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3章 攫われた仲間

ここから理解が難しくなるかも知れませんが、よろしくお願いします。

彼はその場で座り、エデンについて考えていた。

そこまでオズマ・トフェニ=エデンと言う存在は超常的で恐ろしき存在なのか、誰もが畏怖を手向けてもおかしくない存在なのか。

彼は分からなかった。力には限度があると考えていたからだ。

非科学的な事は信じない彼であったが、今さっき彼が召喚した"ファルシオン"と言う存在がその固定概念を打ち破り、今の彼にあやふやな記憶を与えた。

常識に囚われてはいけないのか、彼自身は思い、そして悩んでいた。


「…そういやリヒトに渡したい物があるのよ。流石にその杖じゃ戦えないだろうし」

「パチェ、何か持ってるの?」

「そりゃあ、ね。…魔法の力を受けた長太刀よ」


刀身が冷淡な程細長い太刀を持ってきては彼に見せつける。

光に反射して煌めく刀身が彼の眼の中に入るが、対照的に彼は暗かった。


「…何だこれは」

「武器よ。…今あなたが持ってる杖は召喚の際に必要だけど、この太刀も魔力を帯びてるから同じ効果を得られるわ」

「…召喚って何だ」

「さっき貴方がお爺さんを呼び出したじゃない。あんな感じよ」

「…そうか」


リヒトはパチュリーから長太刀を受け取った。

刀身の長さは2mと言ったところか。


「…オズマ・トフェニ=エデン…奴を倒してこの世界の安寧を救うことが私たちの第一の願いなのよ。

その為にも貴方に協力をして貰って、奴らの崩壊を目指すわ」

「…分かった」


その時彼は頷いた。

自身の心情の中で蜷局を巻く蛇に不安を乗せていたが、彼なりに希望を持ってみようと思ったのだ。

それは好奇心か?…違う、彼なりの考えであった。


刹那、会議中の3人の元にやってきたのは咲夜であった。

再び焦った様子を見せていたことから襲撃か何か、どちらにしろいい事では無さそうであった。


「…咲夜、どうしたのよ!?」

「…めめめめめめめめめめ美鈴が人質としてOBEYに攫われました…!」


その言葉は一瞬でレミリアとパチュリーを凍て付かせた。

彼は何を言ってるのか分からず、ぼんやりしていた。人工で出来たが故に余り感情輸入は得意では無かったのだ。


「…OBEY…何処までしつこいのよ…!」


パチュリーは美鈴を攫ったOBEYを憎み、恨んでいた。

歯を食いしばらせ、攫われた仲間を思うと焦りが生まれる。


「…パチェ、私は咲夜と一緒に美鈴を助けに行くわ。…こうなったら早く助けないと!」

「落ち着きなさいレミィ!何も後先を考えずに無鉄砲に行動するのは危険よ!」

「危険と仲間の命は代えられないのよ!行くわよ、咲夜!」

「はい、お嬢様!」


そのまま椅子から素早く立ち上がり、彼女はメイドと共にその姿を消した。

パチュリーの言う事を聞かずにそのまま旅立った党首。無鉄砲な彼女の安全を、パチュリーは只、祈っていた。


「…ぱ、パチェ…今咲夜とお姉さまが凄い勢いでバイクに乗っていったけど…って誰!?」


宝飾を下げる翼を付けた彼女は2人の元へ姿を見せたが、会ったことの無い人物に戸惑いを感じていた。

外で防衛戦をしていた為か、傷が少し目立つ。


「…2人はOBEYに攫われた美鈴を助けに行ったわ…。…無鉄砲過ぎるわ、レミィ…。

…それに彼はリヒト…レミィがそう名付けたのよ」

「ふ~ん…って美鈴が攫われた!?助けに行かなきゃ!」


彼女もまた焦りに走るが、そこから生まれるのは悲劇だけだ。

作戦を練らないで行う特攻など、歴史にすら名を残さない犬死にである。


「…待ちなさいフラン!貴方はここで待つのよ!」

「で、でも美鈴が…!」

「美鈴は作戦を立ててから助けに行くわ!美鈴もそこまで弱くは無いわ、例え拷問程度でも彼女なら生き延びるはず…。先ずは確実な救出手段を探すのよ」

「…」


目の前で起きている寸劇に、彼はついていけなかった。

何が起きているのか?目の前の宝飾の翼を持つ彼女は誰だ?"美鈴"って言うのは仲間の名前か?

