52.強制強化試練 1-1
「へぇ……あんた、全然召喚出来なかった奴なのかい! それが何で人間が敵になるのさ?」
「悪魔の子が味方で、助けてくれて落として……気づいたら」
「よく分かんないけど、あんたのせいじゃなくて成り行き召喚ってやつだね。悪い人間は運が無かっただけで、あんたのせいじゃないよ」
「はぁ、どうも……」
何故か威勢のいい母ちゃんタイプな妖精に慰められながら、奥の方に進んでいる。
途中まではこんな感じで、調子よく話をしていたマリムだったのに――
「な、何だ熱風? 口も喉も乾く……マリムは大丈――」
「あは……は、ははは……やっぱり次はあの子か。召喚士ライゼル、悪いんだけど一人で何とか踏ん張るんだよ? アタシは相性が悪くて調子が出そうにないから」
「え、ちょっと――!?」
大地の妖精であればどんな敵でも壁となって守ってくれる――そう信じていたのに。
マリムは熱風を感じた辺りから熱さ以上に焦りを感じて汗を噴き出していた。
そこから俺の後ろをゆっくりと歩き始め、ついて来ているのかさえ怪しくなった。
強い味方を得たはずの俺だったが、結局一人だけのまま、開けた空間に着いてしまう。
そこは森のトンネルを狭めたような作りになっていて、植物などは一切なく、村にあるようなテーブルとイスが置いてあるだけだ。
マリムがいた部屋と同様の空間には、女の子が一人いて、礼儀正しく俺を待ち構えていた。
『ずっと楽しみに待っていた。お兄さんが召喚士?』
マリムと比べても小柄で、声もか細く、どう見ても怖そうに見えない女の子だ。
「そうだよ。召喚士ライゼル・バリーチェっていうんだけど、君が妖精かな?」
ここに来る前に感じていた熱風は吹いて来ないし、熱さも感じられない。
それなのにどうしてマリムは、姿を隠してしまったのか。
「お兄さんに会いたかったの。そこに座って。いま、お茶を出してあげるね」
「い、いいの? じゃあ失礼して、ここで休ませてもらうね」
なんてことはない、いい子じゃないか。
多少の渇きはあるけど、この部屋自体が危険な感じでも無さそうだし、女の子も優しそうだ。
「――えっ……? こ、これは?」
「うん、お茶なの。熱いうちに飲んで、渇きを無くしてね」
「で、でも、これ、これは……灼熱のお茶と言っていいような」
「飲まないと冷めて美味しくなくなるの……熱いうちに飲まないと駄目……」
出された湯飲みは普通なのに、そこに注がれたお茶はどう見ても、溶岩からすくってきたような灼熱温度のお茶だった。
こんなのを口に触れさせたら、口どころか体が熔けて無くなりそうな気がする。
「レイムのお茶が飲みたくないの?」
「あ、レイムちゃんっていうのかな。い、いやぁ、これは人間の俺には無理かなぁ」
「そう……飲みたくないんだ……」
下を向いたまま、レイムと名乗る女の子は、何も言葉を発さなくなってしまった。
もしかして泣かせてしまったのか。
そうだとしても溶岩流のお茶を口にするのは無理だ。
「召喚士のお兄さん……じゃあ、熔けて消えてね」
「はっ!? え、う、嘘だろ……?」
音も無く部屋が歪んだわけでも無かったのに、気づけば足下には、灼熱の溶岩が迫って来ている。
いやいや、死ぬって!!
「じゃあ、飲む?」
「それも無理!」
「なら、熔けて消えろ!!」
あれ、これは真面目に終わってしまうのか?
今の俺には耐性なんかはほとんど備わっていなく、足元に迫っている溶岩が近付いているだけで、火傷になりかけている。
「う、うわーーー!? えーと、えーと……我が身を守れ! 召喚マリム!!」
「――! ふーん?」
咄嗟のことで何を呼べば最適なのか、イチかバチかでマリムの名を口にしてみた。
すると熱さで痛みを感じていた両足の周りには、土と岩の壁が出来ていて、溶岩が近付かなくなっている。
「た、助かった……」
しかしマリムの姿は近くに無いみたいだ。
「すでにマリムを得ていたんだ……そう、そうか」
「え?」
「さっさと言えよ、そういうことはよ!!」
「あれ、女の子は? というか、だ、誰?」
「ああ? 俺はレイムだっつってんだろうが! ボケてんじゃねえぞ、ボケが!!」
小さくて怖さを感じない女の子から、怖そうで強そうな男の子に変わっていた。
見た感じは成長途中の少年に見えるのに、言葉は明らかに俺より悪い。
「まさか、君が試練の……」
「だから何だ? マリムを取り込みやがったからって、いい気になってんじゃねえぞ!」
正体は女の子か、それとも口の悪すぎる少年なのか、どっちにしても次は、火の妖精レイムと戦わなければならないみたいだ。




