56.強制強化試練 2-2 過去編
これは……召喚、なのか?
「う、浮いている……翼? 獣、じゃない……精霊でもない……な、何なんだ? ライゼル、お前一体何を呼び出した?」
「わ、分からないよ。で、でも、聞こえて来たんだ。だから夢中で召喚の言を……」
「バ、バカ! お前、召喚もしたことないのに言を唱えたっていうのか!? とすると、コイツは召喚で呼び出せる獣なんかじゃない。コイツは悪魔の――ガ……ア、アアアァ」
『コイツ? 貴様ごとき人間が我を愚者と呼ぶのか? 貴様ら人間ごときに我が従うとでも?』
まさかそんな……アフルの言う通り、悪魔なのだろうか。
「や、やめろ! アフルを放せ!! 彼は僕の友達だ。何故悪魔がここへ現れたのかは知らない。知らないけど、アフルに酷いことをするな!」
「……イ、ゼル……く、そ……こ、これでも喰らいやがれ!!」
『――くくく、風精霊を我に放つか。我に精霊か……ならば、精霊ごと闇へ去ね!』
あぁっ!?
悪魔の手がアフルに触れたところまでは、確かに見えた。
そしてアフルの全身が、黒い闇に取り込まれていく所で、俺の意識は落ちていた。
何も見えない暗闇の空間。
意識を落とし迷い込んでしまったのだろうか、アフルが横たわっている空間で目を覚ます。
見えるのはアフルで、あの悪魔じゃない。
「フィアフル!! お、起きてよ! 俺もここに来たんだ。だから、目を――」
「……ライゼ……ル。てめえは俺のことを忘れていた。いや、記憶に封じていただけだ。てめえは、その辺の召喚士とは違……う。潜在的な資質……転生した親から全て――」
「アフル? え、ど、どこに行ったの!?」
闇の中でアフルはその姿を消していた。
そして俺はフィアフル・レブルを、この時から自分の中に封じていたことを思い出す。
『くく、思い出したか? ライゼル』
「お、お前は……! アフルは友達だった。それなのに、何故……」
『我を呼び出しておいて、お前と呼ぶか。貴様もこの闇黒の中に封じられたいか?』
悪魔は俺を知っている。
だが俺には、それよりも友達を失ったことの方が優っていた。
俺の名を呼ぶ悪魔に向けて別の言を放つと同時に、俺は遠くに見える光を求めながら、その場に倒れてしまう。
そうして俺は、アフルを消した悪魔のことを記憶から消して、深い眠りについていた。
『我の名を呼ぶのはまだ先か。くくく、それまで貴様の力を封じてやろう……せいぜい足掻くがいい。我がライゼル――』
しばらく眠っていた俺は、見慣れた場所で目を覚ます。
畑で寝ていたらしく、俺を起こしに来た彼女は恥ずかしそうにしながらも、顔の土を一生懸命に払ってくれているようだ。
「……よしっと、これで綺麗になったよ。ねえ、どうして畑で寝ていたの?」
「アサレア?」
「そうだよ。ねえ、何で?」
ロランナ村の畑にいるということは、俺は生きていて、アフルも生きている?
「アサレア! あ、あのさ、フィアフルは?」
「え……?」
「だ、だから、貴族出のフィアフル・レブルだよ! 一回くらいは一緒に会ったことがあるよね?」
「知らない……会ったことも無いし、見たこともない」
「そ、そんなバカな……俺の友達の――」
「俺? ライゼルが俺、だなんて似合わないよ? まだ寝惚けているの? それならきちんと目覚めて!」
アサレアは一体何を言っているのだろう。
俺の意識はハッキリしている。
「早く目覚めて、ライゼル……そして、早く人間を滅せ!」
こんなこと、アサレアが言うはずがない。
ここから早く目覚めなきゃ駄目だ。
目覚めてまずは、目の前の敵を消そう――




