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ニートの俺が、異世界唯一の料理人!?  作者: 淡井ハナ
第三章 水を差された開店日
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ドジっ娘狂騒曲! 「これは大事故です…」

 それからは新装開店の準備で忙しくなった。


 リタはチラシを制作し、町中に配る係。

 シオンは必要な材料を調達する係。

 そして俺は、町の人の様子や雰囲気を見つつ、味の方向性を探っていた。

 と言っても俺は直接話しかける何て野暮なことはしない。


 ぼっちスキルの一つ、『ステルス迷彩そんざいかんのなさ』を駆使して、酒場や広場で町の人達の会話を盗み聞きしていたのだ。


 おかげで、何となく俺が今いる大陸の情報や現在の軍事情勢のことを掴めた気がする。


「どうもこの町の奴らは、子供舌な奴が多いな」


 会話の中に、辛いからまずかっただの甘くてうまかったというような情報が多かったのだ。


 俺はその情報を元に、今回は豆板醤とうばんじゃんの量を減らし、オイスターソースで味を整えることにした。さらに山椒は舌が痺れるため、今回は使わないことに決めた。


「方向性は、こんなところで良いと思うが、どうだろうか?」


 オープン前日の夜、俺は二人に試作品を食べてもらっていた。


「うん、これもすごくおいしい! 私は今までのバージョンの方が好きだけどね」

「わ、私は、辛くないが良い、です」


 二人の意見が見事に分かれた。


 が、ここはやはりこの町に住んでいる人の意見を採用した方が良いんじゃないか。

 俺はそう提案したが、何となくリタが不満そうに頬を膨らませている気がしたので、一応どちらのバージョンも出せるように仕込みをしておくことにした。


 そんなに甘いのは嫌いか…。


「でもね、広場でも結構みんな噂してたよ! 応援の言葉もよく掛けてもらえるようになったしね」

「う、うん。私も、頑張れってよく言ってもらえるように、なった……」


 二人とも落ち着かない様子だ。だが、無理もない。明日はどうなるのか、全く予想が付かないのだ。


「よし、まあ俺は厨房にこもって、ひたすら料理を作る。だから接客は任せた!」


 二人を交互に見て、俺は強く宣言した。これで、『みんなでやって行こう!』という連帯感が生まれる筈だ。


 俺はそう思っていたのだが


「何が、任せた、よ! 明日から皆で頑張ろうぐらい言えないの?!」

「わ、私も、それはどうかと、思うです……」


 何で俺を残念そうに見るんだ。俺に接客とか期待されても困る! 

 こういうのは役割分担だろ。


 そう思ったが、ここで言い返すとまた面倒なことになると思ったので、曖昧に笑ってごまかしておいた。


「……全く。それじゃ改めて……」


 リタがおもむろに席を立った。何となく目で後に続けと訴えかけてくるので、俺とシオンも黙って続いた。すると、リタはすっと俺たちの真ん中に手を出した。


 何、これ。まさか重ねろってことか? いやだよ、そんな青春っぽいこと恥ずかしくて出来るか。


 そう思っていたら、シオンが素直にリタの上に手を重ねるではないか。


 恥ずかしがり屋さんじゃなかったのかよ? 


 俺がなおも躊躇っていると、リタが無言の圧力をかけてきた。

 さらにはシオンも上目使いに促してくる。くそ、この体育会系的な同調圧力、パない。


 俺は逆らいきれなくて、しぶしぶ従った。


「そんじゃ……」


 と言って、リタはすうと息を深く吸い込んだ。


「明日から、頑張ろう!!」

「お~~!」

「お、おぅ……」


 バッと手を天井に掲げて、掛け声。


 あとは明日に備えるだけ。今日はこれで解散ということになったので、俺はとりあえず恥ずかしいから店を出ようとドアを開けた。


「ざわ…ざわ…」


 バタン。俺はドアを閉めた。


 今見た光景が信じられない。オープンを今か今かと待つお客さんといった様相の、何枚もの店のチラシを手にした人々が、店の外で列を成しているではないか。


「あれ~、おかしいな。何で人がこんなに? オープンは明日だよね」


 俺は確認の意味で二人に訊ねた。が


「ああ~~!!!!!」


 唐突にリタが素っ頓狂な声を上げた。

 チラシを手にプルプルと震えているが、一体どうしたというのか。


「これさ、開店日がね……今日だ」

「……はい?」


 リタが何を言っているのか理解できない。


「たはは……」


 やっちゃった♪ という感じで笑っている。


 するとシオンが


「え、17日って、明日じゃない、の?」


 と不思議そうな顔で言う。


「いやいや、今日だよ!」


 俺は全身から血の気が引くのを感じた。


 まさかのダブルドジっ娘だった。


 リタが持っているチラシを見ると、確かにオープン日は今日の日付。

 つーか、あと30分しかない!?  

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