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ニートの俺が、異世界唯一の料理人!?  作者: 淡井ハナ
第一章 始まりはマーボー豆腐
5/36

家電あっての主夫ですよ!

 この村の暮らしにもようやく馴染みかけたある日。


 いつものように朝の準備の一つ、村はずれの山でニンニクを採取していると、リタが訪ねて来た。(この世界ではニンニクは木の実である)


「その姿も何か様になってるね~。もうシュートさ、正体バラしてずっとこの村に居れば良いんじゃない?」


 ナイスアイデアっしょ! という感じのドヤ顔でそんな提案をしてくる。


 それはまさに悪魔の甘言だ。確かにこのままこの村で引きこもって暮すのも悪くねぇ、と思ったことがあるのは確かだ。


(以下妄想)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「それじゃ、仕事に行ってくるね、シュート」

「ああ、いってらっしゃい、リタ」


 そこでリタは何か言いにくそうに上目使いでチラチラと俺の顔を伺う。


「ああ、そうだったな。気をつけてな、リタ」

「……うん♪」


 いってきますのキスをして、リタを仕事へ送り出した俺。


「さあ、ここからは俺の自由時間ターンだ!」


 部屋の掃除は全自動お掃除ロボ「ワルツ」様に任せ、昼食はピザでも宅配してもらおう。

 そして洗濯は……面倒だから明日で良いや。あと風呂掃除とトイレ掃除もボタン一つで完璧に仕上げてくれる。

 俺のやることと言えば、ソファーに寝そべってワイドショーかアニメでも見てポテチでも食うことだけ。俺の人生イージーモード!!!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(妄想終了)


「ああああああ!! そうなんだよ! この妄想を実現するには数々のハイテクメカが必要なんだ! だがこの世界には全自動洗濯機もパソコンも、さらにはテレビすらない!」


 この異世界では、ジョブとして専業主夫を選択するのは愚かだ。一つ一つの家事が全て手作業のためしんどすぎる。

 

 俺の目指す専業主夫ってのはそうじゃないんだよ……。


 そして俺の脳裏に浮かぶ母の顔。


 結構適当な人だから、俺が居なくなっても、すぐには大事にはならないと思うが…。


 もしかしたら、元居た世界では俺がいなくなったことで、騒ぎになっているかもしれない。

 それとも、夢オチとか、時間の流れが違うとかで、向こうでは全然時間が経ってないとか、ないか…?


「何唸ってるの? ちょっと怖いよ……」


 リタが怪訝な表情でこちらを伺っている。


 つーか俺は勢いに任せて何て妄想をしてやがる…。今のが目の前のこいつにバレたら殺されかねない。


 最初、リタはツンデレキャラでいつかデレが来ると信じてたが、やはり現実はそう甘くないのだ。現実にはツンデレなどない、と俺は確信し、またも現実に絶望したものだ。


「……リタ。やっぱ俺、元の世界に帰りたいんだ」


 俺は意を決してリタに告げる。リタの表情からは何を考えているのかは分からない。


「そりゃ確かに、帰れる方法なんて分からんし、俺の料理を皆あそこまで喜んで食べてくれんのは正直うれしいよ。でも、俺にはでっかい夢があるんだ」

「またそれ? 何が専業主夫よ。そんなの、この村でだってできるじゃない」

「いや、それが違うんだよ! 俺が居た世界ではさ、ボタン一つでどんな家事もできるんだって! この村じゃ、全部手作業だろ。さすがにキツい!」


 俺はそう言いつつ一際大きなニンニクの実をもぎ取り、カゴにいれた。


 そこでいつもなら馬鹿にしたようなきつい言葉が返ってくると思ったが、リタは顔を背けて黙り込んでいる。


「……リタ、どうした?」


 まずいな。何か怒らせるようなこと言ったか? と思ったが、振り向いたリタの顔は別に怒ってはいなかった。


「……ううん、何でもないよ。元の世界、帰れると良いね」


 そう言ってほほ笑んだ。一瞬悲しそうに見えたが、気のせいだろうか。

だが、俺が掛けるべき言葉を探していると


「もうリックスの実はそれで十分よね。村に帰ろ!」


 そう言ってくるりと向きを変えて、たったった、と駆けて行った。


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