61.確かな最強を示す為に
「あ、あれが異形の……?」
人ならざるモノの気配を察知したルムデスは、俺の前に立ち、前に出ないように制している。
彼女を壁として見つめた先にいたモノたちは、一見すると人間たちのようにも見える。
しかし動きは散漫で、地を這いずりながらゆっくりとしかし、確実に向かって来るように見えた。
「あれはレヴナント……本来ならばこの世にいないはずの亡霊。人の姿だけを未練としていますが、そうまでしてでもライゼル様に復讐するおつもりなのでしょうか……」
「え? お、俺に復讐? な、何で……あんな亡霊に狙われる覚えは……」
「無いと言い切れますか?」
言い切れないくらいの無関係な人間たち、それもロランナ村のギルドじゃない連中をも、葬ってしまった。
俺の復讐心は主に3人の人間に向けていたが、途中から全てを闇に滅することだけを考えていた気がする。
最後までしぶとく食い下がって来られたというのもあったが、冥界からの使者だったり、弱い家畜を呼び出したかと思えば、とんでもない怪力の獣人になっていたり……
それら全てが、トルエノによるものとは言い切れなかったりする。
「ど、どうすれば?」
「ふふっ……ライゼル様のお力の見せどころ……では無いでしょうか」
「お、俺一人であんな無数にわきまくっている亡霊を? そ、そんな……ルムデスの神聖魔法なら光に還すことは簡単だよね?」
「勿論容易なことです。ですがライゼル様には、手に入れた光の強さをここで示していただく必要がございます」
「何もここじゃなくても……え、ルムデス? ど、どこに?」
「わたくしはライゼル様を信じてここから離れます。わたくしを頼るようでは、最強の”光を”得ることは叶わないでしょう」
「ま、待っ――!」
言う間もない早さで、ルムデスは俺の元からいなくなってしまった。
元を正せば、俺によって亡霊と化してしまった人たちだ。
全てがそうではないとはいえ、人の姿を崩してまで向かって来る姿を見れば、自分のせいだと言わざるを得ない。
ルムデスがいう最強の光が何なのかは分からない。
4つの加護を得たとはいえ、俺自身ではまだ自在に力を発揮したわけではないのが、何よりの証だ。
潜在的に冷酷無比なルムデスを呼び出した時も感じたが、光は光、闇は闇で引き出せる強さがそれぞれであるのだろうか。
そうだとすれば、ルムデスが俺の言うことを素直に聞かなくなったことと関係している可能性がある。
「るごぉぁぁぁ……ラ……イ……ゼゥゥゥ」
「うぐぉぉう――」
うぅっ……俺の名前を叫んでる時点で、俺のせいで亡霊になったと教えてくれているようなものじゃないか。
一人一人と言っていいのかは分からないが、ギルドに所属していた連中は未練を残しながら、俺をかき消す勢いで向かって来る。
距離を取ろうと思えば取れるくらい、レヴナントの歩行速度は鈍い。
ルムデスに任せておけばどうにかなると思っていたのに、まさかの離脱とか。
光の魔法もしくは、神聖魔法でというわけでもなく正真正銘、召喚魔法で示す必要があるようだ。
そうかといって、召喚の言はそうむやみやたら使うつもりも無ければ、使えるものでもない。
言では無く、聞こえて来る召喚の名を呼んで試すことにする。
妖精シルフが知恵を授けるかのような感覚がするからだ。
「えーと、光を示すモノ……ここに来たれり! ディヴァイン・ライト!!」
召喚の妖精では無く光魔法として出た言葉を放つと、辺りを徘徊していた亡霊が、光の壁へと導かれているかのような光景が展開されている。
滅するしか無いと思っていたのに、光による還しが出来るなんて思わなかった。
しかもこの威力は、こちらに向かって来ていた亡霊だけでは無く、存在を隠して影を残そうとしていた亡霊にも有効のようだ。
『ライゼル様! やりましたね』
時間がそんなに経っていない状況下で、どこからともなくルムデスが姿を見せた。
俺の力を信じていたとでも言わんばかりに、とても嬉しそうにしながら両手を握りしめて来る。
「これが俺の……?」
「ええ! ですが、これはあくまでもレヴナントに対して放たれたに過ぎません! ライゼル様のお力は、もっともっと強くなります。わたくしたちは、ライゼル様の力の示しとなる存在にすぎないのです!」
「存在? それはつまり、力を示すのはルムデスではなく、俺自身が示すようになる……?」
「それこそが最強のしるべなのです。今回は亡霊相手でしたが、そのお力はきっとこれからお役に立ちます! それこそ襲撃を企てて来る人間たちにもきっと有用なはずです!!」
「お、落ち着いて」
「し、失礼しました」
闇の力で滅することは簡単だった。
だけどそれは、今回のようなレヴナントを無限に生み出しかねない。
――とはいえ、力の一端を示しただけに過ぎないし、これでは最強とは言えないだろう。
トルエノの闇の力は相当なものだし、光で闇を抑え込むほど強くなる必要がある。
その根拠となるのが、果ての地でユーベルと行動をともにした時に感じた脅威だ。
全ての世界のギルドは、間違いなく俺を敵として認めている。
トルエノに再会するまで、確かな力をつけて強くなるしかない。
そして全て無に還す――




