単調な世界と先の読めない世界
今更ながら小説知識を卯のみにするのはダメです。
とくに武器の知識についてはダメです
結局休日の間あの世界に潜りっぱなしだった僕は高校の始業式に出ていた
「君たち、特に二年生は後輩が増えるのだからもっと気を引きしめて手本となるように…」
(どーせ学校のイメージガーとか思ってるだけだろ、あの校長)
(だよなー。進学校ほどのレベルじゃないのに課題無駄に多くしてよー)
「そこ、私語は慎みなさい!」
(やべっ怒った!)
ひそひそ話すクラスメイトと怒る担任
…ああ、つまらない
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トンファーは体術が無いと上手く扱えない。他のゲームに実装されてない理由の一つだろう
リーチも長くないから攻めに転じるのは少し難しい
まあゲームだからある程度意識さえすれば攻撃もガードも有効に働くようにはなってるらしい
だけど上手くなるために経験値だけじゃなくて扱う為の練習もしている
この3日ぐらいで随分敵の攻撃を防げるようになった
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始業式の翌日は新入生の入学式だった
義務教育を終えた後輩の顔は大体がキラキラしていた
少なくとも自分も最初はそうだったはずだ
いつからだろうか。ここでの期待を無くしたのは
新入生と目があった
僕は思わず目をそらした
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トンファーは特殊な武器で、扱いが難しいらしい
それを勧めてきたカレンさんもどうかと思うけれど、なかなかやりがいがある
格闘技が出来ないと本来の力を発揮できないらしいので少し基本をかじってみたりしてみる…
…難しい、でも楽しい
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勉強はわかるけど、わかるから好きじゃない
地理歴史は覚えゲーだし、数学は公式に当てはめて解いたら終わり。パソコンでもできるし、何より疲れる。英語?日本語で精一杯です
好きなのは国語と体育。この人はどんなこと考えてるんだろうとか思いながら読んだりするのが楽しい。まあ文法は相変わらず覚えゲーだけど
何より本には全然知らない世界が広がってる
体を動かしていろいろ目標をクリアしてるとなんだかゲームと一緒で充実感がある
もしこの二つが好きじゃなかったら学校辞めてたかもしれないな
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相変わらずこの世界は知らないことだらけで、見たことない敵、見たことない武器がたくさんある
攻略サイトとかもあるらしいけどつまらなくなるから絶対見ないと決めた
噂話とかは不確定な話で、嘘か本当かわからないから好きだな
「ゴブリンのいる洞窟があって、そこに行った奴がいたらしいんだが宝箱の目の前で敵にやられたらしくて宝箱はいまも眠って―」
あ、それは僕らが取りました
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「なあ、週末カラオケ行こうぜ」
「いいよ、歌下手だし、レパートリーないし」
「そっかー。…じゃあ今度VRMMO一緒にやらね?おすすめのがあって―」
「パス。リアルとバーチャルは分けたい」
「あー、じゃあ仕方ないな。悪いな、変に誘って」
「別に、いいよ」
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「本当ここは未知が溢れてていいよなー」
「そうだね。まだまだ序の口なんだろうけど」
「そうだ聞いてくれよ、ここに誘おうと思ったのにさ、門前払いされちまったぜ」
「それってリアルで?」
「そう。折角楽しいとこなのによー」
「勿体ないな。もう一回誘ったら?」
「いや、あれはダメだな。あんな感じの真面目系は聞く耳持たないらしい」
「そっか、じゃあ仕方ないね」
「…さて!そろそろ行くか!プレイヤースキル上げたんだろ?」
「うん!行こう!」
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「そーいや猫宮って何部?」
「帰宅部」
「まじかー。道理で新学期なのに暇そうな訳だ」
「そういうこと」
「な、今からでもうちに入らねえか?」
「何部だっけ?」
「陸上部」
「で、一年に混ざって入れと?無理無理、絶対無理」
「えーわかんねえじゃん!お前体育好きだろ?」
「そーなんだけど…部活は嫌いかな。なんか合わない」
「…お前ひょっとして嫌いな物多い?」
「食べ物は少ないけどね」
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「やあビギナー君、また会ったね」
「カレンさんひょっとして名前覚えてないですか…?」
「お、覚えてるよ!別にいろんな人にレクチャーして覚えられないとかじゃないから!」
「じゃあ言ってみてくださいよ、僕の名前」
「えーっとねー、トンファーっ子でしょ…?
そうだ、ユウヤくん!」
「思い出すのに時間かかりましたね」
「トンファーはどう?気に入った?」
「んー、また好きなものが増えた気がします」
「何それ、武器はいろいろ好きなの?」
「さあ?どうでしょう」
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通常授業になって、後輩もいない僕にはなんの変化のない世界が始まった
みんなは楽しそうに会話して笑ってるけど、みんなが話すネタのどこが面白いのかはいまいちわからない
アイドルなんて見ないし、芸人の漫才なんかも面白くない
唯一興味あるのはゲームネタかな…
…あれ?僕ってゲーマーだっけ…?
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「ユウヤくんはこのゲームが初めて?」
「そうです。レオさんは何か他にやってるんですか?」
「俺は銃がメインのVRMMOやってたよ。今はもうやってないけど」
「銃かー。…なんか違うなー」
「違うって何がだよw まあいいや。
しかしユウヤくん初めてには見えないんだよねー」
「どうしてですか?」
「なんか、動きにキレがあるというか、あと努力するとことかかな?ゲームと言っても本人の実力がいるからさ、VRMMOは」
「なるほど、でも本当に初めてですよ?」
「ひょっとしてリアルも努力家か!それなら納得だ」
「ノーコメントで」
「あーうん。リアルの話はやめようか、ごめん」
「良いですよ別に。それより噂を聞いたんですけど―」
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親が共働きの家はいつも静かだ
二人とも遅いし、まして一人っ子だから会話もない
だから僕はあの世界に行くんだ。仲間がいて、充実したあの世界に…
「それでいいのか?」
誰の声だろうか?今家には僕しかいないはず
「それは望んだことか?」
また聞こえた。不法侵入?なんだ?
それにしても、聞き覚えのある声だ
「『僕』はそれでいいのか?」
…自分だった。無意識に呟いていた。
その自問に結論をつけることにした
「ああ、それでいい」
現実はつまらなくても仮想は刺激的だ。現実を捨てた訳じゃない
それのどこが悪いんだ?