39.覚醒の召喚士、失意のままで成り行きを任せる
「そ、それはそうと、ここはどこなんだ?」
「あら、案外素直に言うことを聞きますのね。最強召喚士になったのですから、もっと抵抗してあたしを消してしまうものとばかり……」
「しない。こんなよく分からない地に置き去りにされたら、最強の意味が無いだろ……それに……」
「ウフフ……賢明ですわね。ご心配なさらずとも、あなた様の名を頂いている以上、無下にもしませんわ」
意識しなくても、ここにいるのは僕とユーベルだけだ。
他のみんなは無事なのだろうか。
「こ、ここからどうすればいい?」
「……見たところ、体力と精神力のほとんどを悪魔に奪われているみたいですわね。たとえ召喚出来ても、獣に喰われてしまうのは確実。ですので、あたしがお傍につきますわ」
「お、お前は僕の命を狙って追跡を繰り返しているんじゃなかったのか? 敵に居場所を教えたりして、助けようとはして来なかった。何で助ける?」
「力を失った証拠に、あなたは昔の言葉に戻っている。そこから戻るには、時間が必要と存じますわね」
体の奥から何かが失われたような感覚があるのは、そういうことなのか。
ユーベルの姿はハッキリと見えているのに、周りに何があるのか全く見えない。
「ここはどこかの村……?」
「果ての地。人間はおろか、他の種族も敵もいない。あなたは悪魔から力を奪われ、見知らぬ地に肉体を放置された。そこをあたしが拾ったというわけ」
「な、何で……」
「それはそうでしょ? あたしも人間は嫌いだけど、それまで味方だった人間をああも滅してしまえば、ライゼルの身に何が起こるかお分かりなのでは?」
そ、そうか……イゴルたちは確かに嫌な奴等だった。
だけどやり過ぎたということか。
しかしどうしてここにいるのは、ユーベルなんだ? ……せめて、ルムデスだったら。
「何かもやり遂げて、何も残らない感想は?」
「本当にトルエノがしたことなのか……?」
「悪魔なんてそんなもの。力を強くさせて、美味しく頂いた……ただそれだけ」
信じていたわけじゃなかった……だけど、あれだけ自分に従っていたトルエノが、あんなに豹変するなんて。
「どうすればいい……どうすれば――」
「あたしはこのままここで、ライゼルと一緒に朽ちるのを望むけど、ルムデスを悔しがらせるのも未練。そういうわけだから、あなたと出てやるよ」
まずはワケの分からない地から出る……出てから決めよう。
もう何も僕には残っていないんだ……
◇◇◇
「アサレア、彼は見つかりましたか?」
「……どこにもいないです。ルムデスさんは、ライゼルと意思を通じているはずですよね? 声は届かないんですか?」
「いえ、それも含めて悪魔に奪われました。彼ともう一度、契る必要があります……それくらい闇黒の魔力が凄まじかったと言わざるを得ません」
「そ、そうなんですね……」
「ええ、少なくともわたくしたちが感じられる近さに、彼はいないでしょう。ムルヴとイビルの姿も見えませんし、一緒にいるのはわたくしとアサレアだけということです」
「ライゼル……どうしてこんなことに」
「アサレアの故郷は彼と同じでしたよね?」
「そ、そうですけど、全て片付けて引き払いました。ライゼルの仲間というだけで、恐らくもう……」
「わたくしがアサレアをお守りしますわ。ライゼルの村に何か手掛かりがあるかもしれないのです。それであれば、あなたと一緒に行く方がいいと感じました」
ライゼルの故郷、ロランナ村。
彼の両親が姿を消した家に、果たして何かが残っているのだろうか。
ルムデス、アサレアの二人は、姿を消したトルエノとライゼルの行方を追うことをやめ、ロランナ村に向かうことを決めた。




