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ニートの俺が、異世界唯一の料理人!?  作者: 淡井ハナ
第二章 新たな出会いにタコライスを
14/36

道具店の娘。…そして何気に上がった俺のレベル

 町の入口にたどり着くと、リタは女の子をベンチに寝かせ、俺にこの場を頼むとすぐにどこかへと走って行ってしまった。


「頼むって…俺に何が」


 無力感を感じつつ女の子の様子を見ていると、だんだんと呼吸の感覚が空いてしかも弱くなっている。


 やばいんじゃないか、これ。でも、俺は診察出来ないし、薬も出せない。


「いや、そうだ。道具……!」


 それは切羽詰せっぱつまった末の偶然のひらめき。俺は村長にもらった道具類を思い出した。


「体力回復のためのグミ、状態異常を治す薬。そんなのが入ってるって書いてたな!」


 俺は心の中で謝りつつ、苦しそうに身もだえる女の子の顔を凝視ぎょうしした。


「……(アナライズッ!)」


~~~~~~~~~~~~~~

シオン・タイラー

性別:女

職業:道具店


<ステータス>

人としてのレベル:7

攻撃力:5

防御力:3

魔力:150

器用さ:1

回避:3


<特記事項>

現在進行形で育っている胸が悩み。小さいころからの友達であるリタくらいのぺったんこに、密かにあこがれている。

ステータス異常:カリンガの毒

~~~~~~~~~~~~~~


 プライバシーを侵害したことに心の中で謝りつつ、俺は道具袋を漁る。


“カリンガの毒”が何のことかは分からないが、治す薬が入っていることを祈る。


 ここで、重大なことに気付いた。俺には道具を見てもそれが何なのかまでは分からない。


「くそッ! どうしたら」


 何か分からないかと、手に取った瓶を必死に凝視する。


~~~~~~~~~~~~~~

クリスタルカイザー

タイプ:道具

効果:ステータス異常“爆笑”に効く薬

~~~~~~~~~~~~~~


「おお!」


 どうやら、俺の目は道具類に対しても有効らしかった。

 すぐさま袋に入っている全ての瓶を並べて、くまなく調べる。


 すると


~~~~~~~~~~~~~~

アンチドート

タイプ:道具

効果:ステータス異常“毒”に効く薬

~~~~~~~~~~~~~~


 緑色の薬で満たされた瓶に差し掛かったところで、俺は発見した。


 これが、カリンガの毒とやらにも効果があるのかまでは分からない。

 だがこのまま何もしないよりはましだと思い、俺は苦しそうに息を吐く女の子の口に、薬品を流しいれた。


「ゲホ…ッ!」


 何度もむせかえり、そのたびに薬が俺の顔やあちこちを濡らしたが、それに構う余裕はなかった。


 俺は何とか一瓶全部を飲ませ終え、女の子の様子をうかがった。

 効いてくれ、頼む! 心の中で何度も祈っては、組んだ両手に力を込める。


「……ん」


 かすかな吐息。俺は閉じた目を恐る恐る開くと


「……?」


 女の子が目を開けていた。そして、弱よわしいが、唇を動かして何かを言おうとしている。


「こ、こは……? 私、えっと」

「良かったッ。薬、効いたんだな」


 ほっとして脱力仕掛けた次の瞬間、頭に強烈な衝撃が走り、俺は地面に倒れた。


「ちょっと、何やってるの!?」


 仰向けになった俺の目に入ったのは、リタの鬼のような形相だった。


「……シオン! よかった、意識を取り戻したのね」

「……リ、タ? それに宿屋のおばさん?」


 リタの後ろには大柄のおばさんがいた。人のよさそうなその顔は、今や心配そうに眉を下げていた。


 それにしても、何で俺は殴られた…?

 疑問は、次のリタの言葉が解決してくれた。


「大丈夫なの…? この変態に何かされなかった?」


 俺を指差しながら、必死の様子でシオンに問いかけるリタ。

 なんで俺が変態? そう思ったが、先ほどまで俺がしていたことを思い出した。


 呼吸の荒い少女の傍らに手を置いて見降ろす男。少女の髪は乱れ、血走った眼で男はそれを見ている。


「あ、変態だわ…」


 実際はシオンの様子をアナライズで見ていただけなのだが、今のリタは何を言っても聞いてくれそうにない。


 と、シオンがゆっくりと状態を起こした。まだ少し熱っぽい様子だが、さっきまでより大分ましにはなったようだった。


「大丈夫、リタ。私、あの人に助けてもらったみたい。ほら…」


 そう言って地面に転がる空っぽの瓶を指差した。


「あれは…?」

「私、毒に侵されてて、それであの人が解毒剤を飲ませてくれたの」

「本当…? あいつの毒牙に犯されたんじゃなくて…?」

「何言ってんの。お前、たまにオッサンみたいなこと言うなぁ…」


 服に着いた土を払いながら、俺はゆっくりと立ち上がった。

 

 くそ、まだ頭が痛い。思いっきりどつきやがったな。

 だが、俺の突っ込みを無視してリタはシオンを心配そうに見ている。


「まだ熱があるね。念の為医者を呼ぶよ。あんた達は先に部屋に行ってな」


 そう言っておばさんはどたどたと走って行ってしまった。


 リタはシオンに肩を貸して、ゆっくりと立ち上がらせている。


「あ、の…。あり、がとう、ございました、です」

「…ん?」


 何か言われた気がしたので振り向くと、シオンは慌ててリタの影に隠れた。


「うわわわ、ちょっと!?」

「ご、ごめんなさい!」


 リタはバランスを崩して、こけそうになっていた。


「シュート、あんまりシオンを怖がらせないで!」

「いや、俺何もしてないんだけど…」


 抗議するも、リタはまるでひな鳥を守る親鳥のように、俺を威嚇する。


 だめだこいつ。今は何を言ってもむだだ。

 それに、寝静まった街中でこれ以上騒ぐと絶対町の人に怒られる。


 俺はだまって謂れのない誹りに耐えた。


 結局シオンは解毒剤が良く効いたのか、特に問題ないということだったが、念の為1晩だけ安静にしておくように、ということでリタと同じ部屋に泊まることになった。


 これは余談かも知れないが、俺は宿屋の部屋で、寝る前に顔を洗い、ふと自分の顔を見ると


~~~~~~~~~~~~~~

小森田 秀人

性別:男

職業:限りなくニートに近い高校生


<ステータス>

人としてのレベル:1.5

攻撃力:10

防御力:13

魔力:0

~~~~~~~~~~~~~~


 村長からもらった薬草類を食べたおかげか、攻撃力、防御力が異様にアップしていた。


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