彼自身の中で渦巻く闇の中に引きこまれ、彼は遠い眼差しで2人を見ていた。


「…リヒト、紹介するわね。この子は"フラン"。レミィの妹よ」

「よろしくねッ!リヒトさんッ!」

「あ、ああ…そうだな…」


ぎこちない返事に彼は後悔を感じたが、それよりも今起きている状況の方が大変であることをやっち把握したのだ。

攫われた…誘拐された"美鈴"と言う人物…

彼自身の人工的な思考回路にそんな考えを結びついていく。


「…でも…このままじゃ美鈴…トフェニに聖匣アーティファクトにされちゃうよ…パチェ…」

「安心しなさいフラン、まだ…大丈夫よ…」

「…あ、聖匣アーティファクトって何だ…?」


リヒトの問う疑問にパチュリーは思い悩んだ。

複雑な事象を一から説明するのは気が遠いからだ。さっきの説明も言ってしまえば皮の部分であり、肉の部分はまだ話していない。

そこを問われ、説明の仕方を脳裏でシュミレーションを描く。


「…む、難しい質問ね…。…聖匣アーティファクトとは簡単に言ってしまえば"ゾンビ"よ」

「…ゾンビ…?」

「トフェニは神であるが故に気に入らない人物の魂を抜いて、対象を中身の無い骸に変えてしまうのよ。

…これを聖櫃化ヴィルドガンズって言うんだけど、個々のトフェニが聖櫃化ヴィルドガンズを行うにはオズマ・トフェニ=エデンに許可を得ないと駄目なの。

…オズマ・トフェニ=エデンは中心の存在、あらゆる事象はエデンの惆悵芥蔕裁判エデン・ジャッジメントで意のままに決められるのよ。

…OBEYで働く兵士は惆悵芥蔕裁判エデン・ジャッジメントを受け、聖匣(アーティファクト)にされ、トフェニの操る意のままになった、哀れな存在なのよ。

だから私たちはオズマ・トフェニ=エデンを倒さなくてはいけないの。聖櫃化された人たちの為にも」


難しい用語―――『聖匣アーティファクト』…『聖櫃化ヴィルドガンズ』…『惆悵芥蔕裁判エデン・ジャッジメント』…。

それらが組み合わさって指した内容を瞬間的に理解したリヒトは急に天才になったかのように覚め、新ためて世界の事象を知った。

悪なのは兵士では無い。惆悵芥蔕裁判エデン・ジャッジメントをして聖櫃化ヴィルドガンズを促す存在…"オズマ・トフェニ=エデン"…。

彼はその存在を深く、胸に刻んだ。


「そういや紅魔館の周りの結界が壊されてたよ、パチェ」

「ああ、さっきの襲撃で壊されたのね。ちょっと舐めてたわ、今はもう張り替えてあるから安心して。

とんでもないのが来ない限り、安全よ」


パチュリーは立ち上がり、図書館へ戻ろうとする。

―――美鈴救出の為の作戦を練るのだ。


「…後ね、リヒト…。…もう少し掘り下げて説明すると…、…この世界にいるトフェニは全部で11体なのよ。…そのうちの1体が中心のオズマ・トフェニ=エデン。

…トフェニにも3種類あって、主に"ゼア系譜"と"ミレ系譜"、そして"オズマ系譜"で分かれるわ。

…オズマ・トフェニ=エデンで察しが付いたかも知れないけど、系譜名は基本、冠してるの。

―――で、ゼア系譜が主に「事象」を、ミレ系譜が主に「現象」を、オズマ系譜が「中心」を司ってるの。

ゼア系譜は5体、ミレ系譜も5体、オズマ系譜が1体の11体よ。分かるかしら?」

「…分かった」


複雑な事象を完全に理解し、彼は分かった気でいた。

ゼア系譜とミレ系譜では主に司る対象が異なり、司る対象が対極している。

ゼア系譜では事象…主に火や水などの『見えるもの』、ミレ系譜では現象…主に存在や力と言った『見えないもの』を操ってる訳であることを。

そしてその中心に立つのが―――オズマ系譜…そう、オズマ・トフェニ=エデンであると。


「フランもね、最初は全く分からなかったけど、意外と覚えられるよね~」

「複雑過ぎるのよ。専門用語が沢山登場して…私でさえ最初は戸惑ったわ」

「…そうなのか」


リヒトはパチュリーから貰った太刀を持ち、その滑らかさを味わった。

魔法が掛かった太刀は冷淡さと残酷さを持ち合わせているようであった。


その時、外から轟音のような音が聞こえると同時にやって来たのは小悪魔であった。

汗を流し、過呼吸していることから緊迫していることが窺える。


「ど、どうしたのよ小悪魔!?」

「たたたた大変です…OBEYの将軍らしき人物が…結界を破壊しに来たんです!」

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