を覆う氷そのもののように感じる。


「待っていた? え、えっと……俺?」

「あなたから呼び出しといて、もう忘れた? 何のためにこの地に呼び出したのか、思い出す!!」


 呼び出した……俺がこの子を?

 俺を睨みながら叱っている彼女の姿は、虹色石のドレスを身にまとい、どこかの国の高貴な姫に見えなくもない。


 両腰に手を置き、勝ち誇ったようなポーズを取っている時点で、高位の人間に違いなさそうだ。

 耳も細長く、一見するとエルフのようにも見えるが、どこかが違うし何かが異なる。


「俺が唱えた召喚の言……キミなの?」

「そう! だけど獣なんかじゃない! 我が名は誇り高き龍人、リヴェルナ・サーシャ!!」

「龍人……? もしかして、どこかの地から呼び出してしまったってこと?」

「召喚士ライゼルに呼ばれたのは魂の導き! 地の底に在りし氷国テオルで、ライゼルの声が聞こえたのは運命だと感じた。だからここで待っていたというのに、待てどもちっとも来ない!! 求めた者が待たせるとは、愚弄する気が!?」

「そ、そうじゃないんだよ。知らなくて、それに目の前に現れるとばかり思っていたから、だから……」


 今までは召喚の言の後に、すぐ分かる所に現れていた。

 それだけに失敗したとばかり思っていたのが、まさかここで待っていたなんて。


 俺の名前を名乗らなくてもすでに知られているし、召喚した時点で契りでも交わされているのか。


「我をルナと呼ぶことを許そう! さぁ、愛しきライゼル!! 我を連れて行け!」


 我……口調がトルエノみたいだけど、誇り高い種族……龍人ということか。

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