42.覚醒の召喚士、自身の運命を決める 2
ロランナ村から突如として姿を消した両親。
親父と母さんを探しながら、召喚士として成長出来ればと、ずっと思う日々が続いていた。
親はどちらも転生者であり、親父はかつての闇黒支配者、母さんは光の神としか聞いていなかっただけに、こんな果ての地で遭遇するとは思いもよらないことだ。
「……近付くと確かに親父に見えるけど、ただの人間になったんじゃなかった?」
「少なくとも村で暮らしていた時……いや、ライゼルの力が目覚めていない時は人間だった」
「召喚士として覚醒したから、そうなったと?」
「……それもあるが、悪魔と契ったよな?」
「そ、それってトルエノ!?」
「ソイツの力が上がったのはやはり、お前のせいか」
トルエノは親父のことを知っているとか言っていたけど、まさか関係者なのだろうか。
ユーベルが話していた通り、力を高めるために俺と契りを結んだとすれば、相当な悪魔だったと言わざるを得ない。
今の僕は召喚こそ出来そうな力は残っているが、多勢の相手を倒すといったでたらめな力は、全てトルエノに奪われた感覚がある。
「何があったのかはお前の体内の巡りを辿れば分かるが、利用されたのだろう?」
「強力な召喚が出来て、沢山の人を……」
「なるほどな……しかし父親がそうだったからといって、受け継ぐ必要は無いんだぞ。ライゼルは闇黒よりも、光の支援を受けやすいはずだ」
「で、でも、闇黒の冥界にも行ったし、俺をいじめていた連中をそこで滅したわけだし……」
最初に出会った小悪魔のトルエノは、初めからそうするつもりで助けてくれたのか?
憎悪と怒り、復讐は悪魔にとっては思うつぼ。
その結果、残された僕だけが人間を敵に回し、トルエノやルムデスたちとも会えなくなった。
「……ライゼル。俺が悪魔に囚われてしまうのは確実だ。転生しても、闇黒の時にしたことが消えることは無い。それほどのことを、あの悪魔にしてしまったのだからな」
「ぼ、僕はどうすれば?」
「味方を増やすことだ。出来れば、光側の味方をだ。お前が再び憎しみを溢れさせれば、悪魔は必ずその力を奪いに来るぞ」
「そ、そんな、そんなバカな……」
「好意を持ってお前に近づいたわけではないはずだ。偶然の出会いではなく、悪魔にとっては必然だった。強力な獣を呼び出せるようになったことで、お前自身も気を強くしていただろう?」
「そ、それは」
「とにかく俺はここで前世の力を取り戻す。お前は闇黒に頼らない召喚士となれ!」
トルエノと出会うことは、奪われることだっていうのか。
力を奪われ、人間たちと過ごすことも奪われる……そんなことになるなんて。
「あのダークエルフは?」
「ユエのことか? 奴は同胞を探しながら俺を隠してくれている」
同胞? それはもしかしてユーベルのことなのだろうか。
「……母さんはどこに?」
「アレのことなら光の器なる者と同化しているはずだ。村からいなくなったのも悪いと思っているが、俺にもあいつにも定められた運命があってな」
「そ、そうなんだ」
「とにかくだ。ライゼルには決められた運命など無い。自分で決めて、どう生きるかを考えることだ。俺は大木と同化し、しばらく眠る。俺やアレを探すことよりも、ライゼル自身で運命を決めろ」
闇と光の間に生まれた者の運命……とにかく、誰かに会いたい。
それが悪魔であろうと、もう一度会って決めるしかないんだ。




