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村を追放された最弱召喚士がチート級モンスターたちを召喚して、いつの間にか最強になってました。  作者: 遥風 かずら
第三章:敵となる存在

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67.鋭き突きと癒しの鳥獣


 湿地帯と知りながら力のほとんどを失った俺は、なすすべなく意識を落とす。

 しばらくして、自分の全身を何かが突っついている感じを受けている気がした。 


「ツンツンツンツン……沈むのか~? 沈んじゃうのか~?」


 んんん? 

 誰かの声がするが、声と同時に体を突っつかれているのは何なんだろうか。


「だ、駄目です! その人を突いてはいけませんよ」

「そうなのか? コレはルムの何だ~?」

「そ、その方はわたくしの大事な主人……」


 ルムデスの声がする。

 ――ということは、無事だったんだ。


 もしかしてここがルムデスの言っていた、ドリゼ湿地帯の村ということかな。

 このまま水に浸された状態で沈んでいくわけにはいかないし、起き上がるか。


「むーぅぅぅ!! うぅっ? え、な、何で……」


 仰向けになった状態で、ぬかるんだ湿地に倒れていたというのはすぐに分かった。

 よほどの粘着力があるのか、起き上がることが出来ない。


「――あっ! ライゼル様!! お目覚めになられたのですね。あぁっ! 良かった……」

「ルムデス……キミも無事で良かったよ」


 彼女を泣かせるつもりは無かったが、溢れんばかりの涙を流し、祈るようにして俺を見つめている。

 てっきり泣きながら抱きついて来るかと思っていたのに、一定の近さで俺を眺めているのはどうしてだろう。


「ルムデス……?」

「あ、そ、それがですね……ライゼル様に抱きついてしまうと、わたくしも一緒に沈んでしまうかもしれないのです」

「へっ?」

「そ、その……この辺りの泥濘ぬかるみは、生半可な力では救い出すことが出来なくて、人が住める場所では無いのです」

「そんな……じゃあどうすれば?」

「さ、幸いなことに仰向けで倒れられておりますので、召喚を試みてはいかがでしょうか?」


 確かに口だけは開く。

 しかし精霊は呼び出せないし、泥濘から引っ張ってくれそうな力の強い召喚を、果たして呼べるかどうか。


「ところで俺を突っついているその子たちは?」


 意識を落としていた時に、やたらと体を突かれていた。

 どう見ても犯人は、ルムデスの周りをウロチョロする子供たちとしか思えない。


「この子たちは鳥人族で、ラウカ村の子供たちです」

「鳥人族……あぁ、どうりでくちばしで突かれていた感じがしたわけか」


 ルムデスのように長い髪をしているが、鳥の羽毛でそう見えているだけでくちばしは鋭いままだし、足が細く、泥濘に沈みこまない器用な立ち方をしているのが特徴的だ。


「沈むのか~?」

「のか~?」

「か~?」


 かろうじて人間の言葉を話す程度らしいが、危害を加える感じではなさそうだ。


「この子たちではライゼル様を起こすことしか出来なくて、申し訳ございません」

「鳥人族に親鳥というか、力の強い鳥はいないの?」

「ラウカの水鳥は親を持たない鳥ですので、力を象徴とする鳥は残念ながら……」

「そうなんだ……ルムデスは神聖の力を使えないのかな?」

「はい……あの魔剣士によって封じられていました。それに、神聖の力でライゼル様をお救い出来るかは何とも言えないのです」

「そ、そうか」


 目に見えないだけで、ルムデスは力を封じられていた。

 それに本人は隠しているが、俺を守る為でもあったかもしれない。


「そ、それじゃあ……召喚を、新たな味方を呼んでみるしかないのか」

「それがいいかと思います! この先、わたくしだけでは厳しいのは確かですから」

「う、うん。それならルムデスに言っておくけど、精霊はしばらく使えないんだ。俺がここに倒れていたのが何よりの証拠というか……」

「……わたくしの為に申し訳ございません」

「と、とにかく召喚を唱えてみるよ。少し離れてて」

「はい」


 つつきの素早さといたずら好き……ラウカの鳥人族。

 空を飛べなくても、触り心地のいい羽で、この先の旅を癒してくれそうな子……鳥獣がいいな。


『我が意の全て、望むは神速の牙、望むは薄羽の輝き……我に応え、我が意のままに』


 速そうで強そうで、それでいて癒してくれそうな鳥獣が来てくれたら……そう願いながら唱えてみた。


『ひゃぅっ!? よ、呼ばれた……の?』

『キ、キミが?』


 どう見ても小さな女の子……いや、トルエノの子供姿よりは大きいけど。

 長い髪のように見えるのは確かに羽毛で、髪というより体表全てが、羽毛で構成されているみたいだ。


「タンちゃんと呼んでいいの!」

「タ、タンちゃん? お、俺はライゼル……」

「ライゼル~! 起きる、起き上がる~?」

「た、頼むよ」


 俺の召喚はもしかして、またしても最弱に戻ったのだろうか。

 

 離れて見ていたルムデスも驚いて言葉を失っている様に見えるし、とにかくこの子に期待するしかない。

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