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村を追放された最弱召喚士がチート級モンスターたちを召喚して、いつの間にか最強になってました。  作者: 遥風 かずら
第三章:葛藤の召喚士

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21.迷いの召喚士、母なる双葉の優しさに甘える


「くくっ、どうだ? 強くなった感想は?」

「わ、分からないよ。俺がやったっていう感覚じゃなかったし……」

「ならば分かるようになるまで召喚をし続けることだ。キサマにはまだ迷いがある。今回は村の人間どもを守る為だからこそ奴等を消したのだろうが、キサマには無関係の人間を躊躇なく消すことに、迷いと甘さがあるように見える」

「そ、そりゃあ迷うよ。俺を村から追い出したギルドやイゴルには、迷うことなく懲らしめたい気持ちはあるけど、関わってない村の人やこれから訪れる町の人間をむやみやたらに消すだなんて、それは普通じゃないっていうか……」


 懲らしめるどころか、ルジェクとオリアンはすでに存在を消しているし、村にいたギルド連中もこの世からいなくなった。


 トルエノがいう俺の迷いは、俺に対して害を為さない人間に対して、酷いことは出来ないということを言っているのだと思う。


「……まぁ、いい。我はキサマに捧ぐと決め、力を注いだのだからな。完全に覚醒する時を待つことにする」

「う、うん……」

「ところであの人間の女はどうするつもりだ?」


 トルエノには聞かれると思っていたけど、やはり気にしているみたいだ。


 確かにこの旅は先が見えないし、イゴルを含めた敵である人間たちを消して見せるのは、アサレアには辛いだけかもしれない。


 それでも合成士である彼女を連れて行くことは、獣であるトルエノたちにも役立ちそうな予感を感じているだけに、せめて彼女だけは認めてもらわないと先には進めない。


「アサレアは口うるさいけど、俺の味方なんだよ。だから、一緒に付いて来てもらおうかなと」

「我もそうだが、妖精もエルフもキサマ以外の人間を守る義理は無い。あの女が災いを連れて来なければ、キサマの迷いも生じることは無かったのではないのか?」

「災い……ルジェクに付いて来ただけで、アサレアが連れて来たわけじゃ……」

「同じことだ。まぁいい、我の邪魔をする人間は灰にするだけだ」


 人間嫌いなのは当たり前かもしれない……だけどここは、強く言わないと駄目だ。


「――それは駄目だ。俺が認めた人間を灰にするのか?」

「……くく、主がそういうのであれば我は従うまで」

「ならば従え! 一つだけの契りは二つとなり、トルエノの全てを支配した。俺に逆らわないと誓え」

「悦んで誓わせて頂きますわ……我が主様」


 一が二になった……どこかで聞いたことがある様な気がするけど、どこだっただろうか。


 それにしても口調を強めただけなのに、トルエノはあっさりと従ってくれた。


 一番手強そうなトルエノを従わせられたのなら、ルムデスとイビルも従わせるのは苦しくないのかも。


「フフフ……大いに迷うことですわね、召喚士」

「え?」

「さて、ライゼル様はこれからどうなされます?」

「イックスに戻る。トルエノには悪いけど、空をもう一度飛んでくれないか?」

「それは叶わぬお願いですわ」

「な、何でだ?」

「主様に全てを捧げた我には、主様を抱えて飛ぶ力は残っていませんわ。ライゼル様に翼は無くとも、飛ぼうと念じればよろしいのでは?」


 そこまでの力を得た感じは無いし、翼が無い状態で飛べるとも思えない。


「フフ、我は先に戻りますわ。ライゼル様でしたら、たとえ飛べずとも――」


 そう言いながらトルエノだけ飛んで行ってしまった。


 召喚士が悪魔の力を得ても翼が生えるわけでもないらしく、その辺りは甘くなかった。


 空も飛べずにどうやってイックスに戻ればいいのだろうか。


 ロランナ村に助けを求める訳にもいかず、だからと言って迷っていても何かが起きるわけでもなく、俺が出来ることと言えば、召喚の言を唱えるだけだ。


「黒き翼よ、我の求めに……いや、違う。高き空に在する神よ……翼無き我の求めに応じ――」


 何度か浮かんだ言を唱えても、何かが違う気がして最後まで唱えることが出来ない。


 空を飛ぶことが出来て、なるべく人間たちに災いをもたらさない獣を呼ぶというのは想像以上に難しかった。


 そのせいか頭を抱えたままで、意識が途切れてしまった。


「うーん……むぎゅっ!? わぷっ! えっ?」

「うふふ~どうしたの、ライゼルちゃん」

「え、イビル? あれ……俺、どうしたんだっけ?」

「気持ちよさそうに眠っていたよぉ」

「そ、そうか、俺……眠ってしまったんだ」


 召喚の言を途中でやめたりしただけでも、体と精神に相当な負担がかかるみたいだ。


 目を覚ますと目の前にはイビルの胸があり、彼女に包まれるようにして抱きしめられていた。


「イビルは俺の母さんみたいだ……」

「まぁ! そうなのね。それなら、イビル母さんって呼んでくれてもいいよ~」

「か、母さん……」

「うんうん、ライゼルちゃんは甘えん坊さんなのね~」


 彼女が植物妖精のせいもあって、俺はしばらくイビル母さんに抱きしめられたまま甘えていた。


「……んんー」

「ライゼルちゃん、起きて起きて!」

「も、もう少し横になっていたい……」

「は、早く起きて~! た、大変なの! おっきな鳥さんが会いに来てるよ~」

「うーん? 大きな鳥……?」

「わ、わたしじゃお話出来ないよ~! ライゼルちゃん、早く起きて!」


『余を此処へ呼び出したは、あなたか?』


「――へ?」

お読みいただきありがとうございます。

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