―第参章 銀色のマイシスター―
「ただいま~」
「おかえりなさい、兄さん」
自宅。
俺が玄関で「ただいま~」と言うと、可愛らしい声で玄関に来る少女がいた。
「おう、ただいま。歩美」
彼女は俺のひとつ下の妹の歩美。
学園の男子ども(俺も含めた)が独自に行った『普通に可愛い美少女ランキング』の第四位、『彼女にしたい美少女ランキング』では見事二位に輝いた自慢の妹だ。
ちなみに、どちらのランキングの一位は綺羅先輩。前者のランキングの二位は優稀菜、三位が樹里だった。しかし、後者のランキングでは優稀菜と樹里がともに学園では有名な美少女と同時に、有名な腐女子だったので完全なランク外だった。……いたたまれない俺の友人たちである。
歩美は家事全般が得意で文武両道な美少女。そりゃあ、全体の男子が彼女にしたいわけだ。嫁に出す気はさらさらないけど。
俺たちの親はこの家にはいない。どうにも仕事が忙しいらしく、なかなか帰られないようだ。っていうか、俺は自分の親の顔を覚えていない。いや、わからない。流石に俺と歩美が幼稚園生ぐらいだった頃までは一緒にいたと思うのだが、どうもいつ頃からか、記憶がはっきりしない。なんでだろう? まあ、今はそのことは置いておこう。
そんなわけで、俺は歩美とふたり暮らしだ。
歩美はなにか書かれているメモ用紙を片手に、なにか言いたそうだけど言えないようでモジモジしていた。
「どうした、歩美?」
訊くと、歩美は手を合わせて俺に言う。
「兄さんお願い! 少し買い物に行って来てくれませんか? 今日の夕飯の材料が足りなかったので」
ああ、そうか。夕飯の材料がなくて困っていたのか。
「オーケー、わかったよ。それにしても珍しいな。おまえ、そういうとこ結構きっちりしている方だろ?」
そう訊くと歩美は複雑な顔をして答える。
「試験終了の解放感から友達と遊んじゃって……。そしたら、買い物に行くのを忘れてしまいまして……」
「ああ、そんなことか。それじゃあ、仕方ないな」
俺が言うと歩美はにっこりして俺にメモ用紙を渡してくれる。
「ありがとうございます、兄さん。じゃあこれに書かれている物を買ってきてくださいね」
「おう、じゃあまた、行ってくるぜ」
「はい。またいってらっしゃいです、兄さん」
俺はスーパーに買い物に出掛けた。
To be continued