1章 秩序抵抗団体"紅魔館"
基本、人工魔導士は召喚と武器で戦います。
その他の紅魔館勢は基本スペルカードシステムで戦います。
その時、"彼"は誕生した。
パチュリーによって機械の身体を与えられた"彼"は眠りから目覚めたかのように起き上がり、辺りを見渡した。そこにあったのは自分と同じ体の骸―――精神が入っていない、蛻の殻の山であった。
薄暗い図書館に寝かされていた彼はそのまま立ち上がった。彼に記憶は無く、只…只管、本能的に辺りを動いた。
外から喧噪な音が響き渡る。彼には何が起きてるのか、ここは何処なのか、そして自分は誰なのか、何一つ分からなかった。
彼の誕生に気づいたパチュリーは彼の事を"成功作"と呼び、大きな騒ぎとなった。
彼の元に駆け付けた吸血鬼。見たことも無い新鮮な光景に目を丸くした彼であったのだ。
「…パチェ、これが噂の"成功作"?」
「そうよレミィ!私が初めて作った"人工魔導士"よ!勿論自らの意思を持ってるから勝手に戦ってくれるわ!」
「へぇ~。これでOBEYからの執拗な侵略からも守ってくれるの?」
「当たり前よ!彼は立派な人工魔導士よ!私たちの力と比肩出来る位の力なんて余裕で持ってるわよ!」
彼女は自らが生み出した彼を誇りに思い、全員に紹介していた。
彼は分からなかった。自分とは何者なのか?彼女たちは誰なのか?そして…今見てるものは全て本当と言える事実なのであろうか?幻想なのでは無いのか?
「…これで私たちの仲間が1人増えたようなものよレミィ。
…私たちが変えるのよ!トフェニに囚われたこの世界から!」
「そうよパチェ!良く分かってるじゃない!」
2人が意気投合をしていたのは分かったが、何に対して統合したのか、そもそもこの世界に起きているのか、彼にとっては未知の領域であった。
たった数分前に彼はこの世界に産み落とされた孤児である。淋しからずや、その身に吹く小風は無常を示唆していた。
そんな時、図書館に急いでやって来たメイド服の女性は焦りながら2人に告げた。
それは約束していた再来のようなものであった。
「レミリア様!パチュリー様!只今紅魔館にOBEYの一味が侵略に来て、中へ入ってきました!」
「…くっ、紅魔館の周りに張った結界を破ってきたのね…!…流石は摂理府、侮れないわね…!」
焦りの表情を見せる3人に彼は何かを感じ取った。
それは自分の胸の暖かさが少し、仄かに述べた気持ち―――抗いか?謎の気持ちはどんどん強まりつつあったのだ。
その瞬間、罵声と共に図書館内にやって来たのは、武装した集団であった。
迷彩服にライフル持ち。完全防備の4人組はそのまま図書館を占領しようとしたのだ。
「チッ…!早速敵のお出ましよ!咲夜!」
「は、はい!スペルカード!時符、プライベート…」
「おっと!そんなこたぁさせねえぜ!メイドさんよ!」
野蛮な兵士たちは催涙ガスを撒き、3人を一気に屈服させたのだ。
生身な彼女たちはそのガスを真に受け、そのまま涙が止まらなくなる。
「フン、小賢しい奴らだったな。まさかこんな奴らに苦戦してたとは…」
その時、彼に芽生えた謎の感情―――。
自分の物では無いが、種を撒かれた感情が育ち、自制心が押さえきれなくなった。
―――許せなかった。
何があろうとも、人に酷い事をする人たちに瞋恚さえ覚えた。
その彼が右手に持っていた杖…宝飾が埋め込まれた杖を構え、無言乍らも4人に近づいた。
―――許さない、と。
「お?まだ生き残ってたのか…催涙ガスが効かないのか」
「お、オイ…アイツ、全身が機械化されてやがる…!」
「ふ、フン!だから何だ!お前ら、行くぞ!」
4人は一気に襲い掛かってきたのだ。
何も悪い事をしていない彼に対して、そのままライフルで連射する。
しかし彼は機械化された身体であった。丈夫すぎる身体ゆえに傷一つ付かず、痛みすら無かったのだ。
そして―――彼は思ってもいなかった事を口に出したのだ。
杖を天に掲げ、愚かなる4人に裁きの鉄槌を下すため―――。
「幻象召喚!―――『ファルシオン』!」
その瞬間、彼の前に現れた白髭の爺は杖を天高く掲げ、大きな雷を図書館内で発生させたのだ。
雷はそのまま兵士たちに直撃、彼らは大きな断末魔を上げた。
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
そして兵士たちは死骸になること無く、そのまま靄に包まれて消えたのであった。
彼は自分が何をしたのか分からなかった。彼の前にいた爺はいつの間にか姿を眩ませており、只杖の宝飾品が淋しく煌めいていた。
3人はそんな彼に絶句していた。何が起きたのか、彼が何をしたのか。
しかし、党首はそんな彼の様子を見て―――希望を抱いた。
「どうやら世界を変える日も近くないかもよ?…パチェ、咲夜」




