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村を追放された最弱召喚士がチート級モンスターたちを召喚して、いつの間にか最強になってました。  作者: 遥風 かずら
第三章:敵となる存在

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72.ルオンガルドの攻防戦 後編


 エインセルで作り出した自身の影は、かつての名残ともいうべきなのか遥か遠くの闇黒から、トルエノに似た闇の影となって襲って来た。


 賢者レーキュリは、俺が生み出した影だと言っている。


『くくくく……我にあらがう人間めが! 闇黒のうずにかかるがいい!!』

『ギギッ……人間に死と苦痛をもたらしてやる。我が毒牙にかかり、ね』


 ルオンガルド城に近づいている複数の影は、トルエノに似た口調で俺とレーキュリに向けて、何かを唱え始めたようだ。


「ライゼルさんっ!! 精霊を呼んでください!」

「え、しかし、精霊たちの気配を全く感じられなくて……呼べる気がまるで無いんですよ?」

「あなたが命じれば、四精霊たちは従います。降されている召喚士の言に従うはずです!」


 ガルダのおかげで魔力も体力も全て回復している。

 それでも、闇召喚と強制召喚の影響が尾を引いているのか、精霊たちの声は聞こえて来ていない。


「早く!! 多数の影が上空から毒牙を降らせて来ます。その程度の攻撃なら、わたしの精霊魔法で防ぐことが出来ますが、影が攻撃魔法を放てば精霊魔法では防ぎきれません!」


 予断を許さない状況だからなのか、レーキュリが俺を急かす。


「さぁ、早くっ!」

「わ、分かりました」


 言っている傍から俺たちの頭上には、影が放ったとおぼしき黒いとげのようなものが無数に降り注いで来た。


 影たちは上空から直に向かって来る様子は無く、離れた所から苦しめようとしているようだ。


 レーキュリは何かの紋様が目立つ緑色の外套を乱すことなく、自身と周り一帯に真空の風を起こし始めた。


 俺やルムデスが浴びた風の強さとは比べものにならないくらい、とてつもなく鋭い風で頭上からの攻撃を切り裂き、弾き飛ばしている。


 トルエノに見えていた影は、闇黒から来たらしき悪魔の姿に身を変えると同時に、何かの魔法を詠唱し始めた。


 全ての影では無く、中心から外れた数体の影はうめき声をあげ、闇魔法の威力を上げようとしている風にも見える。


 その魔力は、レーキュリの精霊だけではしのぎきれない程の魔力を帯び始めた。 


『……我に預けし我が精霊、大気をけがす影なき闇を、焦熱を以って焼き払え! 火神フレイム!!』


 言を唱えた時点では声を聞くことすら叶わなかった。

 しかし全てを唱えきった時、全身が焦げるかのような熱さを感じたと思ったら、その炎は影の集団に向かっていた。


 そして上空を影の集団で覆っていた黒い闇は全て焼き尽くされ、影一つ残らなかった。


「ふん、呼べば役に立つもん。きちんと呼んでくれないと、言うことは聞かないから!」

「あ、うん。ありがとう、レイム」


 あまり言葉を交わしていなかったレイムだったが、呼んだことで力を出してくれた。


 そうか、呼ばないと発揮することも敵わないということなんだ。


 しかし何というか、大した炎でも無かったはずなのに、あっさりと影の集団は姿を失った。

 まるで全て幻だったのかと思うくらいに、あっさりとした幕切れに思える。


「……召喚士ライゼル。あなたはもう大丈夫です」

「え? あの、今の影って……」

「ええ、ライゼルの精霊でなくても倒せる強さ……いえ、生み出した影に過ぎなかったのですよ」

「じゃ、じゃあ……俺が精霊を呼ばなくても倒せたってことですか?」

「その通りです。ですが、それでは何の意味もありません。思い当たる闇黒の影を知っていたライゼルには、自分の手で何とかして欲しいと願っただけなのです」

「は、はは……はぁ~……よ、良かった~~」

「心配して頂けたのですね」

「あの程度でやられると思っていなかったですけど、俺が生み出した影で、怪我でもされたらって思ってしまいました」


 精霊を呼び、使いこなす……そこまでを計算して、賢者は俺の強さを引き出してくれた。

 

 ルオンガルドに入った時から、こうなることが決まっていたということらしい。


「さて、ライゼルはこの先において、ガルダと共に進むことを選択しますか?」

「そ、それは……その」


 俺のことをパパと呼び、癒してくれる存在がずっと傍にいるのは、とても嬉しい。


 しかし実際に敵となるのは、魔物よりも人間の方が上回る。

 そんな光景を幼きガルダに見せたくないという気持ちが強いし、全快させる力を使わせたくないとさえ思ってしまう。


「……仲間を、味方を増やすことで守りきれない、そうお考えですね?」

「……そう、かもしれないですが」

「ここにガルダが来て、ライゼルたちを入れたのも偶然では無く必然。ガルダはここに預けるというのはどうですか?」

「い、いいんですか? でもそれは俺が決めることでは……」

「ガルダがここに案内して来たのは、もちろんあなたの為でしょうが、召喚獣の世界に近いと思っているのでしょうね」

「召喚獣の世界……」


 俺が召喚したのは、本当の召喚獣ではない子たちばかり。

 そう思うと、ガルダが初めての獣ということになるが、俺を初めて見たということは無の世界にでもいたのかもしれない。


「それがどこなのかは存じませんが、そこに戻らずにいるということは、召喚士との縁はそれだけ大事なものだという証なのかもしれませんね」

「刻印づけがされていれば、離れた所から召喚すれば呼べるのですか?」

「そうです。いずれガルダの癒しが必要になるはずです。それまでここに預けていても、わたしは構いません」


 影を消し、精霊を呼ぶことも出来た。

 この先の場所に行くのに、ガルダを連れて歩くのは厳しいと思っていた。


 ルオンガルドに住む賢者に預けて、ルムデスと共に先を急ぐ……それがいいのかもしれない。

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