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武器の無限なる可能性  作者: とと
2.飽きた世界は曇り空
8/9

独り

「………」


初めてフルダイブの世界に行った感想は「最高」だった。


そして、初めてフルダイブの世界から帰ってきた感想は「最悪」だった


真っ暗な部屋で光っているのはスタンバイ状態のヘットギアだけ。閉めた窓の向こうからは近くの道路の車の走行音が聞こえる


ベットから起き上がって部屋の電気を付ける。明かりに照らされた部屋には勉強机と本棚、それにベットという必要最低限の物しかなかった


下の階に降りてもリビングには誰もいない。電気も付いてない。

テーブルの上には親のメモ書き


「会社の新年度の飲み会に行きます。冷蔵庫にチャーハンがあるので温めて食べて下さい」


メモをゴミ箱に捨てて冷蔵庫からチャーハンを出すと、電子レンジに放り込んだ。


待っている間にスマホでSNSを立ち上げる。話題は今日開始のアームズアドベンチャーオンライン―AAOの話題で持ちきりだった


「ほんと最初から武器色々選べて驚いた!武器選びに一時間半はかかったぜ」

「かかりすぎだろ。俺はさっさといつもの剣選んだぜ?フィールドに出たらみんないろんな武器使っててそれ見るだけで十分」

「お試し用に全要求ステータス1の武器が全てにあるの良いよな!ダメージ全くでないけど」

「数日後には武器が一辺倒になるに三万ペリカ」

「ならねーよ。そんなの別ゲーでやってろよ」

「ようやく俺のマイフェイバリット武器に出会えたぜ…。これからずっとこの武器で行ってやる!」

「なんの武器だー?」

「手裏剣」

「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」


ネットの住民はいつもと変わらず、バカげてるけどとても楽しい会話を繰り広げていた。それを見てるだけでも少し楽しいくらいだ。


電子音がして、見るとチャーハンが温まっていた。

電子レンジから取り出してスプーンを出して1人の部屋で呟く


「いただきます」


誰に言うわけでもなくいつものように呟くと、スプーンで次々口に運んでいき、ものの数分で食べきった。


「ごちそうさま」


言わなくても怒る大人はいないのだが、習慣となったその台詞を言うと、すぐに台所で食器を洗い始めた


それが終わると沸かしておいた風呂に入った。

体を洗って湯船に浸かると、ようやく自分が疲れていることに気がついた


こんなに疲れたのは久しぶりだ。去年の体育祭以来じゃないだろうか


こんなに疲れるくらい、あの世界は楽しかった。

そしてこんなにも疲れないくらい、この世界は退屈だった。


天井を見ながら、今日のことを思い出していた。

カレンさんに武器を選んでもらって、テツと洞窟で出会って敵を倒して、レオさんにレア武器を売って…


独りで学校に行って授業を聞き流して帰って宿題を終わらせるて寝る生活と比べたらあの世界の方が生きてる気がする



風呂からあがって着替えると僕はまたヘットギアを手にしていた。


外は暗く、時計は9時を回っていた

今からログインしたら寝る時間は遅くなるだろう


…構わない。どうせ始業式は月曜日、明日は土曜日。どう過ごしても変わらない



あの世界は何もかも新鮮で、現実のつまらない僕―猫宮和哉じゃなく、好奇心に溢れたユウヤになれる。


その方が僕にとっては有意義な時間になるとこの一日で確信していた。


確信するほど、あの世界は―


…もう良いだろう。何も考えることはない


再びヘットギアを着けると、この世界から離れる言葉を叫んだ。


習慣になった言葉以上の声で

・キャラクターネーム:ユウヤ

・本名:猫宮和哉

・性別:男

・年齢:16歳

流行の波に乗り遅れ、初めてのVRゲームがAAOだった

一瞬でこの世界の虜になり、現実を嫌うようになる

成績は悪くないが優等生というほどでもなく、どの先生からも目立たない位置にいる

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