43.資格を与えし者 トルエノ編
「――それで、あいつは果ての地に?」
「そうなのだ。あんなすばしっこいダークエルフは、見たことがないのだ!」
「……ならば、我はしばらく会わないことにする。我に会いたくば、あいつ自らが力を使えると認めねばならんからな。ムルブも我の認めなく、あいつを見つけても姿を見せるな。勝手に動いた時には、我自ら……ムルブを屠る」
「て、手厳しいのだ。トルエノがそう言うなら、我慢するのだ!」
召喚士ライゼル。
最弱の時より出会った人間だったが、我が考えているよりも早く覚醒してしまった。
闇黒の王の血を継いでいたとはいえ、ああも憎悪に引っ張られてしまうとは、我も想定していなかったことだ。
くくく……かつての王は、アレで隠れたつもりのようだがライゼルを導くまでは、見逃しておいてやる。
闇黒の時代。
思い出したくも無いが、力無き悪魔族を排除し続けた王めが……よもや、その血を受け継がせるとはな。
ライゼルに罪など無い。
我に頼ることを当たり前と思われても、覚醒など成しえぬこと。
くく、我に会いたくば、ライゼル自身で運命を決めろ。我がお前の前に姿を見せる時は、その時だ。
「トルエノちゃん、今度はどこへ行くの~?」
「くくく、イビルの養分が蓄えられそうな所なら、どこででも行く」
「ほんと~? じゃあね、ライゼルちゃんが育った所に行きたいの~」
「……ライゼルの? あの村には何も無いはずだが……」
「ううん~ライゼルちゃんが残して行ったものが、きっとあるよ~」
地中に眠っていたマンドレイクであるイビルは、ライゼル自身が召喚出来た植物妖精だが、何を考えているか未だに不明だ。
毒々しさも消え失せ、ライゼルを気にしている素振りさえも見せない。
この女も油断ならぬが、もっとも油断してはならないのは、ライゼルの母として生きて来たあの女の存在だ。
ライゼルがいた村に必ず、戻っている筈だが鉢合わせをすべきかどうか……。
「もしかして、村に戻るのが怖い~?」
「ライゼルにしたことを誰が苛む? くく、我は怖いものなどない」
「じゃあじゃあ、トルエノちゃん行こう~!」
「……」
あるじ無き始まりの村に、女たちが集まるか。
ライゼル……運命を決め、滅したことを悔やんだのであれば、我の元へ戻ることだ。
我は闇黒のあの王……お前の父親とは違う。




