00 奄美剣星 著 フィナーレ 『プラネタリュウム』
日曜日の朝は教会の礼拝があって、終わると牧師の息子・愛矢が門口に立っている。ノッポな悪友だ。
子供のとき恋太郎は、この悪友を誘って、街にくりだしたものだった。
傘をさした二人は路面電車に乗った。
停車場は二両編成の長さに合わせたホームだ。料金は車内で前払い、車掌に硬貨を渡して乗車券を貰った。
路面電車は道路の真ん中をゆく。
家々の垣根には紫陽花が咲いていた。寺の門前にある池では蓮が咲いていた。木造の家々、白い蔵。瀟洒なカフェや映画館。
道路辻の真ん中にあるコンクリート製ドームは信号所。冷房もない内部には係がいて、手動で、減速や停止の指示を出している。そして、三つ先の停車場までゆく。
市役所横にある、公民館は三階建ての、アールデコ建築ビルだ。
まずは地下食堂で昼食にお子様ラーメンを頼み、メロンソーダを飲んだ。それから図書館で児童書を読むのが定番だった。
エレベーターのドア前に立った恋太郎は、いつものように、図書館で児童書を読もうとしていた。
一階が図書館だ。
ノッポな愛矢が、流し髪の恋太郎の袖を引っ張った。
「プラネタリュウムを観て行こう」
二階が天文台、三階がプラネタリュウムになっていた。
天文台の学芸員先生はもういい歳のはずなのだが、まだ独身なのだそうだ。白髪のくせに、ヒットラーみたいな髭を生やしていた。
「これは、一九三〇年代に、ドイツで製作されたツァイス投影機だ」
少年二人は目を輝かせた。
「蟻みたいな形の機械だな。――どのくらい映せるんです?」
「ツァイスは、太陽系諸惑星と、一等星から六等星までの投影が可能だ。四千五百というところだ」
「どうやって映すんです?」
「恒星原板や、集光レンズを使用してドーム内に星像を投影する」
五十人が視聴できる観客席。皆がシートを倒して天井を見上げた。
投影機の光が帯になって、曲面スクリーンに星を描いた。
六月は東と西に夏と春の大三角がみえる。間に〝へびつかい〟とか〝うしかい〟〝りゅう〟や〝こぐま〟なんかがいた。
*
学生になった恋太郎が、たまたま故郷の町に帰り、久しぶりにプラネタリウムを訪れた。もちろんヒトラーじっちゃんはとっくの昔に退官している。
残念なことに……。
公民館の玄関には掲示板があって、プラネタリュウムは老朽化により無期限上映停止になったと書いてあった。
*
再び上京し、恋人の雫に星の話をした。
すると。
「恋太郎さん、詳しい。その手口で何人……」
セミロングに水色のワンピースを着た雫が、自身でウケたようでその先が言えなくなり、クスクス笑いだした。
もうすぐ七夕だ。
恋太郎は、梅雨明けはまだだろうけれど、晴れたらいいなと願った。
了(ノート20170713)
自作小説倶楽部第14冊はこれにて完結。
それでは次回第15冊でお会いいたしましょう。
ご高覧ありがとうございます。




