新たな黒歴史が増えました
お久しぶりの投稿です!
朝チュンもとい昼チュンを冬斗から貰えなかった俺は現在、見知らぬ女子生徒に腕を枕替わりにされている。 うん、腕が痛い。
「うーん、相手が女の子だから、男の僕が触るのは気が引けるし・・・かと言って他の女の子に頼むと拓人が可哀想だし・・・うーん、あ!」
冬斗は、ウンウン、としばらく唸って、やがてなにかに思い当たったのかポンと手を叩いた。 そして嬉しそうな顔で俺の方を見て、
「真壁先生に助けてもらえば良いんだよ!!」
「あ、それは無理」
「ええ!? なんで!」
即答した俺に冬斗は信じられないという顔で叫んだ。
「いや、あの人ぜったいにこれをネタに俺を脅しそうな性格してるから」
これまでになんど内申点や恥ずかしいネタで脅されて来たことか。 あの人、容赦なく脅して嫌な雑務やらなんやらを手伝わせてくるのだ。 もうある意味、俺はプロの奴隷である。
「そんなこと言わないでよ! それにほら、後8分後に授業始まっちゃうよ?」
「と言われても、授業点引かれるよりもこれをネタに脅される方がイヤなんだけど」
まじで嫌だ。 もう雑務やらお茶くみやらマッサージなんてやってられない。 あの人、怖いんだもん。
「うーん、でもそれ以外に知り合いいないでしょ? 拓人」
「・・・・」
「それにこの現場をほかの人にバレる方がヤバいと思うよ? 唯一の友達である僕にバレるのはいいかもしれないけど、知らない人にバレたらそれこそ男子からのイジメやカツアゲ、女の子から、拓人がいかがわしい事してたっていう誹謗中傷が殺到だよ?」
冬斗はグサグサと容赦なく俺の痛いところを突いてくる。
やめて! 俺のライフはもうゼロよ!!
俺の心の底からの言葉は虚しくも冬斗には届かない。 遠慮なく躊躇いもなく言葉のナイフを刺し続ける冬斗。 俺はなんか悲しくなってきた。 ので、ここは冬斗の提案に乗ることにしよう。
「・・・真壁先生呼んできてください」
思わず敬語でお願いしてしまった。
「うん! ちょっと待っててね!!」
冬斗はニコッと微笑むと、真壁先生がいるであろう職員室へと駆け出して行った。 俺はそれを見送ってから、空を眺める。 鳥が羽を動かして飛んでいる。 鳥になって自由になりたい。 壁にも人にも縛られないフリーダムな存在。 羨ましいよ。 さて、どうしたもの・・・
「うおおおおぉ!?」
あ、やべ。 ビックリしすぎて声出しちまった。 けど仕方ないよね。 だって、顔がちけえんだもん。
寝息をたてる女子生徒は頭の置き位置が悪いのか更にこちらに顔を近づけていた。吐息がかかる距離に女子生徒の顔がある。 時折、いい香りと共に首に吐息がかかってきてこしょばゆい。 てか、おまけに俺の胸部分にめっちゃ女子生徒の小ぶりな胸が押しつぶされるように密着していた。 これって、助けに冬斗達二人が来てもこの状況見たら死ぬぞ。 主に俺が、社会的な意味で。 てなわけで、少し後ろへと下が・・・れない。 コイツ俺の体を締めつけてきやがった!! あ、チカラつよ!? マジでやばい。 主に俺のアレがアレでヤバくなる。 あ、やめ、息かか・・・舐めないで!? 首筋を舐めないで!
「アイス・・・おいひぃい」
アイスじゃないから!? そんな幸せな夢を見てるからって舐めないで!? 夢は夢の中だけでにして! 現実に出さないで! 俺は体をこわばらせ、必死な顔で下がろうと四苦八苦していると、
「先輩・・・何してるんですか?」
後ろから聞き覚えのある声がした。 俺は唾を飲み込み、後ろを振り向こうとするが、振り向けないことに気づき、
「あ、あの、こ、これは・・・」
「先輩のバカァアアアアアア!!」
友里は罵倒して走り去って行った。 かくいう俺は放心状態になっていた。 まさか友里に見られるとは・・・ヤバいぞ。 次、もしも、知り合いが来たら死ぬ。 あ・・・もう知り合いいな・・・
靴音が前から聞こえた。
「ぁああああああああ!?」
俺は目を閉じていた為、驚きのあまり叫んだ。
「・・・ひゃんっ!?」
ひゃん? え? 何その可愛い悲鳴。 ってか誰なの!? 俺の知り合いにこんな人はいないし、ましてやこんな声は聞いたことがない。 これまさかの知らない人? oh......冬斗の言ってたことが現実に・・・ って、ん? なーんか、よくよく見てみると、知ってるような。 誰だっけ? 確か・・・あぁ、そうだ!! あの黒ストッキングにあのピンヒール!! そしてきわめつけは綺麗な黒髪。 いや、でもだ。 あの人があんな可愛い声を出すとは思えない。 だって・・・アラサーすぎ・・・ひゅえ!?
黒髪のピンヒールストッキングさんは、なんか夜叉のような般若のような怒り顔で、こちらを睨んできた。 そのせいで思わず身がすくみ、変な声が出てしまった。 そして、立ち上がり、俺に近づいてくる。
「あ、あの、その、真壁先生」
俺は、黒髪ピンヒールストッキングさんこと真壁先生に引き攣った笑みを浮かべる。対する真壁先生はニッコリと微笑み、無抵抗な俺の胸に手を当てた。 その瞬間、俺は悟ったね。セクハラされるってね
「少し痛いが辛抱しろよ、拓人」
「あ、ひぃ」
返事をするつもりが気持ち悪い呻き声みたいなのが出た。真壁先生は手に力を込め、そしてもう片方の手で熟睡中の女子生徒の胸に手を当てて、押し開くように俺を左に、女子生徒を右にそれぞれ押した。 しかし、女子生徒の俺を抱きしめる力が強すぎて、体が痛い。 あ、ちょ、力込めないで! 密着しないで!?
真壁先生は四苦八苦しながら引き剥がそうとするが、全く剥がせない。 真壁先生は溜息をつく。
「仕方ない、拓人。 今から私が命令する通りに動け」
「あ、はい」
「まず、この女子生徒を抱き締めろ」
「分かり・・・は?」
俺は女子生徒に腕をまわそうとする寸前で止まる。
「何をしている、拓人! 早く抱き締めろ!!」
「全力でお断りします!! あんはは俺を痴漢魔にするつもりか!?」
「あぁ、そこは安心しろ。 内緒にしておくから」
「し、信じられねー」
だって、あのニヤニヤした顔、絶対嘘やん。俺がそんなことにまんまと騙されるわけねえだろ。 まぁ、何度か騙された・・・事あるけどな。
「いいのか? そこで寝てる女子生徒、城花は、誰かが一分ほど抱き締めないと起きない奴だぞ? それも、被害者になった人がな。 まぁ、いつもは他の女子生徒の腕でしか寝ないのだが・・・もしや」
「男だからな!? 今、女とか思いましたか!? おい! 目をそらすな! 真壁先生!!」
「まぁ、それはいい。 ほら、さっさと抱き締めろ。 でないと、ここにあるスマホで録画したこの現場の動画をネットに流すぞ」
真壁先生はスマホを見せつけて脅してくる。
「典型的ないじめっ子ですか、あんたは!? 今時の不良がやりそうなことを先生であるあんたがやっていいんですか!?」
「安心しろ、するのはお前だけだ」
「安心出来ねえよ!?」
もう悲しい・・・何が悲しいって、先生が生徒をいじめてる件についてだよ。どんなけ俺をいじめたいのさ。 ぼっちだからか? 目つきが悪いからか? ひねくれてるからか!? ・・・全部当てはまってそうで辛い。
「まぁ、それは冗談としてだ。 ほれ、早く抱きつけ」
真壁先生は、ニヤニヤとした顔で煽ってくる。 俺は、グッと唇を噛み締め、そして覚悟する。 ぶるぶると震える手を眠る女子生徒の腰に回してギュッと抱き着く。 目を瞑り、1分間抱き着く。 そのときの俺にとって、1分間という短い時間は、テストよりも長く感じた。
「・・・・あぅ」
目を瞑る俺の耳にそんな声が聞こえた。 バッと瞼を開けると、パチクリとした翡翠の瞳でこちらを見つめる女の子がいた。 吐息がかかりこそばゆい。 頬は微かに朱に染まっている。 じわっと目元に雫が現れる。それと共に、俺の全身から冷や汗がぶわっと吹き出る。 そして、俺が一番最悪だと思った事が現実となった。 すぅと息を大きく吸い、そして--
「いやぁぁぁああああああああ!?」
女子生徒の悲鳴が体育館裏に響いた。 おまけに、膝蹴りが股間を叩き、悶絶する俺。 その隙に女子生徒は俺の手から抜け出して、逃げ出していった。 取り残される俺。 ニヤニヤ顔でこちらにスマホを向ける真壁先生。
この日、俺の何百とある黒歴史に新たな1ページが刻まれたのだった。
次回は、職場体験か、休日の話のどちらかになります!