65.忠誠を示すべきモノ
ルムデスと引き離された状態で、俺は魔剣士の女と洞窟に向かうことになった。
今までは俺と見れば、有無を言わさず集団でやられることが多かったが、今回はまるで毛色が異なる。
「何故俺を襲う?」
「聞こえていなかったのか? 敵を襲うのに理由が必要とでも?」
「俺は同じ召喚士だった連中と、連中に味方した者たちを攻撃した。その結果、ギルド連合が敵とみなした。だからといって、ギルドと関係の無いお前たちは俺を襲う意味がないはずだ」
「何度も言わせるな! ギルドに従って何になる? ただそれだけのことだ! これ以上しつこく食い下がるなら、エルフを殺す」
「……く」
魔剣士だけの群れを作ってギルド所属の連中と行動を共にしないどころか、目的も思惑も違うのはどうしてなのか。
闇を求めるつもりは無いが、こうやって無意味に襲って来る者たちには、何をどうすればいいんだ。
縄や鉄で自由を縛られたわけでもなく、魔剣士の女がただ一人で、俺を見張りながら洞窟の前まで誘導された。
「……お前の強さは召喚なのだろうが、強さに従っているのはあのエルフだけか?」
「……」
「まぁいい。中でたっぷり締め上げてやる。エルフの命はお前の強さ次第だ。中へ進め」
「この中に?」
「光はお前自身で作れ。暗い洞窟ごときは魔法で何とか出来るはずだ」
「……灯りを照らせ……ライト」
「初歩魔法は使えるか、そうでなければ殺す価値も無かったな」
ルムデスの力を得たと同時に、俺は簡単な初期魔法は使えるようになった。
それはあくまで自分に有用な使用のみであって、攻撃向けじゃないが今回はそれで良かったようだ。
「召喚士、ここで止まれ」
「……う」
「怯えか? 大剣で喉元を止めおいたところで、お前は死ぬことから逃れることを考えるはずだ。エルフと共に死にたく無くば、我々のリーダーにお前の力を示せ」
「お前がリーダーじゃないのか?」
「私がリーダーならば、魔剣士はまとまらずに朽ちてゆくだけだ」
てっきりそうだと思っていた。
この女よりも強くて、厄介なのが奥に控えているとでもいうのか。
『オルガ! エルフを見える所に連れて来い!』
『何だ、もう出番か?』
『なぁに、まずは順に戦わせてみるだけだ。魔剣士にも弱者と強者がいることを、召喚士の身に知らせるべきだと思った』
『ミゼラの所じゃなくて、ソイツの見える所でいいんだな?』
『くどい! オルガも殺られたいのか?』
どこまで本気なのか分からないし、信頼関係のある仲間でもないのだろうか。
連中を理解出来ないまま、俺の見える範囲にルムデスが連れられて来た。
俺と違って、四肢は縄で自由を奪われている。
『ルムデスッ! すぐにでも……!』
『わたくしはライゼル様に示すべき存在。お待ち申し上げております』
――!
酷いことをされているかは暗くて見えない。
だが縄で縛られている状態を見る、それだけで十分だ。
「ライゼル! お前には今からここに集っている魔剣士と戦ってもらう。お前が拒めば、エルフはお前から見えなくなり、闇を彷徨うモノとなるだけだ」
「……いいんだな? 魔剣士を――」
「それだけの力があるなら、示すことだ。最後に残るのは、死か忠誠を示すモノかのどちらかだけ」
自分の周りを照らす魔法をその場に留め、視界に映るのは離れた場所に見えるルムデスと、俺を試す魔剣士だけ。
どうやら暗闇で見えない所に控えている魔剣士と、順に戦わせるつもりがあるようだ。
それがどれくらいいて、どの程度の強さなのかは探るしか無いが、防御も攻撃も俺だけの力では恐らく話にならない。
精霊妖精たちが出て来る気配は無い時点で、最初から何らかの言を唱えて行くしかなさそうだ。
『うぉらぁぁーー!!』
死合というべきか、何の合図も無く見えない所から、炎を剣にまとわせた男が頭上から振り下ろして来た。
『ちぃっ、当たんねえな』
暗闇の中で魔法剣は、俺にとって都合がいい。
そして昔よりも、相手の動きが見える気がしている。
『先手を外してやった。召喚士ぃ、獣を呼べよ! エンチャントがかかったオレの剣を砕いてみろよ!』
どうやら最初の相手は挑発系で、力も大したことが無さそうだ。
そういうことなら、相応の召喚を仕向けるだけで十分だろう。
『我が意に沿いしモノ、煉獄に属す我が契り……我に力を示せ!』
『コレが召喚……か? しかも炎系を呼ぶとはな! 雑魚と思われようが、召喚ごとたたっ切ってやらあ!!』
名の知らぬ魔剣士は、呼び出した火竜に剣を振り下ろす。
しかし剣だけをその場に残し、魔剣士は姿を留めず煉獄の炎で帰された。
滅することは避けたかったが、それは召喚次第としか言えなかった。
『――その程度でギルドを複数壊滅させたとでもいうのか? ここを、魔剣士を滅ぼす勢いで獣を使うことだ! さもなくば、瞬く間にお前のエルフはなくなると思え!』
光だけじゃなく、呼べる召喚で示すしかない――のか。




