41.覚醒の召喚士、自身の運命を決める 1
助けを求めてもかつての仲間である彼女たちは、ここにはいない。
トルエノの名を呼び掛けても、彼女がどこにいるのか分からないままだ。
このまま村の連中に捕まったまま、さらに多くの敵を引き寄せてしまうのだろうか。
「おらぁっ! 歩きやがれ!!」
「――ぐっ」
村にいたらしきほとんどの冒険者が罪人のような扱いで、召喚士の僕を睨んでいる。
首領となっている屈強な男たちが僕を逃がさないように取り囲み、呼びかけで応じた冒険者が壁となって進み出す。
せっかく助けられたのに、誰にも会えないままでロランナ村に連れて行かれてしまうのか。
「「「うあああ!? き、聞いてねえっ! 召喚士だけ捕らえるだけじゃねえのかよっ!?」」」
「あん? 何だ、どうした?」
壁となっていた冒険者たちが、何かによって怯みだし、人垣を崩しだしている。
「フィング、やべえ! 高レベルのダークエルフが襲って来やがった」
「何? ダークエルフ? 召喚士狙いかよ」
「冒険者どもが怯えていやがるなんて、普通じゃねえよ! どうする?」
「……ち、賞金首を捕まえときながら、ダークエルフ一匹に蹴散らされるってのかよ! てめえら、先回りすんぞ! 召喚士はどのみち、逃げ場がねえ」
ダークエルフで思い浮かぶのはユーベルしかいないが、彼女は僕のことを助けないと言っていた。
それなのに、助けに来たというのか。
「おい、最弱! てめえを味方する人間、いや、ギルドは存在しねえぞ? どこに逃げようが、ギルド連合で必ず――ちぃっ!」
ユーベルの実力はルムデスには及ばないことを思い出す。もし彼女だとしたら、大勢の冒険者に対しては、苦戦を強いられてしまうのではないだろうか。
予想に反し、目の前に現れたダークエルフは彼女では無かった。
一体何者なのだろうか。
「人間の敵と成り果てた召喚士、俺について来い」
「――え」
「お前に会わせたい奴がこの先にいる。この先にソイツがいる……と言っても、エルフじゃないけどな」
「あ、あなたは?」
「俺は何者でもない。依頼主に従うだけのエルフだ。このまま山奥に進め! 感じていた気配は全て遠ざけておいた。お前だけで行け」
名前を聞く間もなく助けてくれたダークエルフの男は、目の前から姿を消した。
ユーベルに似た雰囲気だったが、気のせいだろうか。
言われた通り道なりに進んだ先の山奥にたどり着くと、人はおろか、獣の気配も感じられない重苦しい環境が出迎えた。
「ライゼル・バリーチェ……」
「え……だ、誰?」
「忘れたか? ライゼル……俺を探していたんじゃなかったのか? なぁ、息子……」
息子……?
まさか親父なのか?
いや、そんなはずはない。
目の前で僕を呼んでいるのは、すでに人の姿を成していない植物にしか見えない。
「老木が僕の親父だなんて、そんなのは違う!」
「まぁ、聞け……この姿は仮だ。何せ、俺も狙われている身だからな……」
「仮? で、でも……」
「とにかく近くに寄れ。寄れば親の姿を思い出して、そう見えるはずだ」
まさか探していた親父が、こんな果ての山奥にいたというのか?
散々探していた親父が、こうもあっさりと目の前に現れるなんて……どういうことなのか。
母さんの姿は見えないし、気配も感じないのが気になる。
さっきのダークエルフといい、これから何が分かるというのか。




