161.戦きに勝る力と
「ライゼルさま……ここはわたくしが」
「――ルムデス!? し、しかし……」
「わたくしもあなたさまのお力に守られし存在。少しは時間を稼げるはずです。トルエノと戦うほんの少しの間だけでも、お力を――!」
「……それはアサレアから?」
「はい」
アサレアを間近で見る限りでは、恐らく自分が持つスキルにすら気付いていない。
それを僅かな時間でどう分からせられるのか。
『どうした? 来ないなら我から――』
『あなたの相手はわたくしです!』
『ほぅ……? エルフごときが我に挑むか』
ルムデスが心配ではあるが、ここは彼女に凌いでもらうしかなさそうだ。
「……ねぇ、ライゼル……あ、あれがトルエノ――?」
「あぁ、うん。アサレアが知っているトルエノじゃないけど……ア、アサレア、ど、どうしたの!?」
「あんな……あんなに邪悪な気配を感じさせているなんて、どうして……ロランナ村に、ここにあんな恐ろしいのがいるの」
「……アサレア」
「怖い……怖いよ、ライゼル……」
アサレアはしがみつきながら、身震いをさせている。
地力に加え龍の力を得たから分からなくなっていたが、底上げのスキルを秘めているとしても、合成士のアサレアは力の強さを持たない女の子だ。
そこに悪魔の、それも見たことのない恐怖が自分に近づくのは、あまりに酷すぎる。
あのトルエノに対し、アサレアからは軽くて鋭い戦きが、足の先まで伝わって来たのが分かった。
ルムデスがくれた僅かな間に酷なことかもしれないが、彼女を安心させて力のことを知ってもらうしかない。
「アサレア。お、俺が、必ず守るから、だから今から話す君の力の――」
「……ライゼル。手を握りしめて?」
「――え」
震えながら俺にしがみついているアサレアには、隠された力のことを話していないがまさか……。
そう思っていると、
「え、えっと、ライゼルに伝わってるって言えばいいのかな……?」
「こ、これ……この流れの力……」
「ルムデスが言おうとしていたことって、これのことだよね」
「な、何で……」
「ずっと前に何となく思っていたんだけど、合成で出来た薬の効果も、薬草も……何か別の力が加わっているのかなって、何となく思い始めていたの……でも誰かに対して力を伝えるような、そんなことにはならなくて……」
「それに気付いたのは?」
「形見の防具に触れてみた頃から……かな」
アーティファクト自体も不思議な力を秘めていたけど、アサレアから注がれたことも関係しているのだろうか。
何の為の力なのか分からなかったことなのに、アサレア自身はだいぶ昔に感じていた。
そして彼女の手から流れて来る力は、間違いなくリエンガンで感じた時のものだ。
何より、今回はアサレア自身から直接伝わって来ている。
この底上げからのスキルをトルエノに全て奪われていたら、どうなることか。
「ふぅっ……」
「やっぱり疲れる?」
「ううん、わたしがライゼルに力を注いでいるとか、そんなんじゃないんだよ。気持ちの問題みたいなものかな。本当は凄く怖いし、震えも収まらないの。でもせっかくロランナ村に帰って来られたし、だから、せめてこれくらいは出来ないとって思ったの」
「そ、そうか」
少しの時間なのに、アサレアから伝わって来た力の流れには、際限が無いように思えた。
これを狙っていたトルエノは、まだそこまでじゃないということなのか。
ルムデスが気になる。
外に出て彼女の元に向かうことにしよう。




