表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エリナギ  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/6

6話

 やんちゃな男たちが走り去った後、ナギはその高校生のような顔に不安の色を浮かべながら、エリナに話しかける。


「エリナさん、大丈夫だったっすか?」


 それに対し彼女は、顔をしかめながらも、落ち着いた声で返す。


「問題ないわ。ただ……服を汚されるなんて不愉快極まりないわね」


 運動靴で何度も踏まれたブラウスは、くっきりと土色がついてしまっている。白のブラウスだけに、汚れがよく目立つ。それに加えて、桜色の髪は乱れ、タイトスカートには埃がついてしまっていた。


 このままでは堂々と街を歩くのは無理そうだ。


「まぁ確かに服もっすけど……。体は平気なんすか? 踏まれたりしてたっしょ?」

「えぇ。それなら、どうもないわ」

「マジっすか? 別に強がらなくていいんすよ?」

「何よ、その言い方は。私をそんな弱い女だと思っているの?」


 ナギをじとっと見つめるエリナ。

 その顔からは不快感が感じられる。恐らく、強がりだと思われているのが気に食わなかったのだろう。彼女はそういう人間だ。


「いやいや、そういうわけじゃないっすけど……」

「ならどうして『強がらなくていい』なんて言うのよ」

「いや、ただね? エリナさんが弱音を吐きにくかったらと思って……」

「吐かないわよ! 弱音なんて!」


 エリナは一度わざとらしく髪を掻き上げてから、口を尖らせて言い放った。


 そんな彼女の手を、ナギはそっと握る。


「こんなこと言ったらまた怒らせるかもしれないっすけど……エリナさん、たまには俺に甘えていいんすよ?」


 いつものように咄嗟に言い返そうとするエリナだったが、ナギが自分に向けている視線を見て、言葉を詰まらせる。彼の視線がいつになく真っ直ぐで真剣なものだったからだ。

 彼女とて、何も考えずに物を言っているわけではない。だから、真剣さを感じれば、いつものようには言い返せないのだろう。


「エリナさんは強い人っす。そこが魅力でもあるわけで、弱くなれとは言わないっすよ。でもね? 甘えたい時だってたまにはあるっしょ?」


 彼女の茶色い瞳は、ナギだけを捉えていた。


「そういう時は素直に誰かに甘えるのが正解と思うっすよ」


 ごくり、とエリナは唾を飲み込む。

 いつも強気な彼女は、自分の考えが正しいと信じて疑わない自信家だ。だが、特別な存在であるナギにこうもはっきりと言われては、自身だけを正しいと思うのも難しいようである。


「……何よ、偉そうに」

「すいません」

「……そうやってすぐに謝られるのも不愉快だわ」

「えぇ……どっちなんすか……」


 謝っても謝らなくても怒られそうな空気に、ナギは渋い顔をした。


 少しして、エリナは口を開く。


「でも、ま」


 桜色の髪を再び掻き上げ、さらりと揺らす。

 それから、彼女は言う。


「たまには頼ってもいいかもしれないわね」


 エリナの顔には笑みが浮かんでいた。

 口紅の塗られた赤い唇の端は持ち上がっている。まさに「女王様」という言葉が似合う、自信に満ちた華やかな笑みだ。まるで、顔面に薔薇の花が咲いたようである。


「もちっすよ! 何でも言ってほしいっす!」


 ようやく頼ってもらえそうな雰囲気になってきたことを喜び、派手にガッツポーズをとるナギ。その瞳は、やる気に満ちている。


「なら早速。まずは着替え一式、購入してもらえるかしら?」

「えぇっ!? そんな金、今持ってないっすよ!!」

「やはりナギに頼るのは無理だったわね。頼るの、やーめた」

「そ、そんなぁ」


 先を行くエリナ。それを追うナギ。

 二人の関係性は相変わらずだ。


「待ってほしいっすよー!」

「待たない。もたもたしていると置いていくわよ」

「そんなぁ……」

「……冗談よ」

「あ、そうなんすか!」


 相変わらずは相変わらずだが——少しずつ近づきつつはある。それは確かだ。


 今はまだ、僅かに開いた蕾だけれど。


 二人の関係は、いつか大輪の花を咲かせることだろう。そして、その先にあるのは——幸せな未来に違いない。


◇終わり◇

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