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村を追放された最弱召喚士がチート級モンスターたちを召喚して、いつの間にか最強になってました。  作者: 遥風 かずら
第八章:支配者

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143.召喚士、ダークエルフと取引する


「因縁……いい加減召喚士と断ち切りたいものだね……」

「戦いに無縁なこの村で、俺を封じるのか?」

「封じられるようなまじないなんて、あたしは無いさ」


 予想をしていなかったわけじゃなかった。

 ユーベルがリエンガンにまで来ていたことを考えれば、このまま見逃されることなど無いだろう……そう思ってはいた。


 しかしルムデスとの因縁はすでに断ち切れ、俺との契りもすでに切れたようなものなのに、どうして彼女は再び俺の前に姿を現すのだろうか。

 

 ユーベルだけならともかく、彼女の近くから感じる油断の出来ない気配は、怖れを感じない俺でも気を張る。

 

「――と、言いたい所だが……龍の力まで手に入れたライゼルと戦おうなんて、これっぽちも思っちゃいない。あんたが本当にあの悪魔の女を支配出来るまでは、監視させてもらう……それだけさ」

「俺を止める……戦うということじゃないのか?」

「あたしだってバカじゃない。いくらあんたの名と契って死を得られることが無くても、痛い思いは嫌なのさ。ここに来たのは、挨拶さ……いるんだろう?」

「……! 何もしないんだな?」

「ライゼルが出会うより前からの付き合いなんだ。そんなことするわけが無いだろう?」

「分かった。村に入ることを許す」

「……ふん。散々放置して偉そうに」


 どうやらユーベルの狙いは、トルエノだけのようだ。


 ユーベルの言うようにトルエノを召喚したとしても、また全ての力を奪われるようでは、ここまで監視してきた意味が無くなるということなのだろう。


『おっ! ライゼル! 召喚で何かやるって言ってたが終わったのか?』

 ミンザーネ村に足を踏み入れると、レグルスが待ちかねたようにすぐに声をかけて来た。


「ギルドマスター、お久しぶりですわね」

「う、おっ……!? お、お前はユーベルか! 何だ、そうか! 召喚ってのはユーベルの手伝いだったんだな?」

「そ、そんなとこです」

「……それはそうと、マスターの他にも人間のギルドマスターばかりがこの村に居着いているようですけれど、どういう状況です?」

「む? それはだな……」


 レグルスの目配せは、もしかして俺に気を遣っているのだろうか。


 闇黒の力で村々や冒険者たちを、巻き添えで滅して来た俺が言えることじゃないが、ロランナ村以外のギルドマスターは、冒険者や職人を全てロランナ村に送れと言われたらしく、あぶれてしまってここを求めたらしい。


「……大方、そこの召喚士が迷惑をかけた……そういうことなのでしょう?」

「う、いや……だが、この村に来たことで彼らは生き甲斐が生まれてな」

「半神に教えを乞われたと……なるほど」


 レグルスにも申し訳ないし、ユーベルの顔をまともに見られない。

 ギルドマスターだらけになっていたのは、そういうことだったんだと、ここに来てようやく理解出来た。


「あぁ、ライゼル。前に話していた合成士のあの子も、ここに呼んでいいぞ! ここには冒険者もいないし、危害を加えるような気性の荒い奴もいないしな! ん? どうした?」

「……彼女はここにはまだ来られません。だけど、いつか必ず!」

「そうか。その時が来るのを楽しみにしとくぞ! ユーベルも気軽に来ていいんだからな!」

「ふふ……そうさせてもらいますわ」

「俺もそうだが、ライゼルも大変そうだからな。やることが落ち着いたら、ここに戻って来てくれ!」

「ありがとう、レグルス。きっと戻るよ!」


 全てのことを察しているわけでは無いが、ル・バランの武装修道士兼狩りギルドをしていた彼は、深くは聞いて来ることが無かった。


 だからこそずっと味方で、俺を信用してくれているんだろうと感謝しか出来ない。


「人間……それもギルドからのあぶれ者と、召喚で大地を削られた国の半神者たち、ね。それが償いになると思ったら大間違いだ」

「ユーベル。キミの狙いは何だ? 俺を殺したいんじゃないのか?」


 これまでずっと行く先々で、ユーベルは俺に戦いを挑んだり助けたりして来た。

 それは単に、俺の名を得ただけでは無いと思っていたが……。


「悪魔の女。アイツの息の根を止める……それがあたしの狙いさ! あの女に力を奪われて地の果てにいたお前を助けたのも、その為さ。力を取り戻したライゼルなら、必ずあの女を召喚しようとするはずだからな!」

「確かに再召喚をしようとしている。だけど、次は力を奪わせるつもりは無い! その為に俺は――」

「信じろとでも言うつもりか? リエンガンで見たお前、そして上空に龍を飛ばせ従えているという点で、お前の力が以前と違うのは分かる」

「だから……」

「だからといって、あの悪魔を完全に支配出来るという保証は無い!!」


 ユーベルのこの感じは、明らかな憎悪を含んでいて、今にも刃を向けて来そうだ。

 憎悪の正体はこれ以上聞くことが出来ないが、ロランナ村で邪魔をされては困る。


「よく分かった。それで君はこのまま俺に付いて来るつもりが?」

「……その時まで姿は見せないさ。あの女に刃を突き刺すのは、あたしじゃないんでね」

「ユーベルじゃない?」


 ユーベルの近くに感じる闇の気配。

 この気配は、親父の近くでも感じた覚えがある。


「ダークエルフの主様が、悪魔を突き刺す……あたしのユエ様が」

「ユエ?」

「お前が知る所じゃない」

 

 あぁ、そうか。やはり親父を守っていたダークエルフのことか。

 ――ということは、ユーベルを懐柔させて憎悪を膨らませた……そういうことになる。


「ユーベル。俺と取引をしないか?」

「……いいだろう。お前があの悪魔を召喚するまでは、神聖のあの女も他の人間にも手を出すな……そういうことだろ?」

「トルエノのことについても、俺が彼女を完全支配した時は、一切手出しをしないと誓えるか?」

「出来るはずも無いだろうが……仮に完全召喚をされてしまえば、獣を殺すことは出来なくなる。その時は好きにしな!」

「そうさせてもらう」


 親父の無念と因縁がダークエルフを巻き込んでいるとしたら、全て俺が片付けるしかない。

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