シュートの日記帳(最後のページ)
7月22日(火) 雨
助けて下さい!!!!!!!!!!!!!!!
この日俺はまた情報収集のために外に出た。
そしたら、村には成人男性が一杯いた。
雨の日は仕事に行かないって……? カメハメハ大王か!?
おかげでおれは、またも勇者様コールを一身に受けるハメになり、ひたすら注目を浴びた。
心臓が、頭が震えるほどに揺れた。
どうしたら俺が勇者じゃないって分かってくれるんだよ、あの原始人どもは!!
俺は爪が食い込むほどきつく拳を握りしめ、覚悟を決めて言ったんだ。
友達が出来ずに誰からもスルーされていたと。
「ははあ。勇者様の、そのあまりの王圧に、並び立てるレベルの人間が周りにいなかったんだべ。天才ゆえの孤独っちゅうやつだがや」
ちげーよ!! どんだけプラス思考なんだよ!!!
で、俺がさらに勇気をだして
「俺はただ存在感がなかったんだよ!」
って言ったら
「そ、存在を無にする……。聞いたことがある。魔術が始まって以来、数例しか確認されていない希少属性、“虚数”。その中でも、存在透過の魔術に違いない!」
また一つ、俺の伝説がでかくなってしまった瞬間だった。
今や村人は俺を神のごとき扱いで接する。
これ、もし俺がただの人間だってバレたら……どうなる?
村人のあのテンションだと、殺されかねない。
もしかしたら、村ぐるみで俺の死はなかったことにされるかもしれない。
これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。
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これが日記帳の最後の記述。
ページをめくるごとにだんだん文字と言葉が乱暴になってるな。
この日を最後に、俺は日記を書くのを止め、ずっと部屋に閉じこもってすっかりニートになっていた。
この村で得られた成果は、ただ俺がニンニク中毒になり、ニンニクが切れると禁断症状が現れるようになった事、ぐらいだろうか。
状況を整理するため、改めて日記帳を読み返してみたが……。
これ、詰んでね?
今は8月12日。
「誰か、俺を助けてくれ!」