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ニートの俺が、異世界唯一の料理人!?  作者: 淡井ハナ
第三章 水を差された開店日
25/36

何気ない朝の団らん

 翌朝。昨日の疲れのせいか、いつもより寝過ぎてしまい、目が覚めたころには二人はもう活動していた。


 俺が遅い朝食(パンとミルク)を摂っていると、対面にリタがどかっと腰かけた。


 そして、昨日の俺の失態をシオンに話してしまう。

 恥ずかしいから秘密にしてくれって言っとけばよかった……。


「で、でもさ、何人かからは情報が聞けたんだって。どうもこの町の人たちはニオイが残るからってことで、そもそもリックスの実は好まないんだってさ!」


 俺が何とか名誉挽回しようとすると


「あ、確かに、うちでもリックスの実はあまり売れないですね」


 とシオンがフォローしてくれた。

 ありがたい。道具・食材店の代理店主が言うんだから説得力もあるってもんだ。


 シオンは大量の卵を、割らないようにそっと専用ケースに詰めている。

 どうやらリタが付いているおかげで余計なドジを踏むこともなく、カリンガの縄張りを荒らさずに卵の収集に成功しているらしい。

 

 心なしかいつもよりも明るい雰囲気だ。


「そっか。うちの村じゃ皆よく食べてたんだけどな…」


 リタが少し残念そうに言った。

 そういえば、俺があの村で最初に出された食事もリックスの実をそのまんまぽんとだされたんだよな。しかもほぼ毎日同じメニューだったし……。

 

 あの時のインパクト、今でも忘れられない思い出だ。


「でも、そういうことなら、折角山で集めたこれも無駄になったな」


 俺はかばんに入れていた大量のリックスの実(ニンニク)を全てテーブルにぶちまけた。


「え!? シュート、いつもソレ持ち歩いてたの!? ど、どうりでちょっとクサいと思ったわ……」


 とリタはガタッと椅子を引きつつ顔を顰め、信じられない、という調子で言った。

 シオンも何気に驚いた表情でテーブルの上のリックスを見ている。


「……ていうか、お前そんなこと思ってたの!? 何気にひどくないか?」

「だって、しょうがないじゃない。本当のことだもん」

「教えてくれても良いじゃないか。……はっ! そうか、だから俺は昨日不審者扱いを!?」

「……いや、それはリックスのせいじゃなくて、100パーシュートの会話力の残念さのせいよ」

「あ………(がくり)」


 はい、論破終了! 

 そんな勝ち誇った顔で、リタは勝者の余裕とばかり、俺の飲みかけのミルクをぶんどって優雅に飲み尽くした。


「……クスクス」


 なんて、俺とリタが言い合いをしていると、シオンがこらえきれないという感じで吹き出した。


「ん、どうしたの、シオン?」

「うん、何か二人の間の空気が良いなって思ったの。何だか何年も一緒に居たパートナー同士みたいで、」


……………そ、


「そんなわけないって! 何でリタが…………あ」

「そんなわけないわよ! どうしてシュート……あ」


「ほら♪」


「「~~~~~~!!」」


 シオンに主導権を握られている。


 俺は流れを変えようと喉を潤そうとして思い出した。さっき俺のミルクは全部リタに飲まれたんだった。


 俺の様子を見て、シオンはたっぷり入ったミルクの大瓶を持って来て、危うい手つきで注いでくれた。


「………ふう」


 やはりミルクは良い。荒んだ心に染みわたるわい。


「……オッサンくさっ」


 イイ感じで浸っているところにグサッと来た。


 そこでまた俺とリタが言い合いをしていると


「ねえ、二人はどうやって出会ったの?」


 にこにこ笑顔でシオンが言った。


「え……う~ン、そうね」

「ち、ちょっと待って。その話は別に良いんじゃないか。今は前だけを見よう。そうだ俺達は店の再オープンに向かって一致団結をだな―――」

「シオン、覚えてる…? ドーンの村はずれの林のさらに奥に、ぼろぼろのほこらがあったこと。シュートとは、あそこで出会ったの」


 俺の存在を完全無視して、リタは過去編モードに突入してしまった。


次回よりシュートが異世界へ飛ばされる経緯と、リタとの出会い、

そしてリタの村で料理を作るまでの話を書こうと思います。


不定期掲載になると思いますが、よろしければお付き合いください!

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